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現在制作中のゲームが面白くない理由を言語化する。




1. 概要


 本記事は、筆者が制作中のゲームがなぜ面白くないのかを研究し、言語化したものです。ゲームの改善の足掛かりになればと思い執筆しました。1万8千文字もありますが、興味がありましたらお手隙の際にぜひ読んでみてください。

 1.1. 制作中のゲームのざっくり紹介

 筆者は本業の傍ら、人生初のゲーム制作を個人かつ趣味で行っています。いわゆるインディーゲームですね。「カップリングパーティ!」というカップルを作るゲームです。
 なんだそりゃって? まずはPVをどうぞ。

 プレイヤーは天使であり、パーティ会場のスタッフでもあります。フィールド上のキャラたちを時間内にたくさんカップル成立させるのが目的です。テーブルに案内して、ドリンクを作って、パーティを盛り上げて、カップルを作って、高得点を目指しましょう!
 Unity使用。SteamとSwitchで発売予定。オンラインプレイ対応予定。最大4人でわいわい協力して遊べます。
 執筆時点で制作開始から2年半が経過しており、完成までまだ数年はかかりそうな手応えです。人生初のゲーム制作ゆえ、クオリティについてはお察しください。
 詳しくは過去の記事をどうぞ。制作を始めたきっかけや制作過程などがまとめてあります。

 1.2. 本記事の目的

 さて、ここからが本題です。
 ゲームシステムが形になったところで、サンプルステージをいくつか作って遊んでみたのですが…なんかこのゲーム、いまいち面白くない。
 とても満足のいく出来ではなく、売れるレベルに達しているとは到底言えません。そこで、1年半を費やしてなぜ面白くないかをきちんと調べ、ゲームの改善を行ったところ、初期のプロトタイプと比較して300倍面白くなりました。めちゃ頑張りました。
 ゲームを面白くする研究の資料は、過去4回に渡ってTwitterで公開しており、その都度ゲームの改善を行ってきたのですが、ここで一度、1年半を費やした研究の成果を一箇所にまとめようと思い、noteで記事を書くことにしました。いわゆる総集編です。
 参考までに、過去4回の研究資料を載せておきます。すべて本記事に含まれる内容ですので、読まなくても特に問題ありません。

 ちなみに現在、これだけ改善を重ねてもまだ面白さが満足いくレベルに達していないので、ここから更に面白さを50倍アップさせたいところですが、それは今後の課題ということで。

 1.3. 本記事は誰向け?

 というわけで、本記事は9割方自分のために書いたものです。いわゆるラバーダッキングです(アヒルのおもちゃに話しかけることで頭の中を整理し、自力で問題を解決する手法)。本記事の需要は多くないと思っていますが、あるとすれば、ゲーム制作に携わっている、あるいは興味のある方に少しでも刺さればといったところでしょうか。

 1.4. 本記事の流れ

 そんなわけで、これから自作ゲームがなぜ面白くないのかを研究していくわけですが、その手順としては、同ジャンルのゲームがなぜ面白いのかを分析し、自作ゲームと比較することで、面白くない箇所を炙り出す形で行こうと思います。
 本記事の今後の流れは次の通りです。

  1. 自作ゲームの紹介

  2. 同ジャンルのゲームの紹介

  3. 同ジャンルのゲームが面白い理由を言語化する

  4. 自作ゲームが面白くない理由を言語化する


2. 自作ゲームの紹介


 自作ゲームのざっくり説明は前項で行いましたので、ここでは少し詳しめにゲームシステムを説明します。

 2.1. 基本ルール

 こちらがゲーム画面になります。

ゲーム画面

 1ステージあたり3〜5分程度。操作は十字キー(移動)とボタン1個(物を掴む・置く)のみ。シンプル操作です。
 ゲームが始まると、定期的にお客さん(モブ)が来店します。まずはテーブルに案内しましょう。

モブをテーブルに案内

 一人一人手作業で案内してもいいですし、ベルを使用するのもありです。ベルとは、全てのモブが自動で&自由に着席する便利装置です。どんどん活用しましょう。
 テーブルの席が全て埋まると、パーティが始まります。

