日本民族・大和民族と日本人
なんだか純心そうな左翼の人が民族と国籍の違いを混同しているのを見かけてしまった。民族は基本的に血族関係を基礎にした集団であるから中心部の純血の集団と辺縁部の混血の進んだ部分に分かれる。
1「国籍」と「民族」の違い
国籍は血縁やルーツにはなんの関わりもない。国民国家の国民としての資格を確認・規定するためのツールである。そのため、多くの日系日本人以外に朝鮮系日本人や中華系日本人、ロシア系日本人、アフリカ系日本人(もちろんこの中には多くの細分されるべきルーツがある)、欧州系日本人その他多くのルーツを持つ人が存在する。この時、日系ということになれば、これは明治維新以前から日本に住んでいた人の子孫というある意味民族的、地縁・血縁を示す言葉になるだろう。けれども、近代国家である日本では国籍を持つ者は等しく扱わねばならないのである。
時々、右派諸君が「純粋日本人」という言葉を使うのは国籍としての「日本人」ではなくて地縁・血縁を日本列島に持つ、いわば「民族」としての日本人を指す言葉がないので苦し紛れに造語したということであろう。何しろ、左派諸君は日本民族とか大和民族という言葉は蛇蝎の如く毛嫌いして完膚なきまでに破壊してきたのである。彼ら左派が喜ぶ「民族」は「朝鮮民族」「アイヌ民族」「琉球民族」だけであって、本州四国九州に住む人々には虚無を強制したがるのである。
2中華における「漢民族」
彼らは中国の「漢民族」も「周辺の少数民族以外に中華大陸に住んでいる人を漢民族と言うのです。日本人も同じで、そんな民族はいないんですよ」という。そりゃ漢民族は古代には中原で春秋戦国の覇を争っただろうが、そもそも周王朝も西方部族であるし、戦国の七雄を統一した始皇帝の秦も西方の部族である。それでも劉邦の建てた漢、三国時代から司馬懿の子孫の建てた晋辺りまでは民族としての一体感もあったのかもしれない。けれども、三国時代有数の国であった魏の曹操の息子の髭は黄色かったので黄髭と言われたという伝説もある。
シルクロードから交易の民がどんどん流入しただろうし、晋の滅亡後は北方の匈奴や鮮卑、西方の異民族の侵入が繰り返され、五胡十六国時代に入るわけである。晋の一族は南部に逃れ、東晋となって継続するが、その地は元々楚の地である。中原の漢族からは蛮族と言われていた人たちの住む国であった。北部は鮮卑の北魏が統一して、ついには北朝系の隋が中華を再統一するわけであり、「異民族の支配による中華」が始まるわけで、その間に漢民族と異民族の混血もずいぶん進んでいったということになる。
3日本における「民族」の形成と左派による否定
それに比べると、日本では、例えば天津神と国津神のように少なくとも二種の部族がいたことは既に記紀に明記されている。オオクニヌシの国譲りなどに見られるように、古い時代に日本に渡って来ていた国津神系の部族が後から来た天津神系の部族に主導権・支配権を譲り渡す形で国家の形成が進んでいったということであろう。その時には戦争ではなくて婚姻による征服の形が取られている。つまりは血族集団の形成、民族の形成である。国津神一族と天津神一族の間で通婚が行われることにより新しい民族が誕生したということであろう。
左派的にはそんなの伝説、伝説、まったくの文学作品であり歴史じゃないと一蹴したいところであろう。神武天皇すら歴史じゃないと言っているわけである。ただの神話、伝説だということで天皇家を否定することで万世一系を否定すれば名をあげれる、左翼的史観であれば王権を叩き潰すのが正義だということである。例えば継体帝による王朝交代説である。武烈帝に嫡子がなく、傍系の継体帝を越前から推戴されたのを王朝交代と叫んだ人がいたわけである。万世一系2600年じゃないぞ、僅かに1500年という短期の王朝ではないかということである。
新版 日本古代王朝史論序説 (水野祐著作集) https://www.amazon.co.jp/dp/4657924257/ref=cm_sw_r_cp_tai_K4LmFb5PTZ518
宮内庁の継体天皇陵はしっかりと保護されて穏やかな佇まいであるが(もちろん入ることなどできない)真の継体天皇陵と言われる今城塚古墳はガンガンに調査発掘され、今では自由に入れる古墳公園になってしまっている。関西圏限定の話ではあるが、夏休みに自由研究のネタがない！という人は古墳のそばの資料館に行くと様々な発掘資料が展示されている展示館があるので一見の価値はあるかもしれない。(くれぐれも「コロナウイルスに感染しないように注意！」ではあるけれど)
まあ、余談だらけになってしまったけれども、左派学者たちが日本民族・大和民族という概念を否定し続けているため、当の日本人にとっては混乱を生む元になっていることは間違いない。あくまでも国民国家である日本国の国民を定義する「日本人」と日本列島に住み続けて来た民族集団を示す「日本民族・大和民族」は似て非なる概念なのである。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか？