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2019年2月に生まれて初めて『耳をすませば』を見た人のビフォーアフター

すみません、実は『耳をすませば』見てませんでした!

正直、これまで見たフリをしていた。だってテレビ放映ある度にTwitterとかで皆がよく話してるから見てなくても大体の内容は知ってるし。
こんな感じですよね?

・作家志望の雫とバイオリン職人を目指す天沢聖司くんの恋物語
・舞台は聖蹟桜ヶ丘で坂の場面が多い(『君の名は』の例の階段みたいな)
・ふたりの出会いは図書館。図書カードが知り合うきっかけ(?)
・あと、自転車二人乗りで坂を上ることで親交を深める
・聖司くんはカッコよすぎるしCVが声変わり前の高橋一生
・やなやつ! やなやつ! やなやつ!
・コンクリ~~ロ~~ド♪
・聖司くんはイタリアに? 留学へ行くらしい
・元祖猫男爵ことバロンが出てくる。きっと雫の夢の中で会うんだろう
・もしくは雫が書いている小説のキャラ?
・ラストシーンは聖司くんが雫にプロポーズ
・でも、大人から見たら絶対別れるやろ? って感じなんだろうなァ…そう言ってる人多いし。ま、中学生で遠距離恋愛はね……。

バッキャローーーッ!!!
そんな訳あるかーーーーいッッッ!!!!
絶対二人は結婚してるし夢も叶えてるわ!!!!
よしんば夢破れたとしてもこんな最高な青春時代を過ごした人間の人生87%の確率で華々しいものになってるに決まってるっつーの!!! 

……すみません、取り乱しました。
え、この作品…まず最高の1000億兆点映画だってことは一旦置いておくとして、私から見たら勝利確定略して勝ち確の描写しかされてないと思ったんですがいかがでしょう!!?

以下、アラサー女の偏見を書き連ねていきます。

①雫も聖司くんも『持てし者』

この映画が始まって私がまず度肝を抜かれたのは、質素で生活感溢れるが文化的教養が息づいていることがはっきり見て取れる月島家の描写でした。

天井まで届く本棚…
明らかに書斎用ではないスペースに作られた書斎…
なんか分からんけど家に帰ったら両親が書きものをしている…

初見でいやこれ作家になるヤツの生育環境やんって思っちゃったよ。
ほら私、学力テスト最下位県の『わたるがピュン!』って野球漫画と『らんま1/2』の8、9巻しか本のない家に生まれたもんだから、明らかに親が読書家って本棚見せられるとビビるし、子供自身も読書好きだったりするとハイもう2個武器揃ってる! 作家デビュー待ったなし! と思う…んだけど…違うんですか? もしかして家に本が沢山あって子供の頃から読書が好きで本人がそれを望んでいても作家になれない場合はある? そりゃもちろんそうだろうけどかなり有利なカードを配られてるとは思いませんか? だって作家の読書道読んだらホンット大半の人が家に沢山本があって、子供の頃から読書家で…みたいなこと言ってるよッッ!?


しかも雫は「本しか友達がいねぇ…」みたいな(私みたいな)陰キャではなく、明るく活発で友人も多く、次女らしい若干の図々しさも持ち合わせており、男の子ともポンポン言い争いができて、けど伊達に本を沢山読んでおらず杉村に「お前が言うな」的な注意をしてしまったことに気づいて反省できる繊細さも持ち合わせていて、その長所も短所も全体的にキュートにまとまっているという…

そりゃモテるよ!!!!!!! 将来、作家デビューした後も編集者と良好な関係築けるよ!!! 企画の売り込みや報酬の交渉も上手いことやれるだろうから食いっぱぐれないよ!!! チックショウ、何で私は雫ちゃんじゃないのッ!???

羨ましすぎて具合が悪くなってきました。続いて聖司くんいきましょう。

まず容姿端麗です。

この一点で話を終えて「ただしイケメンに限る」思想の方々に喜んでいただくのもいいのですが、正直、聖司くんレベルの『持てし者』なら多少お顔がイマイチでも全く問題にならなかったんじゃないでしょうか。もし女性が純粋に顔だけで男の人を選ぶとしたら川谷絵音くんはベッキーと付き合えてないよたぶん。では、聖司くんは何を《持って》いるのか?