パーティ開始

 テーブルに表示されているアイコンは、パーティを成功させるために必要なドリンクの種類です。
 たとえば上図のように、赤と青のアイコンが表示されている場合、赤と青の2種類の果物を使ったドリンクを提供する必要があることを表しています。これらは天界由来の魔法の果物。口にした者の気分を盛り上げる的な?アイテムです(まだ設定があまり固まっていません)。この果物を使用したドリンクで会話を盛り上げ、カップル成立を手助けしてあげるのです。
 というわけで、赤と青の果物を植木鉢から入手し、ジューサーに放り込みましょう。しばらく待つとジュースが完成しますので、グラスを持って受け取りに行きましょう。

ジュースの提供

 グラスをテーブルに提供してしばらく待つと、めでたくカップルが成立してスコアが獲得できます。
 また使用後のテーブルは、後片付けを行うことで再び使用可能になります。

テーブルの後片付け

 以上がゲームの基本的なルールになります。すんごい雑にまとめるとこのようになります。

基本的なルールの雑まとめ

 ※ちなみに本記事では、果物や植木鉢が一切出てこないスクショを多く使っていますが、ゲームシステムが異なる過去バージョンのものです。

 プレイ動画はこんな感じです。わいわい賑やかな雰囲気を感じて頂ければ。

 2.2. 果物アイコン

 モブには果物のアイコンが表示されています。これは天使にしか見えない情報で、当人に対して有効な果物を表しています。同じ果物のモブ同士を同じテーブルに着席させることで、作業効率が向上してスコアアップに繋がります(具体的なルールは長くなるので省略します)。

有効な果物の表示

 2.3. 豊富なステージ

 40個程度のバラエティ豊かなステージを用意する予定です。パーティ会場のほかにも、ビアガーデン、おしゃれな街角、学校の文化祭のカフェ、お酒の飲める大人なお店、などなど。ナンパ師の襲来からお店を守る防衛戦もあったり。

ステージ例

 タワーディフェンス要素のある特殊ステージも用意しています。中世ファンタジーな世界で、敵国の兵士から城を守るのが目的です。
 どうやって城を守るのかって? そりゃもちろん、敵兵同士をカップル成立させることで、戦意喪失させてお帰り頂くのです。防壁を修理しつつ愛の力で祖国を守り抜け!

 2.4. 本作の売りどころ

 作業分担と効率化の妙を味わえることです。
 たとえば、1つのタスク(キャラをテーブルに案内したり、ドリンクを作ったり運んだりなど、カップル1組を成立させるための1作業)をプレイヤー1人で行おうとすると、フィールド中を行ったり来たりすることになり、作業効率が良いとは言えません。しかし、タスクに必要な作業を複数のプレイヤー間で分担し、声掛けしながら適宜作業担当を切り替えたりして(ギミックによりステージの状況が変化することも)、より作業効率を上げる(スコアアップする)ところに本作の面白さがあります。

 序盤のステージは簡単で面白みに欠けるかもしれません。しかし、ゲームが進むごとにステージの構造はどんどん複雑化し、難易度は上昇していきます(遠方に植木鉢やグラス棚が配置してあったり、ベルトコンベアで移動が制限されたりなど)。何を先に作業するか? 何を後回しにするか? 適切に判断して段取り良く行動しないと、クリア条件(成立カップル数が一定以上)を満たすことはできないでしょう。

より役割分担が求められるステージ構成

 ぜひ友達とぎゃーぎゃー騒ぎながらプレイしてみてください。もちろん1人でも楽しめるようになっています。


3. 同ジャンルのゲームの紹介


 自作ゲームに近い方向性の作品としては、Overcooked!、Unrailed!、ピクミン、サーモンラン(スプラトゥーン2、3収録)などがあります。これらも本作同様、みんなで協力して多くのタスクを時間内にこなすゲームであり、作業効率を極めるところに面白さがあります。本記事では、この手のゲームのことを(自作ゲーム含め)、「協力型タスク管理ゲーム」と呼ぶことにします。
 ここでは、上で挙げたゲームをざっくり紹介していきます。どれも本当に面白いゲームなので、興味がありましたらぜひ遊んでみてください。

 3.1. Overcooked!

 次々に注文が入るレストランで、肉やキャベツを切り、パスタを茹で、料理を作りまくるゲームです。大量のタスクをいかに効率よく捌いていくかを極めるところに面白さがあります。複数プレイヤーで遊ぶとなお盛り上がります。フレンドと殴り合うこと必至。

Overcooked!

