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「想う」コンセプトの発見──『プランニングの基本』から【7】


『この1冊ですべてわかる プランニングの基本』(高橋宣行著)一部公開、第7回です。
創造的プランニングの工程、STEP2は「想う」──コンセプトの発見です。コンセプトはプランニングの「核」ともいうべきものです。

「第3章 プランニングの工程──創造的プランナーの段取りとコツ」より

プランニングの中心が「コンセプト」

STEP1で収集した情報を通して、世の中に自らの「熱い想い」を掲げるのがSTEP2「想う」〈コンセプトの発見〉です。

「あの人にこうしてあげたい」「私はこうなりたい」と、新しい生き方、新しい方向性、新しい価値観を「コンセプト」というカタチで提案していきます。

ここは「何を提供できるか」という仕事の中心の部分です。

コンセプトは、プランニングのど真ん中に位置し、すべての行動の指針となるもの。このコンセプトメイキングがSTEP2の仕事です。

コンセプトはコンパス(羅針盤)です

コンセプトのない企業は、「コンパスなしに航海を強いられるようなもの」と言われます。当然、コンパスなしのビジネスは考えられません。

すべての仕事は、羅針盤となるコンセプトを創ることから始まります。そして、このコンセプトを真ん中にして、人も仕事も組織も動いていきます。「どの方向に向かうのか」が、コンセプトにあるからです。

プランニングの核もコンセプト──それは「企画のへそ」と言われるものです。

かつて「この企画、ヘソがないぞ。ヘソが!」と、よく先輩から叱責を受けました。つまりこの企画は「何が言いたいの?」「どうなりたいの?」という指針となるコンセプトが欠落しているからです。

すべてのプランニングで、コンセプトが確立されて、初めて仕事がスタートします。「何をすべきか」が、明快になったからです。

コンセプトとは「新しい価値観の提案」

コンセプトは「概念」と訳され、もともとは哲学用語です。

この言葉が広告会社に入ってきたのは、1950年代。次第に激しさを増す競争社会で、同じ概念の中での競争が難しくなってきたからです。勝つためにはどうしても新しい概念(コンセプト)が必要です。概念を変え、価値をズラし、新しい意味につくり直し、新しい戦い方をする…そんな歴史だったのです。

この傾向は、今も激しさを増すばかりです。

世の中の暮らしぶりが変われば関心事も変わり、大きく揺れ動きます。関心事に合わなければ、価値がない、存在感がないと言われます。モノゴトが進化するほどにヒトの価値観が変動していくのです。

そこで、「新しい概念に創り直そう」という姿勢が求められます。私はコンセプトメイキングを、「新しい価値観づくり」と定義し、変えること・変わることを楽しむようにしています。

「変える」ことに、軸足を置く

コンセプトは単なるテーマでもアイディアでもありません。狙いは、

① 既成概念(前例、習慣、ルールなど)を壊し、
② 物事や現象の本質を新しい意味に翻訳し直し、
③ 新たな意味をすべての創造物(アウトプット)に反映させ、
④ 新しい事業を創り出し、ムーブメントを起こす

ことです。

こうした考え方は、企業コンセプトやマーケティングコンセプト、商品コンセプトはもとより、あらゆるプランニングにこの姿勢が求められています。

 コンセプトって、こんなカタチ

私はコンセプトメイキングを、次の図のような形で説明しています。

プランニング図18

アイディアもプランニングも発想も、とにかく抽象的で非定形。もちろんコンセプトも同じです。そこで、あえてコンセプトの構造と作業の流れがイメージできれば…とつくったものです。

特定情報(企業のフィールド)と一般情報(時代のフィールド)との組み合わせから創り出す図です。


プロフィール

高橋宣行(たかはし のぶゆき)

1968年博報堂入社。制作コピーライター、制作ディレクター、制作部長を経て、統合計画室、MD計画室へ。制作グループならびにMDU(マーケットデザインユニット)の統括の任にあたる。
2000年より関連会社を経て、現在フリープランナー。企業のブランディング、アドバイザー、執筆活動などで活躍。著書に『高橋宣行の発想ノート』『高橋宣行の発想フロー』『高橋宣行の発想筋トレ』(以上、日本実業出版社)、『博報堂スタイル』『今どきの、発想読本 「コラボ」 で革新』(以上、PHP研究所)、『オリジナルシンキング』『コンセプトメイキング』『「人真似は、自分の否定だ」』(以上、ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『発想職人のポケット』(小学館)他がある。


※著者が本書のねらいについて語った「はじめに」も小社公式サイトで公開しています。

※『この1冊ですべてわかる ○○の基本』シリーズラインアップはこちら!


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