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仕事は「プランニング」の集合体──『プランニングの基本』から【1】

日本実業出版社のビジネス書ロングセラーに、ツートーンカラーの表紙でおなじみの「この1冊ですべてわかる ○○の基本」シリーズがあります。そのラインアップに、『プランニングの基本』(高橋宣行著)が加わりました。
「プランニング」というと何となく企画を立てること? と思いがちですが、広告業界で長きに渡りプランニングに携わってきた著者、高橋氏は次のように定義します。
「プランニングとは包括的思考であり、『情報』を集め、『問題』を探り出し、『仮説』を立て、『発酵』させ、それを『カタチ』(表現)」に定着していく一連の流れを言う」
ここでは本書から、「そもそもプランニングとは何か」、そして「創造的プランニングの4STEP」を9回に分けて抜粋掲載します。プランニングの基本、そのキモがわかるはずです。

「第2章 プランニングとは──そもそも何ができてプランニングか」より

つき詰めると、世の中の仕事は3段階

ビジネスパーソンは、「問題解決することでビジネスを活性化すること」が仕事である、と考えましょう。

「もっといい方法はないのか」「もっと人が喜ぶことはないのか」「本当にこれで人は動くのか」を問われ続け、そして何とか答えを出し続けるのが仕事です。

顧客のこと、商品のこと、組織のこと、販売のこと、社内コミュニケーションのこと、人材のことなど、実はテーマは違っても、それぞれが「プランニング」なのです。

ところで、そもそも「あなたの仕事はどんなカタチをしている」のか。ふと立ち止まって考えてみてはいかがですか。あらためて「何ができて、考えたと言えるのか」を思い起こしてみましょう。

その仕事のカタチやフローが見えてくると、もっと考える力を磨くことも、人の仕事のやり方を見ることも、人に教えることだってできるのです。仕事ってどんなカタチか、私のプランニング経験から探ってみたのが、図8の仕事の3段階です。

プランニング図8

仕事を俯瞰してみると、大きく3段階に分かれていると思います。まず基本の骨組みは、「インプット」→「コンセプト」→「アウトプット」、この3段階です。

これだけでは、ちょっとイメージが湧きにくいかと思います。そこで、私が現場にいた時、この一連の流れに対してつねに意識していた「蝶ネクタイ型」のフローをご紹介します(図9)。

プランニング図9

様々な課題解決をするときに思い浮かべる「プランニング3分割法」で、蝶ネクタイのカタチを憶えておくと、とても便利です。

Aは〈情報収集〉です。ネクタイの幅の広さは情報量を表します。情報が集まれば集まるほど、全体像が浮き彫りになり、何が問題かを発見するのにブレがなくなります。また、専門外や異質な情報を広く集めることで、次のBのコンセプトワークに影響を与えます。

Bは、〈課題創造〉です。この形がギュッと絞られてくるのは、情報が集約され、プランニングの中心核を創り込むからです。

プランニングのすべてを支えるコンセプトの創造です。従来の行き方とは違う方向を発見するのですから、新しい課題を提案し、そこに挑戦することになります。

Cは、〈課題解決〉です。コンセプトを具現化するために360度のアプローチ展開が求められます。あらゆる角度から攻めて、コンセプトを浮き立たせていきます。蝶ネクタイのCの幅が広くなるのも、戦略、戦術にこだわり、攻め続けるからです。そこまでのこだわりがあって、初めて「いけそう!」「効きそう!」と言えるプランニングになります。

このカタチは、仕事の3段階を示すと同時に、私なりのプランニングに対する気持ちを表していました。

全体から中心へ。中心から全体へ。拡げて(情報収集)、絞って(コンセプト)、拡げて(実行計画)、という仕事の流れでもあります。

制作チームのディレクターの時も、同様に3段階のフレームを頭に入れて考えていました。

基本は一緒。自分がコピーを書かなくても、リーダーとして違った角度からインプットし、課題について読み込み、ブレないように中心を考え続けていきます。同様に、すべての業務のリーダーもマネジメントとしての役割はこの3分割に当てはまると思うのです(リーダーの仕事の3段階です。図10)。

プランニング図10

プランニングは「3つの発見」がキーとなる

とくに、この仕事の3段階の中でキーとなるのが、「3つの発見」です(図11)。

「発見する」とは「想像する」こと。独自の感性で切り口を発見し、提案性のある新しいコンセプトを発見し、大きなウズを巻き起こすビッグ・アイディアを発見していく…。こんな仕事の3段階が理想です。

プランニング図11

とくに、一見バラバラなデータ、情報、知識を組み合わせて、新しい価値観を生み出すコンセプトの発見は、独創性を求められるところです。

「スターバックス」を仕事の3段階に当てはめてみる

勝手なことであると承知の上で、仕事の3段階をわかりやすく伝えるために、「スターバックス」を分解してみました(「CASE1」)。

とくに欧米の企業は、トップの志が高い、コンセプトが明快、戦略志向が強い、アイデンティティを尊重する。何よりその思いを言葉にし、体質化しているところが羨ましいほどです。

それはひと言で言うと「企業ブランドこそ最大の資産」と考えているからだと思います。

「CASE1」は、『スターバックス成功物語』(ハワード・シュルツ、ドリー・ジョーンズ・ヤング著、日経BP社)から自分なりの解釈で、3段階に当てはめてみました。

プランニングcase1

プロフィール

高橋宣行(たかはし のぶゆき)

1968年博報堂入社。制作コピーライター、制作ディレクター、制作部長を経て、統合計画室、MD計画室へ。制作グループならびにMDU(マーケットデザインユニット)の統括の任にあたる。
2000年より関連会社を経て、現在フリープランナー。企業のブランディング、アドバイザー、執筆活動などで活躍。著書に『高橋宣行の発想ノート』『高橋宣行の発想フロー』『高橋宣行の発想筋トレ』(以上、日本実業出版社)、『博報堂スタイル』『今どきの、発想読本 「コラボ」 で革新』(以上、PHP研究所)、『オリジナルシンキング』『コンセプトメイキング』『「人真似は、自分の否定だ」』(以上、ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『発想職人のポケット』(小学館)他がある。

※著者が本書のねらいを語った「はじめに」も、小社公式サイトで公開しています。

※『この1冊でわかる ○○の基本』シリーズラインアップはこちら!


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