プレイ動画

 3.2. Unrailed!

 走り続ける列車。しかし線路は途切れており、脱線まで秒読み状態。プレイヤーは木や石を加工して線路を作り、線路を敷き、次の駅に到着するまで列車を走らせましょう。
 資材を確保する役、線路を作る役、線路を運び設置する役など、役割分担して効率よく作業するのが楽しいゲームです。常に脱線(実質ゲームオーバー)の危機に晒され続けていて、高い緊張感があります。フレンドと殴り合うこと必至。

Unrailed!

プレイ動画

 3.3. ピクミン

 プレイヤーに付き従う野菜のような生物、ピクミン。彼らに指示を出し、多くのタスクをこなしていくゲームです。あっちの資材回収には3匹派遣して、こっちの橋の建設には10匹派遣して、遠方の敵討伐には残りを派遣して…など、限りあるピクミンを効率よく運用してステージを攻略していきます。シリーズによっては時間制限が明確に存在し、高い作業効率が求められます。
 ほのぼのゲーでありながら、やり込もうとすると途端にシビアになる任天堂らしい作品です。

ピクミン

 3.4. サーモンラン

 スプラトゥーンといえば、プレイヤーが4対4に分かれてインクを塗り合うゲームですが(いわゆるPvP)、4人で協力して遊ぶサーモンランというモードが収録されています(いわゆるPvE)。
 敵(シャケ)を倒すことでアイテム(イクラ)がドロップするのですが、これを時間内に一定数回収するゲームです。ただ、敵を倒してばかりではアイテム数のノルマが足りなくなるし、アイテム回収ばかり行っていては次々に増える敵の波に飲み込まれて全滅してしまう。敵を倒すのとアイテム回収のバランス取りが非常に難しく、いかに連携して作業分担するかがキモ。フレンドと殴り合うこと必至。

サーモンラン

 3.5. 面白さを語る

 これら4本のゲームの面白さは、前述の自作ゲームの面白さと同様、「作業分担と効率化の妙を味わえること」です。

 Overcooked!を例に挙げます。このゲームの面白さの根幹は、1ステージ3〜5分程度という短時間で行う超濃密で超高速なタスク管理。次々に舞い込む注文の通りに料理を作っていくのですが、そのためには材料を切る・運搬・焼く、料理の提供、皿洗いなど、多くのタスクを順番を考えつつ処理する必要があります。

プレイ中の脳内はこんな感じ。たった数分で10個以上のハンバーガーを要求されたりして、とにかく頭を使いまくる

 肉を焼くのを優先すべき? それとも目の前の鍋が焦げないように足を止めてでも見張っておくべき? 次の注文の下拵えを先行させる時間的余裕はあるか? いや、よく見るとそろそろ相方のプレイヤーの皿洗いが終わりそうだ、今のうちに食材を渡しておけば次のシチューに早めに着手してくれそうだ。
 常にフィールドを俯瞰し、状況を瞬時に見極め、最善の行動を取り、徹底的に効率を目指していくのです。
 プレイヤーの人数が増えるほど、息の合ったコンビネーションが必要になるのですが、各々のタスクが阿吽の呼吸で噛み合った瞬間の快感は半端ない。大半は罵声に次ぐ罵声ですが。
 皆さんもぜひフレンドと殴り合いながら遊んでみてください。あるいは実況動画などを一度ご覧ください。神ゲーです。本作よりこっち買ったほうがいいぞ!

 3.6. 共通点を挙げる

 協力型タスク管理ゲームの共通点を4点挙げます。

  • 複数人プレイに重きを置いている

  • 制限時間がある

  • タスクを複数回こなすことでクリア条件を満たす

  • 大タスクの達成には、複数の小タスクの達成が必要

 以下、これらについて順に見ていきます。

3.6.1. 複数人プレイに重きを置いている

 これらのゲームは1人で遊んでも面白いのですが、複数人で遊んだ際にその真価を発揮します。1人で行うタスク管理は自分自身の脳内だけで完結しますが、複数人で行うタスク管理はコミュニケーションが必須となり、難易度と面白さが爆発的に上昇します。ゲーム自体の面白さにコミュニケーションの面白さが掛け算されるイメージでしょうか。

3.6.2. 制限時間がある

 マイクラや牧場物語などもタスク管理的な要素(または資源管理的な要素)があったりしますが、これらは(概ね)時間に追われず腰を据えて遊ぶ作品であり、ここでは自作ゲームとは異なるジャンルとみなします。制限時間があることで、より効率よく動かなきゃという心理が働き、切迫詰まった状況でぎゃーぎゃー騒ぎながらのプレイになるわけです。高速な作業の効率化にゲームの面白みを置いている以上、制限時間は重要な要素です。