・最高に素敵なアトリエを経営し、アンティークの修理を生業とする祖父
・PTA会長だったこともあるらしい父(母?)
・バイオリンを演奏する技術、バイオリン学習を続けられる実家の経済力
・図書室に本まで寄贈していることからも上流家庭出身であることは明らか
・『一流のバイオリン作り』を夢見る中学生離れした感性
・学業成績優秀、同級生たちから一目置かれている
・好きな女の子に歌を歌わせていると、祖父とその友人たちが演奏に加わってきて小さな音楽会になる───そんな人生で一度あったらすげえよレベルの素敵な出来事をさほどの驚きもなく受け入れ、当然のごとく甘受できる
つまり日頃から物語の中で生きているような稀人(まれびと)

《持ち》すぎだろコイツ。もっと具合悪くなってきたわ。
その上、聖司くんは恋愛に関してもアグレッシブ。

・図書館で出会った気になる子が読みそうな本を先回りし、名前を書くことで意識させるという、単純接触効果を無意識に実践

杉村には到底考えつかないであろう接近の仕方を計画。しかも、ただ計画するだけではなく実行する。その行動力

・その割に、面と向かった時に雫に対してガツガツ行きすぎない自制心(「俺下にいるから好きなだけ見てていいよ」とかね。私だったらきっと一秒でも長く居座って少しでも会話して好感度上げねばッ…! と必死になってしまう。そしてウザがられる)

・また、両思いが確定するまで恋愛感情をほぼ見せない。心の中は「雫!! 大好きだ!!」って想いでいっぱいのはずなのに…聖司くんが好意をはっきり示したのって、図書カードで単純接触効果を狙っていたことを明かすシーンと、ラストの「結婚しよう」「雫、大好きだ!」のシーンだけなんだよ!!!(地球堂の前で雫と顔を見合わせて照れるなどのつい「こぼれちゃった」シーンは多少あったけど!) 

おい!!! 言葉にしなくてもほぼ「私たち付き合ってるよね」みたいな状態になってから告るって、中学生のくせに恋愛上級者すぎるよ!!!!!!

いやぁ~…びっくりしました。子供の頃に『耳をすませば』見れていたら、ほとんど話したこともないのに急に相手に告白して爆死したり(そんなの相手が元々好感を持ってくれてなきゃ上手くいくはずないのに)、好き好きぃ~~~!!!! って気持ちを前面に押し出して執拗に絡みすぎて爆死したり(そんなんばっかだよ)しないで済んだかもしれない、んですか…?

ふっっっざけんなよ!!! こちとらもうおばさんなんだよ!!!!!

話が逸れました。とにかく、雫と聖司くんは共に《持てし者》です。
ここまではご納得いただけたでしょうか?

(というか、改めて聖司くんの行動をさらってみたら、パーフェクトすぎて何らかの恋愛塾に通ったのかなぁ? と思ってしまうな。読んだことないけど恋愛工学とかって、ほぼ聖司メソッド的なやり口教えてたりします?)


②『持てし者』同士は惹かれ合う

一旦、『ロブスター』を見てください。Netflixにもあります。
すみません…直接は関係ないんですけど、好きな作品なので。

と思ったら関係あったわ。結局、人は自分と共通点のある人を好きになるってことですよ! そのパターンがあまりに多すぎるから、ギリシア人のやたらに名前が格好いい映画監督にこんな意地悪な映画撮られちゃうの!

(ついでに『女王陛下のお気に入り』も見よう、メチャ百合だよ!)

私、知り合いがめっちゃ少ないんであんまり確信を持っては言えないんですけど、カップルって、その人の容姿とか才能とか収入とか人柄とかをトータルしてつけた点数が大体同じくらいの二人組になってますよね? 
もうこんなこと、100年前から言われている───芸人さん風に言うとコスられ倒している(恐れ入ります、この表現一度使ってみたくて)から改めて言うのテレ臭いんですけど、やっぱりそういう人たちがくっついてるし長続きしてる印象なんすよ。

そういう訳で、雫と聖司くんの点数も大体同じくらいになってるはず。
独断と偏見で計算してみよう。

【容姿】 雫/78点 聖司くん/83点
【家柄】 雫/76点 聖司くん/85点
【資産】 雫/75点 聖司くん/81点
【社交性】 雫/85点 聖司くん/73点
【生活力の強さ】 雫/82点 聖司くん/79点
【善良さ(純粋さ)】 雫/80点 聖司くん/80点
【特殊技能の実力】 雫/79点 聖司くん/80点
【性的魅力(モテ度)】 雫/85点 聖司くん/82点
【将来性】 雫/79点 聖司くん/80点

【総合得点】 雫/719点 聖司くん/723点

……どうですか?

