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今日の道には何が咲いてた? #啓蟄「草の辞典 野の花・道の草」

こんにちは。広報室の下滝です。

やわらかな日差しが緑を反射させる眩しさに、ああ、春がきているんだなと感じることが多くなってきました。

新生活への第一歩を踏み出している方も多いのではないでしょうか。
ほんの少し寂しさを感じながらも、寒いだけではなくどこか期待に満ちたほんのりと暖かい空気が、外に飛び出していける勇気や元気をくれる気がします。

そしてそれは私たち人間だけではなく、野に咲く草花たちも同じなのかもしれません。

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今回ご紹介するのは、新しい世界へ飛び出してきた芽吹きを感じながら、春の散歩を楽しむ時にオススメな本「草の辞典 野の花・道の草」です。

ようやく外に出ても良い気がしてきた…。春の空気に誘われて、冬眠していた動物たちも起きだすといわれる今の季節。
寒さに家にこもっていた人も、久しぶりに外出しようかなと明るい気分にしてくれるようなぽかぽかした春の陽気。

お供に連れて行きやすい小ぶりなサイズの本書を片手に、気軽に野外を散策してみてはいかがでしょうか。

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この本は、まず花や葉のしくみ、カタチやつき方などのイラスト付き解説からはじまり、
そこから季節ごとに咲く草花を写真で紹介しながら、見られる場所、特徴、姿、豆知識や花言葉などを丁寧に教えてくれます。

なかでも本書の良いところは、掲載されている種類が難しい名前の華麗な花々ではなく、本当にシンプルに、まさに今日歩いてきた道に生えている草花を厳選して紹介しているところです。

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例えば、畦道や道端でよく見かける春の七草のひとつ「ナズナ」。別名「ぺんぺん草・三味線草」。

なぜ「ぺんぺん」なのだろうと疑問に思っていたのですが、花の下の平たい三角形の実が三味線のバチに似ているからだそう。
実の部分を引っ張ってブラブラさせて、くるくる回すとぶつかってぺんぺん、と音を鳴らす遊びを昔よくやったなと久しぶりに思い出しました。

意外だったのは花言葉の「私のすべてを捧げます」。名前の由来や花言葉などを知ると、今まで何も感じず見ていた草がなんだか健気に思えたりするから不思議です。

このように草花ひとつとっても、なるほどなと思わせてくれて、よりその植物を身近に感じられるような解説がつけられていて楽しめます。

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植物の解説のほかに、章ごとに入っているコラム「みちくさをたのしむ」では、1章では野草を摘んで食べてみようと、摘み方からいただき方、おすすめのレシピを提案しています。
2章では野草茶の煎じ方、野の花のお酒のつくり方、3章では化粧水や入浴剤のつくり方まで、多様な草花の楽しみ方法を教えてくれます。

個人的には、幼い頃に花冠をつくったシロツメクサ、つぶしておままごとをしたツユクサ、紐を通して腕輪をつくったジュズダマなどの、昔遊びに使った馴染みのある植物が飲み物として飲めることを知って驚きました。

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「シロツメクサ」には女性ホルモンのバランスを整えたり鎮痛の効能が。

「ツユクサ」は花の咲いている午前中に摘んで蒸してお茶に。
青い花が印象的なので飲めるの?と疑わしく思いますが、味はクセがなく飲みやすいそうです。この青汁には解熱やデトックス効果があるとか。

「ジュズダマ」はハト麦と近縁種だそうで、肩こり、吹き出物抑制の効果などから美肌・美白の効能があるそう。

他にもたくさんの種類が掲載されていますので、ぜひページをめくってのぞいてみてください。
あなたの歩く道でよく見かける植物も載っているかもしれません。

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その他にも、四つ葉のクローバーの四つの幸運の意味や、「雨ふり花」といって“花を摘むと雨が降る”という伝承がある花々などの素敵な豆知識。

草花にまつわる言葉として、
「草枕(くさまくら)」という言葉は草を束ねた仮の枕という意味から旅や旅寝を表す、
「花信(かしん)」という言葉は花が咲いたことの知らせ、花便りを表すといった熟語や成句の紹介。

最後には、草花と私たちの間に流れる優しい気持ちを代弁してくれるような、作家、詩人の作品や言葉、薬草類などが記載されています。

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道端に咲く草花を見ても、その名前を知るか知らないかでは見える景色がどこか違います。
本書を開いて、今までは気づかなかった小さな世界に少しだけ目を向けてみると、ちいさな草花から、案外おおきなことを教えてもらえるかもしれません。

空を見上げる気力もないほど疲れた日には、きっと道端の小さな草花が励ましてくれるはずです。
冷たい空気の中に勢いよく芽を出し、生き生きと根を張る生命の力を道の片隅に探してみてはいかがでしょうか。

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-今回のここに注目!-
「お花が散って、実が熟れて、その実が落ちて、葉が落ちて、それから芽が出て、花が咲く(金子みすゞ)」

草花の一生は短いような、永遠のような。
私たちと違う時を生きて、はじまり、成長、成熟、終焉を見せてくれるその姿は、大切なものを教えてくれている気がします。

通り過ぎるだけではなく、時には少しだけ興味を持って、彼らの世界を眺めてみませんか?

■草の辞典 野の花・道の草

著者:森乃おと
イラスト:ささきみえこ
出版社:雷鳥社
定価:本体1500円(税別)
単行本:288ページ
ISBN:9784844137108

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