3.6.3. タスクを複数回こなすことでクリア条件を満たす

 Overcooked!であれば、たくさん料理を作ることで規定のスコアを獲得するのがクリア条件ですし、サーモンランであれば、アイテムをノルマ以上に回収するのがクリア条件です。
 ゲームのクリア条件を達成するための作業(料理を作る、アイテム回収、…)を、本記事では「大タスク」と呼ぶことにします。

3.6.4. 大タスクの達成には、複数の小タスクの達成が必要

 Overcooked!であれば、ある料理を作る(=大タスクを達成する)ためには、肉を切る、焼く、キャベツを切る、皿を用意するなどの、複数の細かな作業が必要になります。本記事では、これらを「小タスク」と呼ぶことにします。
 複数人で役割分担を行うジャンルである以上、この手の要素はどのゲームにも存在します。

各ゲームの大タスクと小タスク

 4つの共通点を図にまとめました。これが協力型タスク管理ゲームの基本的なシステムになります。

協力型タスク管理ゲームの基本的なシステム



4. 同ジャンルのゲームが面白い理由を言語化する


 ここから更なる深掘りを行っていきます。本記事のメインコンテンツです。
 上で紹介した協力型タスク管理ゲームについて、これらがなぜ面白いのかをきちんと考えてみたいと思います。これをもとに、自作ゲームがなぜ面白くないのかを明らかにしていきます(もっとも本記事は過去に書いた資料をまとめたものなので、現行版では解決済みの内容も結構あるのですが)。
 ゲーム制作ド素人なりに、うんうん唸ったりゲームシステムを弄り回したりしてみたのですが、結論から言いますと、次に挙げる7つの要素が、協力型タスク管理ゲームの面白さ、すなわち「作業分担と効率化の妙」を生み出しているという考えに至りました。

協力型タスク管理ゲームの面白さを生み出す7大要素

  • 小タスクが並列接続になっている

  • 小タスクが直列接続になっている

  • 複数のタスクに利用可能な小タスクがある

  • 短めの時限イベントがある

  • 手放し運転可能な小タスクがある

  • 複数人で役割分担する際、どのプレイヤーも思考コストが高い

  • 複数のプレイヤーに非対称のタスクを課している

 以下、これらについて順に見ていきます。
 こっからめちゃ長いよ!

 4.1. 小タスクが並列接続になっている

 各小タスクが独立して同時に作業可能である形態を、ここでは並列接続と表現することにします。

小タスクの並列接続

 一方、ある小タスクを達成しないと次の小タスクが行えない形態を、ここでは直列接続と表現することにします。

小タスクの直列接続

 ここでここではまず、小タスクが並列接続になっている場合のプレイ感がどのようなものか、考えてみます。
 たとえば、Overcooked!のうちハンバーガーを作る大タスクの場合、小タスクは下図のように並列接続になっています。

小タスクの並列接続の例

 Overcooked!に限らず協力型タスク管理ゲームでは、プレイヤー達に役割分担を促すために、意図的に「小タスクを実行可能な施設」をあちこちに分散させることがよくあります。具材置き場、まな板、ガスコンロがそれぞれ離れた場所に設置されていたりなどです。
 結果、各プレイヤーはあちこちに散らばり、それぞれ異なる小タスクを担当することになります。俺は肉焼くから野菜切るのは任せるぞ!みたいな。

あちこちで小タスクを同時進行するプレイヤー

 プレイ感はこんな感じでしょうか。「このステージの小タスクA,Bは俺、C,D,Eはお前担当な!うーんでも実際やってみると手が空きがちになるな、適宜Cも手伝ってやるぜ!あっすまんAに失敗した、一瞬だけBのフォロー入ってくれ!うおお時間ねええ!!!」…みたいな。
 まあなんとなく、協力ゲームである以上、小タスクは並列接続になっているのが望ましい気がしてきますね。

 今度は、小タスクが直列接続になっている場合のプレイ感を考えてみましょう。
 題材は、自作ゲームのプロトタイプver.3.0(2021年版)です。このバージョンの小タスクには並列接続が存在せず、直列接続のみで構成されていました。ゲームシステムをざっくり言いますと、出会ったばかりのモブ同士を会話やデートなど、段階を踏んで結婚まで導くことで、スコアが獲得できます。

