声楽タイムズ第13回「クラシック音楽自由研究②」

日本声楽家協会事務局の木村雄太です。
前回、声楽タイムズ第12回「クラシック音楽自由研究」で取り上げました
ラヴェル作曲の歌曲集《博物誌》について、掘り下げて自由研究していこうと思います。

前回の記事はこちらです。 


【博物誌について】
ジュール・ルナールの散文詩にラヴェルが音楽を付けた歌曲集です。
歌のパートはフランス語の抑揚と密接に結びついており、ピアノパートはそれぞれの動物の異なる様子を示しています。
この曲には「クジャク・コオロギ・白鳥・カワセミ・ホロホロ鳥」の5匹の動物が出てきます。
自由研究ということで、動物の特徴と合わせて曲を見ていきましょう。

・参考音源
https://www.youtube.com/watch?v=MVt0yvme0f4
00:01 1曲目 クジャク
04:41 2曲目 コオロギ
07:48 3曲目 白鳥
10:59 4曲目 カワセミ
13:25 5曲目 ホロホロ鳥

・1曲目 クジャク

特徴:キジ科の鳥類で中国から東南アジア、南アジアに分布しています。オスは鮮やかな羽を持ち、その羽を広げてメスに求愛します。
曲について:婚礼の日のクジャクの様子です。
ピアノパートはクジャクが尊大に歩いている様子や、グリッサンドで羽を広げる姿などを描いています。歌手はそんなクジャクの様子を傍らから見守ります。
途中、婚約者が来ないので、クジャクがけたたましい鳴き声を上げます。


・2曲目 コオロギ

特徴:コオロギ上科の昆虫で、成虫の体長は10mmから40mmくらいです。オスの成虫の翅(はね)にはやすり状の発音器があり、それらをこすり合わせて鳴きます。
曲について:歌手はコオロギのたてる音に耳を傾けていて、曲は終始小さな音で進みます。
ピアノパートでこおろぎの鳴き声やたてる音が描写され、間の静寂が効果的な曲です。


・3曲目 白鳥

特徴:カモ科の水鳥です。シベリアやオホーツク海沿岸で繁殖して、冬は温暖な日本などへの渡り、冬を越します。幼鳥は灰褐色で、大きくなると全身が白い羽毛で包まれます。
曲について:白鳥は水をすべるように泳ぎ、綿雲を食べるなど、抒情的に白鳥の様子が描かれます。
しかし最後に突然、現実の白鳥は泥をかきまわし、虫を食べ、ガチョウのように肥える、と白鳥についてあれこれ夢見るのをやめ、空想的な姿をあざけります。


・4曲目 カワセミ

特徴:カワセミ科の鳥で、鮮やかな水色の体と長いくちばしが特徴です。
曲について:釣り人の竿の先にカワセミが止まった瞬間が、美しい情緒とともに描写されます。
長い茎の先に咲いた大きな青い花のようだと、カワセミの姿を比喩します。最後にカワセミは竿から飛んでいきます。


・5曲目 ホロホロ鳥

特徴:ホロホロチョウ科の鳥類で、体のこぶが特徴的です。
食用とされることもあり、フランス料理などで用いられることが多く、癖がなく美味として知られています。
地面を掘って、落ち葉や草を敷いた巣を作って卵を産みます。繁殖期になるとオス同士がよく争います。
曲について:強烈な音でホロホロ鳥のいたずらが描かれます。
喧嘩っ早いホロホロ鳥はひとしきり暴れた後、野原に卵を産みに行き、いなくなります。
束の間の静寂の後、遠くの方からホロホロ鳥の鳴き声が聞こえ、また戻ってきて騒ぎ出します。


このように曲で取り上げられている動物の特徴を調べてから聴くと、より作品が味わい深くなると思います。
ぜひ皆さんも動物が登場するクラシック音楽で、音楽自由研究をしてみてください。
次回の「木村雄太の声楽タイムズ」もどうぞお楽しみに!

参考文献:「フランス歌曲の演奏と解釈」音楽之友社

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