いやどうですかじゃねえよ、と思われましたでしょうか? だとしたらごめんなさい。でも、そこまで大ハズレって訳でもない感じしません? しませんか。だとしたらごめんなさい。

しかし私はこの意見を曲げるつもりはねぇ。「学園の王子様が私なんかを好きに~~~!????」的な展開は王道ですが、私は結局トータルの得点で考えたら同じぐらいになるだろうからカレと釣り合わない…とか悩まなくて平気やでお嬢さんと思ってます。

有名どころで言ったら『花より男子』のつかさ&道明寺とかも、道明寺は家柄98点でも初期性格は32点ぐらいだからピッタリお似合い。むしろ若干つくしの方が点数高くなっちゃうくらい。…ヤベェまた話逸れてきてるな?
 
とにかく、雫&聖司カップルはちょうどいい点数、似た者同士、しかも世の中においては少数派の《持てし者》たちだから、高校進学したら別のイケメンとくっつくだろ、とかイタリアのパツキンちゃんに乗り換えるだろ、みたいな展開が意外に起こりにくいんじゃないかなと思う次第。


③この『耳をすませば』の時間が二人の人生の絶頂かもしれない疑惑

いや~、『耳をすませば』って最高ですよね。こんなキラキラした人生を二次元的存在ではない現実の人間が歩んでいるかもしれないとしたら、ほんと三田誠広先生じゃなくても「僕って何」って尋ねて回りたくなりますわ。

でもね、私は始めにブチ切れた通り、雫ちゃんも聖司くんもかなりの高確率で幸せになってるだろうなって思ってますよ。思ってるんだけど、『耳をすませば』で切り取られたふたりの時間はあまりにも素敵すぎるから、もしかしたらここが彼らの人生のピークかもしれないという想像も禁じえない。

だから高校になったら別れるだろー、とか、実際に結婚なんて出来るわけないじゃん、って気持ちが湧いてくる人もいるんでしょう。(私も見る前は完全にそう思ってたし)でもね……

私たちが『耳すま』のきらめきに囚われているように、きっと雫と聖司も囚われてるよ。

別れて、もし別の人を好きになって付き合うことになったとしても、ふたりは今の自分より、もっと幼くて純粋で希望に満ち溢れた頃に愛した雫/聖司のことが忘れられないよ。

これは完全な想像だけど、ふたりは遠距離恋愛が辛すぎて、もしくは手近にいるいい感じの子に気持ちが移ってしまって、別れることもあると思うよ。

でも大人になっても、思い出に囚われているからもう一度会いたくなって、聖司が日本で工房を開くから帰ってくるとか、雫が新作の取材でイタリアに行くとか(その時の恋人と別れた傷心旅行も兼ねてたりするかもしれない)の理由で何だかんだ再会して、『耳すま』の主役を張ってた頃の自分たちにもう一度戻りたくてヨリ戻して勢いで結婚したりするから。絶対。


結婚したあとのふたりは、どうなんだろう。
「聖司変わっちゃった」「雫もこんなつまんない大人になったのか」みたいなこと思いながらイヤイヤ一緒にいるパターンみたいなのもあるかもしれないけど、耳すま見た分だとふたりはきっと自分の人生を一生懸命生きて、素敵な人になってるはずだから、絶頂の頃に負けないくらい幸せに…とまではいかなくても、ちゃんと幸せにはなるんじゃないかな。

できたら、こんな意地悪なおばさんの想像なんかに負けず、あの朝日を見ながらの「大好きだ!!!」を越える幸せな瞬間が山ほどあるいい人生を送っててください。1000億兆点の青春を見せてくれてありがとう。

(ね? 2019年の2月に初めて見たから、14年以上前の超超有名作をこんなに新鮮に熱く語ることが出来るんですよ! お目汚し失礼しました)


「スキ」を押すとめちゃめちゃ面白くてオススメな小説の名前が飛び出すよ!