なぜ野党は政権の選択肢となれないのか

 安倍内閣の支持率がじりじりと下がり続けています。コロナ対策の迷走に加え、検察庁法改正案が非難されたことや、河井前法務大臣夫妻の逮捕・起訴も不支持に繋がっていると思われます。

 しかし、その一方で野党の支持率も伸び悩んでいます。7月のJNNの世論調査では、自民党の支持率が35.8%に対して野党第一党である立憲民主党は5.1%と大きく離されている上に、前回より1ポイント下がっています。本来、政権与党が国民から見放された時に政権の選択肢として浮上すべき野党が存在感を示せていないのです。

 一体何故なのか。様々な見方があるでしょう。誤解を承知で言ってしまうなら、「野党の今の仕事からは政権担当能力を判断できないから」です。

 私は共闘野党を応援していますが、しかし「野党が政権を担えばこの国は良くなる」と言い切ることは不可能です。私は「野党は批判ばかりで対案を出さない」とは言いません。対案を出すことも多いですし、政権を監視し批判するのが野党の仕事です。ですが、政権の出す政策に対し後出しでその都度対応しているようでは、野党が一貫して実現しようとしている政策を見ることができません。

 内閣や与党の動きはマスコミに大きく報じられます。政権与党が検討している政策は実現可能性が高いため仕方ない部分もありますが、そうして政権与党にばかりアピールをさせていては野党が存在感を示すことは不可能です。

 そこで、共闘野党は影の内閣(シャドー・キャビネット)を作るべきです。

 影の内閣はイギリスに存在する制度で、野党が影の総理大臣を始めとした影の内閣を作り、与党に対抗しうる政策を作るというものです。野党が勝手に作っているものではなく、正式に国から予算を割り当てられ、政権を担当する内閣と正面のら対決する形で、生産的な議論を醸成する仕組みが整えられています。日本でもかつて野党が影の内閣を作ったことはありましたが、そのどれもが党内で勝手に作った制度だった為に国民にも認知されませんでした。本気で政権交代を狙うのであれば、共闘野党で連立を組む形で作るべきです。

 影の内閣を作るメリットを説明します。

 まず第一に、影の内閣を作ることにより、政権与党との政策の違い、立場の違いを鮮明にすることができます。内閣が政策を打ち出した時に、それに対抗する対案を野党としてではなく「影の内閣として」提示します。野党各党がバラバラな主張をしていてはマスコミも取り上げませんが、影の内閣として対案を出せば国民もそれを元に与党案と野党案を見比べることができます。選挙期間以前から野党全体として訴える政策を明確にし、影の内閣として主張することで国民にアピールすることもできます。

 また、影の内閣を作れば影の閣僚ごとに役割を分けることができます。総理大臣と影の総理大臣が対決し、財務大臣と影の財務大臣が対決する。そういう形で分業を進めれば、「野党はモリカケ桜ばかりでコロナ対策をしない」などといった批判を避けられます。

 そしてこれは今までの影の内閣にはできなかったことですが、連立を組む形で影の内閣を作れば政権交代後の予行演習ができます。かつて民主党政権は社民党と連立を組みましたが、基地移転問題で意見が割れ連立解消の憂き目に遭いました。二の轍を踏まないためには政権交代前から他党と協調し、意見の対立を調整して政策を合致させる練習をする必要があります。特に共産党と共闘するのであれば政策面で粘り強い交渉が必要になるでしょう。早い段階から進めるべきです。

 日本はイギリスと同じ議院内閣制であり、イギリスのような二大政党制を志向して小選挙区制が導入されました。だとするならば内閣を適正に監視する野党を育て、政治を健全に運営するために影の内閣も制度として輸入すべきでしょう。

 どうせ影の内閣を作るならば、自民党のようにベテラン議員の名誉職として大臣を任命するのではなく、野党各党の優秀な議員が結集し、IT大臣等の専門的な分野に関しては民間からも招聘しながら、利権に左右されない国民本位の体制が作られれば素晴らしいなと思います。共産党のベテラン議員の下で立憲民主党の若手議員が勉強するような、そんな協力関係を見てみたいです。

 「野党に任せれば日本は良くなる」と信じられる体制を作って欲しい。それこそが国政に緊張感を生み、国民の関心を増し、民主主義を進歩させることに繋がります。


追記 このnoteを書いている最中に、立憲民主党と国民民主党を解党し、新党立ち上げという形で合流する方針で一致したという報道が出ました。私は共闘を応援していますが、合流には反対です。党を作っては壊しを続けていては有権者からの信頼は得られません。

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