声楽タイムズ第2回「オンラインと音楽について考える」

日本声楽家協会事務局の木村雄太です。
「木村雄太の声楽タイムズ」、第2回目となります。
近頃は皆さん、家で過ごす時間が増え、
オンライン飲み会などネットを使ったコミュニケーションが増えています。
音楽についても、直接人と会うのが難しい今、
オンライン上での新しい関わり方が生まれてきています。

以前自分はメルマガの「木村の時間」でこのような事を書きました。

「近頃はビルやコンサートホールのエントランスでの演奏会や、
街中に設置されたストリートピアノなど、様々な空間で音楽が奏でられています。(中略)
音楽は時間の芸術といわれていますが、どんな空間で音楽を聴くかによって印象も変わってきます。
意外な空間がクラシック音楽に合うかもしれません。
今までクラシックを聴いてなかった方がクラシックを好きになる空間が創れたら良いなと思います。」

音楽は時間芸術であると共に、空間を介して感動を分かち合う芸術でもあります。
コンサートホールや劇場では同じ空間で生の音楽を共有しますが、
今の状況もあり、個々の空間をオンライン上で繋いで音楽を共有する方向へとシフトチェンジしています。

さて、今回の声楽タイムズは「オンラインと音楽について考える」とテーマを掲げましたが、
音楽が今この状況で何ができるかを考えた時に、自分の考える一つポイントは
「音楽を通じて相互的なコミュニケーションを取ることができる空間を、オンラインで繋いで創り出す」ことと思います。

人と会う機会も減り、人とのコミュニケーションの機会を、自分も含めておそらく多くの人が求めているように感じます。
そんな中、お互いにコミュニケーションを取れる空間をオンライン上に、音楽を通じて創れたら素敵なことでしょう。

たとえば、それぞれの家で一人ひとりが演奏した動画や録音を重ね合わせて一つの音楽にする、といった
オンライン合唱・合奏が行われています。
他の人の演奏を聴きつつそれに合わせて自分も演奏し、それぞれの空間での演奏を繋ぎ合わせ音楽を分かち合うのは、
音楽のオンラインでの新しいコミュニケーション手段と思います。

また、Zoom等のアプリケーションを工夫して用いて、オンラインでの合唱のパート練習を試みている方もいます。
普段は練習室などで行っていた練習を、オンライン上に空間を創り出し行う、
オンラインレッスンもそうですが、教え学ぶという行為は相互的なコミュニケーションだと思います。

先日行われていた興味深いイベントとしてメトロポリタンオペラの「At-Home Gala」コンサートがあります。
メトロポリタンオペラを代表する豪華な歌手陣が、それぞれの自宅からの演奏を中継し、
ガラコンサートのようにライブ配信するといったもので、総勢40名ものアーティストが参加していました。
オンライン上に空間を繋ぎ、まるでコンサートホールのような空間を創り、
それぞれの歌手のインタビューもあり、これも音楽での新しいコミュニケーションの形の一つのように思いました。

自分自身ではオンラインでの声楽講座などを行い、受講者の方々ともお互いにやりとりできる空間が創れないかと試したりしています。
音楽に携わる皆さんにとっても大変な時期ですが、音楽を通じた人とのコミュニケーションは
形が変わっていっても大事にしていきたいと思うこの頃です。

次回の「木村雄太の声楽タイムズ」もどうぞお楽しみに!

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