異世界に幼女として転生した私が、麻薬王になるまで

 私はアヘン窟を、鼻歌を歌いながら歩く。
 その鼻歌は幻想交響曲第五楽章『ワルプルギスの夜の夢』。ベルリオーズがアヘンをキメながら書いたと言われている曲だ。
 このアヘン窟では、性別も年齢も職業も関係ない。すべての人が平等にアヘンを吸いながら、自分の世界に浸っている。
 七歳の女の子である私に誰も注意を向けたりしない。皆が幸せそうな顔をしている。私は思わず、くつくつと笑いが漏れてしまった。
「ずいぶんとご機嫌ですね、アリスさん」
 パートナーであるコクトーが、薄く笑いながらそうつぶやく。
「私達のアヘンは確実に世界を蝕んでいる。でも、これはまだスタート地点。夢への一歩を踏み出したに過ぎない」
「でも、偉大な一歩です。……そろそろ帰りましょうか。ここにはアヘンが充満している。長居は良くない」
 ああ、と私が言いかけたと同時に入り口の扉が勢いよく蹴り壊された。扉の向こうに居たのはチンピラが三人。クインシーファミリーか。【続く】



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