直列接続のみで構成された小タスク

 このバージョンをプレイしたところ、1人で遊ぶ分にはそこそこ楽しめたのですが、複数人で遊んでみると、なんとまあ見事に面白くない。「作業分担と効率化の妙」が味わえる気がしませんでした。

モブを各施設に順に導いて結婚を目指すゲーム

 なぜ面白くないと感じたのかを考えてみます。プレイした感じでは、プレイヤー間の役割分担がうまいことハマっていない印象がありました。役割分担を楽しむゲームである以上、この辺は深掘りしてみたほうが良さそうです。
 まず、役割分担は大きく分けて2通りのパターンが考えられます。
・大タスクごとに役割分担する
・小タスクごとに役割分担する
 それぞれの場合について見ていきましょう。

・大タスクごとに役割分担する場合

 大タスクごとに役割分担すると作業効率が良くなるように設計したステージを用意しました。要は、プレイヤー1がモブA,Bの組を結婚まで導き、プレイヤー2がモブC,Dの組を結婚まで導く、といった役割分担です。

大タスクごとに役割分担する場合

 これを実際にプレイしてみたところ、プレイヤー同士の役割分担やコミュニケーションが何も発生せず、ただ黙々と自分の仕事をこなすだけになってしまいました。自分が担当するモブたちを各施設に連れ回すだけなので、他のプレイヤーの手助けをする必要がないのです。要は、大タスクごとの関連性がない。マイクラで言うと、みんなで一軒の家を作るのではなく、各プレイヤーが個別に一軒ずつ家を作るようなイメージ。これではとても協力ゲームとは言えません。

・小タスクごとに役割分担する場合

 今度は、小タスクごとに役割分担すると作業効率が良くなるように設計したステージを用意しました。 モブA,Bの組について、プレイヤー1がヒアリングと会話を担当し、プレイヤー2がデートとプレゼント購入を担当し…といった形です。

小タスクごとに役割分担する場合

 実際にプレイしてみたところ、単純で単調な流れ作業と化してしまいました。自分はただモブのヒアリングをして会話させて次の作業者に渡すだけ。次の作業者はデートさせて更に次の作業者に渡すだけ。黙々と流れ作業をこなすだけで、頭を使わないし会話も発生しませんでした。
 試してはいませんが、たとえば小タスクを16種類くらいに増やして、4人のプレイヤーが小タスクを4つずつ受け持つようなゲームシステムに修正したとしても、恐らく結果は同じになる気がします。
 どうやら、直列接続のみでは「作業分担と効率化の妙」は発生しなさそうです。

 結論。協力型タスク管理ゲームに、小タスクの並列接続は必要であると言えます。

 4.2. 小タスクが直列接続になっている

 ということは、小タスクは並列接続になってさえいればよい、直列接続は必要ない…と考えてよいのでしょうか? ちょっと掘り下げてみましょう。
 今度は逆に、直列接続部分がなく、並列接続のみで小タスクが構成されている場合を考えてみます。

直列接続がない、並列接続のみの小タスク

 自作ゲームのプロトタイプver.4.0(2022年版)は、前述のバージョンとは逆に直列接続が存在せず、並列接続である(それぞれの枝が短時間で片付いてしまう)小タスクをいくつかこなすだけで大タスクが成立するようになっていました。これを実際にプレイしたところ、タスク管理ゲームとしてまったく面白くありませんでした。
 理由を考察した結果、各プレイヤーが未達成の小タスクを都度見つけてはこなすだけで、連携も分担も何もないためということが分かりました。各々が独立して作業可能→プレイヤー間の声掛けも不要→黙々と作業するだけ→面白くない、という前回と同じオチです。

手隙のプレイヤーが、ただただ未達成の小タスクを見つけてはこなすだけのゲーム

 ところが、ここに直列接続な小タスクを一部追加したところ、タスク管理は一気に複雑化し、戦略の幅は大きく広がりました。

直列接続の小タスクを追加した例

 直列接続部分をずっと一人で担当するでもいいし、手隙のプレイヤーが適宜引継ぎするでもいい。複数の大タスクを同時進行させる場合は、更に高度な連携が必要になる。「小タスクを行う順番」および「他の作業の待ち時間」という要素が加わったことにより、プレイヤー間の声掛けも必要になり、ゲームがより面白くなる結果となりました。どうやら、直列接続は必要であると考えて良さそうです。

 結論。小タスクは、並列接続も直列接続もどちらも必要であると言えます(ただ、少しくらいは短い枝があってもいいかも)。

並列接続も直列接続も必要!

