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タレントに政治的発言をさせるな

 先日Twitterにて、 #検察庁法改正案に抗議します というハッシュタグを用いたツイッターデモが行われました。日頃政治ツイートをしない芸能人すら巻き込み、国会やニュースでも取り上げられる大きな動きとなりました。

 まず前提として申し上げておきたいのが、あの改正案は数多くの検事・弁護士・裁判官・法学者がその危険性と説明不足を訴えている、抗議して然るべきものだということです。条文の読み方も知らない、司法の独立も理解できない自称ジャーナリストや自称政治評論家が「定年を引き上げるだけだから問題ない」だの「検察は行政の一部だから三権分立には影響無い」だの「左翼のデマ」だの「よく知りもしないのにトレンドに乗っかってる奴はバカ」だのと声を上げる人を攻撃し火消しを図っていましたが、そんな奴らの屁理屈を真に受ける必要はありません。「軽率に政治の話をすると叩かれるからやめとこう……」と萎縮する人が増えれば健全な民主主義は損なわれてしまいます。専門家も一般人もタレントも、誰しもが政治について考え、発言すべきです。

 さて、しかしここからが本題です。今回のこのツイッターデモ、タレントが多数参加したこともありマスコミの取り上げ方も

「もうこれ以上、保身のために都合良く法律も政治もねじ曲げないで下さい。この国を壊さないで下さい」。俳優の井浦新さんが10日朝に投稿すると、昼までに2万件以上リツイートされた。
 歌手のきゃりーぱみゅぱみゅさん、音楽グループ「いきものがかり」の水野良樹さん、俳優の浅野忠信さん、秋元才加さん、芸人の大久保佳代子さん、漫画家の羽海野チカさんらも同様に、ハッシュタグ付きで抗議の意思を示した。

などと、著名人が参加したことを強調するようなものが多くありました。

 勿論、芸能人含め誰が政治的発言をしてもいいです。「自分の知ってる芸能人だって声を上げてるんだ!」と勇気づけられる人がいてもおかしくありません。しかし、改めて強調しておきたいのが「芸能人が賛同したから正しいというわけではない」ということです。

 注目されていないけど重要な話題は沢山あります。無名だけど賢い人が注目している大事な問題だって沢山あります。しかしどうしても人間は目立つものしか認識できないので、キャッチーな話題であったり、有名人が取り上げた話題に気を取られてしまいます。それが結果的に「有名人が賛同しているから正しいのだろう」「有名人に言わせたら支持者が増えるだろう」と煽動による政治を正当化することに繋がります。

 最近は感染症対策として数こそ減っていますが、しかし依然タレントをコメンテーターとしてスタジオに呼ぶワイドショーの悪しき文化は続いています。タレントが私的なツールで政治についてコメントするのは勝手だとしても、素人であるタレントをスタジオに読んでご意見番として政治についてコメントさせるのはやめるべきです。

 先日NHKにて、西村大臣と中継を繋ぎ、日本各地の困窮する人々の姿や声を見せつけコメントを迫る特番をやっていました。本来番組のコメンテーターとはこうあるべきでしょう。街の生の声を拾い、専門家が解説し、政治家がそれについてコメントする。そこまでがセットとなっていてこそ意味があるわけで、街の映像を見てタレントがどう受け止めるかなんてどうでもいいのです。坂上にコメントさせんな。

 コメンテーターとして政治家を呼べば、税金と権力を預かる代議士が国民の窮状をどう捉え、どう応えるかが分かります。その人がまともな政治家なら国民からの株も上がるでしょうし、的外れなことしか言えないなら株を落とすでしょう。いずれにせよカメラの前で原稿無しに答えたことが国民の判断材料となり、選挙も含めた民主主義が活発化するのです。テレビは不偏不党であることが放送法で定められているので、可能であれば毎日複数の議員を、最低でも日替わりで様々な党の議員をコメンテーターとして招くと良いでしょう。政党のアピールチャンスともなれば政治家も高額なギャラを求めないと思われるので、番組の制作費を削減することも可能になります。

 どうせタレントのコメンテーター目当てでワイドショーを見る視聴者などほとんどいないのですから、賑やかしのタレントに政治的なコメントをさせるくらいなら、政治家を呼んで政治的見解を求めましょう。

 とにかく坂上忍は引っ込め。

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