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プランニングは生き物──『プランニングの基本』から【3】

今は、「新しさ」がすぐ「次の新しさ」にとって代わられる時代。プランニングに求められることも変化しています。
モノ余りの成熟社会におけるプランニングとは?
『この1冊ですべてわかる プランニングの基本』(高橋宣行著)一部公開、第3回です。

「第2章 プランニングとは──そもそも何ができてプランニングか」より

プランニングのポジションが変わった

NEWが、すぐOLDになる時代です。新しさはすぐ次の新しさにとって代わられます。

極端に言うと、昨日のことが今日、古くなっていく…。このスピードに、プランナーはどう対応していけばよいのでしょうか。ちょっと過去を振り返りながら、今、そしてこれからの自らのポジショニングを探してほしいものです。

「モノ不足の時代」…競争もなく、モノの特徴やメリットを語り、企業の都合に合わせてビジネスをすればよかった時代です。

「モノ充実の時代」…競争でひたすらナンバーワンを目指してきた時代。
まだ高品質を求め続けることを目標にしていました。

「モノ余りの時代」…ITの進化とともに社会が成熟し、価値観の多様化が進み、それに合わせた価値の提供が必須の時代。差別化、個性化が存在感となる。そして第4次産業革命の時代へと変化し続けています。

現代は「市場や生活者の都合に合わせたビジネス」でなければ、受け入れられなくなりました。本当の顧客本位のビジネス社会の到来です。

人々の関心事は、つねに揺れ動き、この関心事に合わないモノやコトは、すべて存在していないもの、と判断されてしまいます。

この状況の中で、「プランニング」の存在価値は一気に高まり、すべての仕事に「創造性」が求められるようになっています。

会社の中の仕事を、クリエイティブな仕事かどうかで分けるのではなく、すべての問題解決に、課題創造に、「創造性」が欠かせないものとなりました。

プランニングとは「変化を創ること」

「変化に合わせるか、変化を創るか」

変化に合わせるのは楽だし、リスクもない。しかし、それでは人の後追いだし、みんなと一緒では競争も激しいし、疲労感が残るだけです。

今のビジネスは「生きるとは、変わること」というように、新たなことに必死に挑戦し続けているのです。

何としてでも頭1つ、2つ抜け出したい。いや、どうせなら人が寄ってこない、寄ってこられないほどの独自の場所を見つけたい…と切望しています。

単に企画し、問題解決するのではなく、新たな「変化を創る」ポジティブシンキングを目指すことが求められているのです。

未来に向けた課題を創り(課題創造)、目先の悩みを巻き込みながら、新しい変化を生み出すのです。

例えば、初めて花王が男性向けヘアケア商品「サクセス」を登場させた時も、成熟した競争の激しい整髪市場でした。すっきり爽やかな使用感と香りの差別化競争でしたが、この中には入らず、「変化を創る」方向を選んだのです。炭酸ガス(入浴剤バブの機能)で血行を促し、頭皮を活性化する機能性を立てて攻めます。

私もコミュニケーション戦略では、毛髪を気にする男性への「マッサージ効果」を新しい価値観(コンセプト)と設定。これからは「マッサージ効果のあるものを整髪料という」、そんなメッセージを掲げ、新しい土俵に移動させる戦略をとったのです。これが今ある男性化粧品「サクセス」のスタートでした。

変化を創り出すためには、「プランニングとは、構想すること」という強い姿勢を持つこと。

そして、①包括的(全体的)に考え、②創造的に新しさを求め、③革新的にインパクトあるカタチにし、④戦略的に動かしていく、ことだと考えます。このような「全体構想」を動かすことこそ、「創造的プランニング」に課せられた仕事だと思うのです。


プロフィール

高橋宣行(たかはし のぶゆき)

1968年博報堂入社。制作コピーライター、制作ディレクター、制作部長を経て、統合計画室、MD計画室へ。制作グループならびにMDU(マーケットデザインユニット)の統括の任にあたる。
2000年より関連会社を経て、現在フリープランナー。企業のブランディング、アドバイザー、執筆活動などで活躍。著書に『高橋宣行の発想ノート』『高橋宣行の発想フロー』『高橋宣行の発想筋トレ』(以上、日本実業出版社)、『博報堂スタイル』『今どきの、発想読本 「コラボ」 で革新』(以上、PHP研究所)、『オリジナルシンキング』『コンセプトメイキング』『「人真似は、自分の否定だ」』(以上、ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『発想職人のポケット』(小学館)他がある。


※著者が本書のねらいを語った「はじめに」も、小社公式サイトで公開しています。

※『この1冊ですべてわかる ○○の基本』シリーズラインアップはこちら!


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