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公園のベンチ

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#エッセイ

白髭2

「よろしいかな?」 「え?いつから其処に?」 「私はずっと此処に居ました。あなたにとって…

nitsubonome
1年前
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白髭

「さて、わしの役目は果たしたぞ。そろそろ出かけるわい。」 「また気袋集めですか?」 「籠…

nitsubonome
3年前
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気袋3「交換」

「座ってもええかな?」老婆の声がした。涙も出尽くしたところだった。 「どうぞ。」 「あり…

nitsubonome
3年前
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気袋2「ギフト」

乳母車を引く、老婆。 闇の中から現れた。 ゴロゴロと近づいて来る。 あれ?さっきのばぁさん…

nitsubonome
3年前
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気袋

真夜中の公園は相変わらずベンチが点滅している。いくつかの灯りが消え、いくつかの灯りが点く…

nitsubonome
4年前
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大輪

ドーン! 大きな音が響き渡った。 ドーン!ドーン!と続く。 花火だった。 花火の音は、遠…

nitsubonome
4年前
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輪転写

雲の写真を撮っている人。世間の枠と自分の枠を重ねて写真を撮ると言う。楽しそうに語った。意欲が伝わってきた。 わたしは、その勢いに圧された。 思えば、あの御人。 公園を立ち去った、あの御人も。 自分を語るためにわたしを見つけたようなことを言っていた。 ひとしきり、自分を確かめるように語ると公園を立ち去った。 わたしは、ただ聞いていた。 公園を立ち去った御人と雲を撮る人。 二人に互いの接点は無い。 それぞれのふたつの色が、 わたしの中で混ざり合う。 わたしもふたつの色に

浮雲

その枠、私のなんです。さっき、落としちゃったみたいで....ごめんなさい。 ーーこの香り。あ…

nitsubonome
4年前
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世間の枠

一瞬、強い香りが鼻を突いた。 それは、人工的な香り。 きっと、人が肌に付けるものだろう。 …

nitsubonome
4年前
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錯覚

わたしにはわたしを確かめる術が無い。 これは不文律か。 わたしがわたしだと思っているわた…

nitsubonome
4年前
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まどろみ

身体の細胞が少しづつ意識と結びついていく。 瞳は瞼の中で目覚めをぼんやりと自覚する。 肩か…

nitsubonome
4年前
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とびら

わたしはベンチに身体を横たえた。 そっと目を閉じる。 真夜中の公園は、静かです。 風の音が…

nitsubonome
4年前
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眠り人

いくつかの出合いがあり、いくつかの別れがある。 繰り返される出会いと別れ。 この公園もま…

nitsubonome
4年前

なごり

公園の木々がざわめいた。 突風が吹いた。 掌の石ころが風にさらわれた。 一瞬のことだった。 石ころの感触は手の中に残っている。 温もりとともに。 真夜中の公園は相変わらずベンチが点滅している。いくつかの灯りが消え、いくつかの灯りが点く。ベンチに座る人、ベンチを立ち去る人。そんな光景が遠く彼方にまで繰り広げられています。わたしのベンチもまた、彼方からは点滅するベンチのひとつとして映るのでしょう。 ひとつの石ころが、わたしの中をすり抜けていった。 手の中に温もりを残したまま