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スタートアップ1年目でのエンジニア組織設計を振り返る

アセンド株式会社でCTOを務めている丹羽です。
今回のnoteでは、シード期のスタートアップのCTOとして1年弱を務める中で進めたエンジニア組織設計を中心に振り返り、先日にプレシリーズAで累計2.5億円の資金調達を完了した弊社として次のステージに向けた組織像についてまとめます。

また、こちらはCTOアドベントカレンダー17日目の記事となります。まだ間もないスタートアップCTOでありながらも、お誘いいただけたことに感謝します。


スタートアップCTOの役割

スタートアップのCTOとなり当たり前でありながら重要と考えていることにCTO, CxOという役割に具体的な答えは無いということです。この考えの中で私がCTOとして務める役割は組織・事業に対して最適な戦略と施策をエンジニアとして設計していくことです。
また答えがないからこそ、幅広い考え・手段を知ることは重要であり今回のnoteがスタートアップのCTOの方々・これからなる方々の役に立てばと考えています。

スタートアップにおけるエンジニア組織設計

進化的なエンジニア組織

エンジニア組織に限らず設計をするためには目的と制約を整理することが重要です。その一方でスタートアップとは資金を受けている以上は事業目標も組織形態も急激に変遷して成功していくことが社会的にも求められます。変遷のタイミングは主に資金調達のシリーズと連動していきます。
シード期において目的はProblem Solution Fitであり、資金と人員は非常に少ない一方で非常に強い同志がいることが制約になります。そして、プレシリーズAの現在においてはProduct Market Fitが目的であり、資金は多少は安定し小さいながらもチームを形成できるようになります。

スタートアップの組織を設計する上で重要となることは現在のシリーズに応じた最適な組織設計をしつつも、次のシリーズへ変遷可能であること。すなわち進化的な組織を設計することが求められます。

組織設計で基礎とした思考

私がこの進化的な組織を設計する上で2つの分類を持って考えています。

  • シリーズに関係なく普遍的な組織文化を成す設計。

  • シリーズごとにアプローチを変えなけれならない設計。

組織設計において特に注力することは普遍的な組織文化を成す設計です。シリーズごとのアプローチは世に溢れる組織設計のベストプラクティスを適用することで良いと考えますが、普遍的な組織文化を成す設計においてはベストプラクティスにはあえて囚われず、組織マネジメントの名著から考え方を学びました。
組織マネジメントの名著にもいくつかあります。有名どころではドラッカーですが、目標達成型の組織において適していると考えます。しかし、次の社会・業界のあるべきを創るスタートアップという組織においては「学習する組織(The Fifth Discipline)」が最適と考えました。

学習する組織での組織設計では5つの核が挙げられています。私はスタートアップ初期においては共有ビジョン、メンタルモデルそしてシステム思考を重視しました。逆に自己マスタリーとチーム学習は初期フェーズにおいては立ち上げメンバーが自然と持つ素養であり、メンバー間での密な議論によりメンタルモデルは形成されやすい優先度は下げています。

  • 自己マスタリー

  • 共有ビジョン

  • メンタル・モデル

  • チーム学習

  • システム思考

共有ビジョン
同じ志を持って立ち上げてスタートアップであるはずなのに、ビジョンが共有されていないことはあるのか?と疑問に持たれる方もいると思います。スタートアップが実現しようとするビジョンはまだ世になく巨大なものであるため、方向性は同じであれ人によって解釈の仕方が異なることがままあります。私はビジョン共有のため精度の高いビジョンの言語化と組織システムへの遍在を意識しています。

システム思考
これはシリーズに関係なくCTOとして普遍的に求められる能力だと思います。システム思考では複数の設計・施策を組み合わせたときの相互影響がどのように働くかを考えることになります。特に私はシステム思考をもって組織・プロセス・アーキテクチャの全てをアライメントする(一直線上に並べる)ことに注力しています。


アセンドのシード・プレシリーズAでの組織設計

最後に私が以上の考え方を持ってアセンド株式会社でどのような組織を設計してきたか触れていきます。

アセンドの共有ビジョン「物流業界が主語」

組織の目的と制約をお伝えするために弊社・アセンドについて紹介します。弊社は運送会社の物流DXを支援するSaaSを開発しており、まずは現場業務をデジタイゼーション(業務のIT化)し、データ化された運送案件のデータを元に経営を分析しデジタライゼーション(業務・経営の改善)し、物流DXを実現する土台を着実に作っている状況です。

アセンドのバリューには「物流業界が主語」があり共有ビジョンに繋がっています。事業を運営するにおいて収益源となる顧客を見ることは非常に大切であり、それに目がいきがちになります。しかし、我々がスタートアップをやる原動力には物流業界の健全化があります。そのためアセンドは顧客ではなく明確に物流業界を主語にしており普遍的な組織文化です。
(余談ですが、タクシー業界に最低運賃で法的守りがあるのに比べ、運送業は社会インフラと言われながらも最低運賃の法規制はなく荷主交渉力が弱く経営する方も運送をする方も辛い状況にあります。事業という実行力を持って社会的な健全化を目指しています。)

プレシリーズAでの目的と制約

エンジニア組織を設計する上で私が整理した目的と制約は以下です。組織がシリーズによらず普遍的に持つべき制約は太字にしています。
目的
PMF(Product Market Fit)の達成。
現場業務担当者がこのSaaSがなければ業務をしたくないと思い、経営者がデータ分析結果により改善施策を打てている状態を実現する。
制約
- 高速な開発サイクルによる価値検証ができること
- ユーザ・業界ドメインを深堀りし、学びをメンタルモデルとし形成できること
- 検証において作り捨てを許容しつつも資産となるコードをつくること

具体的な設計・施策

アセンドのエンジニア設計ではリリーススピード・Time to Valueに非常に拘っています。現時点では1日に3回の本番リリースを実行しており、リリーススピードを上げるために継続的な投資をしています。
プロダクト価値を形成するにおいてリリーススピードが1つ大きな指標であることが言われています。また、AWS re:Invent 2019に現地参加し最も学んだセッションからこの指標は来ています。

リリーススピードを実現するために組織構造・開発プロセス・アーキテクチャの全てをシステム思考を持って1つにアライメントすることを試行しています。アセンドではフルサイクル開発とエンジニアによるプロダクトマネジメント、生産性を高くするFull TypeScript構成で開発を進めています。また、k8sとArgo CDを利用して master ブランチにマージするだけで本番リリースまでできるGitOpsを中心に開発生産性にも積極的な投資をしています。

さらに具体的な施策については、以前に招待いただいたイベントでの発表を Logmi Tech さんにまとめていただいているのでコチラをご覧いただければと思います!

最後に

今回はアセンドのエンジニア組織をどのような思考を持って設計しているかをまとめました。これからスタートアップ・エンジニア組織を形成していく方に少しでも助けとなれば幸いと思います。また先を行っている先輩CTOの方々にはこの考えにおける誤りの指摘や助言をいただけますと幸いです!

弊社は共に社会インフラである物流業界を主語にして、開発できる仲間を募集しています!
本記事を読んで少しでも弊社に興味を持った方は丹羽のTwitterに連絡をいただけますと非常に喜びます!また弊社のエンジニア募集ページもぜひご覧ください!



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