 4.3. 複数のタスクに利用可能な小タスクがある

 Overcooked!では、たとえば肉を焼くという小タスクは、複数の大タスク(料理)に利用することができます。トマトバーガーにもプレーンバーガーにも、どちらの大タスクにも肉が必要になったりとか。

複数の大タスクに利用できる小タスク

 前述の通り、プレイヤーの役割分担は、
①大タスクごとに役割分担する
②小タスクごとに役割分担する
 この2通りに大別できますが、1小タスクの使い道が多い場合、①の場合であっても②の場合であっても、プレイヤー間のコミュニケーションが発生しやすいように思います。

 たとえば、① プレイヤーの役割を1大タスク(料理)ごとに分担する場合、肉の作成スピードがプレイヤーによって差が生じた場合などに「そっちの肉1個くれ!手が回らん!代わりに皿はやっとく!」となりそうだし…

1プレイヤーが1大タスクごとに分担する図

 ②プレイヤーの役割を小タスクの種類(肉切りや野菜切りなど)ごとに分担する場合、「肉は当面の大タスクで使うから多めに作っておいてくれ!」「うおォい肉作りすぎだ皿足んねえぞ洗え!」となりそうです。

1プレイヤーが小タスクごとに分担する図

 1小タスクの択の多さゆえに、プレイヤー間・大タスク間の連携が生まれるし、会話も生まれる。ステージの作りによっては難易度が爆上がりしそうです。

 一方、自作ゲームのプロトタイプver.4.0(2022年版)では、大タスク(=カップル成立)に必要な小タスクは、「テーブルにカップルを連れてくる」「テーブルに飲み物を運ぶ」などの、ある特定のカップル(達成したい特定の大タスク)のためだけに行う作業ばかりでした。
 するとどうなるか。大タスク間の連携がない以上、1プレイヤーが1大タスクを黙々と面倒見るのが一番楽で簡単で効率的なゲームになってしまったのです。

1プレイヤーが1大タスクを黙々と面倒見るだけのゲーム

 交わす言葉といえば「ワイは大タスク1を担当するやで」「おk じゃあワイは大タスク2で」くらいで、後は黙々とお互いの大タスクをこなすだけです。他には精々「お手すきの際に向こうのテーブル片付けよろ」「うい」程度。例によって個々に1軒ずつ家を建てるマイクラになってしまったのです。
 つまり、大タスク間の連携がない→プレイヤー同士の会話が発生しない→面白くない、と言えます。
 結論。複数のタスクに利用可能な小タスクは必要であると言えます。

 ちなみにUnrailed!も、1小タスクが複数のタスクを達成し得る形になっています。
 たとえば「木や石を切り出して運ぶ」という小タスクは、「線路の素材にする」「爆薬の素材にする」「橋をかける」「列車の進行方向を確保する」といった複数のタスクに活用できます。

1小タスクが複数のタスクを達成し得る

 この選択肢が、いい具合にプレイヤー間の連携やコミュニケーションを生み出しています。「石を切ってきた!爆薬を作って遠方の山を切り崩すぞ!」「いや1個こっちにくれ!橋を作る!」「時間ないぞ!もう列車が近いし石は線路に使うべきだ!こっち最優先!」みたいな。
 やはり、小タスクごとの選択肢が多いほど、プレイヤー間のわちゃわちゃが発生し、面白さに繋がっていくように思います。

 4.4. 短めの時限イベントがある

 協力型タスク管理ゲームの共通点として、制限時間があることは前述の通りですが、ステージ自体の制限時間とは別に、短めの時限イベント(10秒くらい?)があると、非常にゲームが盛り上がります。

 Overcooked!では、肉を焼き終えた後も引き続きフライパンを放置すると(10秒くらい)、肉が黒焦げになってしまう&火事が発生する、という大きなペナルティが発生します(片付けに非常に時間がかかります)。

フライパンの放置は厳禁!

 これは良いシステムだと思います。多くの大タスクを素早くこなすためには、一度に多くの肉を焼きたい。しかし逆に火事が発生するリスクが高まる。常にリスクとリターンを天秤にかけて肉を焼く数を調節し、最効率を目指すわけです。タスク管理ゲームの本懐と言っても過言ではありません。
 ただただステージの制限時間(3〜5分とか)の間に淡々と作業し続けるよりも、よほど大きな刺激が得られます。短めの時限イベントは、ゲームの面白さをぐっと底上げしてくれると言えます。

 ちなみに自作ゲームのプロトタイプver.4.0(2022年版)では、意識して短めの時限イベントをいくつか入れてみたのですが(パーティが始まった後に何もしないと1分くらいでペナルティが発生する、氷は30秒くらいで溶けてなくなる、とか)、ゲーム性を向上させるにはいまいち物足りない感じです。ここはもう少しブラッシュアップする必要がありそうです。

 4.5. 手放し運転可能な小タスクがある

 小タスクは、手放し運転可能か否かの2通りに分類できます(ワンボタンで瞬時に達成可能なものを除き)。

 基本的に、手放し運転不可能な小タスクはある程度多いほうがよいと考えます。その理由は、1人で遊ぶ際にもタスク管理を楽しめるようにするためです。
 たとえば下図のように、まず生肉をフライパンにセットしておき、焼き終わるまでの空き時間を利用してキャベツを切ることで、より効率よく作業を進めることができます。

 もしこれが、肉焼き作業も手放し運転できない仕様だったとしたら、肉とキャベツ、どちらを先に処理しても作業時間が変わらないことになってしまいます。頭を使う必要がありません。効率を追求するのがタスク管理ゲームの面白さの根幹ですので、これはあまり望ましくありません。
 なお、自作ゲームのプロトタイプver.4.0(2022年版)では、小タスクの大半が手放し運転できないものでした。これを改善して、小タスクの大半を手放し運転可能にしたところ、特に1人プレイの面白さが大きく向上しました(小タスクを行う順番をきちんと考えるようになりました)。

 ※サーモンランでは、その場に留まる必要がある作業に「敵を倒す」がありますが、これはこれで、敵や手持ちの資産(インク)との駆け引きやアクション要素などを含むので、また話が変わってきそうです。また、サーモンランは原則3人以下では遊べないのでその辺の都合も。

 4.6. 複数人で役割分担する際、どのプレイヤーも思考コストが高い

 協力型タスク管理ゲームでは、下図のようにステージを柵などで区切り、意図的に役割分担させようとするステージがたびたび登場します。

意図的に役割分担させるステージ例

 自作ゲームのプロトタイプver.4.0(2022年版)で、2つのエリアに分かれて作業を行うステージを作ってみたのですが、上図におけるBの作業を行う側が、遊んでいてまったく面白くないという結果になりました。
 その理由は、Bの作業を行う側の思考コストが極端に少ないためでした。ただただドリンク作成テーブルの前でボタンを押し、シェフの前でボタンを押し、生成されたアイテムを運搬するだけ。頭を使う必要がないのです。

 この手のゲームの面白さの根源は「考えること=択に迷うこと」であるはずです。択が多く択に迷うのが楽しいし、判断が上手く決まればなお楽しい。とにかく、全てのプレイヤーに何かしらの形で頭を使わせたいところです。
 そんなわけで結論。小タスクを行うエリアをどのように分割しても、各プレイヤーの思考コストが高くなるように設計する必要があると言えます。

 せっかくなので、小タスクに思考コストを盛る方法について考えてみます。ざっくり3通りが考えられます。
・作業前の択を増やす
・作業後の択を増やす
・作業中の択を増やす
 要は、選択肢が増える→頭を使うようになる→面白くなる、という考え方です。以下、順に見ていきます。

4.6.1. 作業前の択を増やす

 一案としては、作業場所によってリスクとリターンを変動させることです。
 たとえばUnrailed!では、木や石を削る小タスクについて、線路作成の資材を得るだけでなく、列車の進路を確保するという重要な目的があります。木や石がある場所には線路を引けないので、事前に排除することを考えなければいけません。そのため下図のように、木や石を削る場所を常に考えながらプレイする必要があります(これがUnrailed!の面白さに直結しています)。

「木を切る」という小タスクは、作業場所によってリスクとリターンが異なる

 このように、作業場所によってリスクとリターンが異なるような仕組みがあれば、思考コストが増やせそうです。

 もう一案としては、(割と思いつきで書きますが)小タスクが実施可能かどうかを他者依存にするとかどうでしょう。
 たとえば、ただただアイテムを箱から取り出して運搬するだけの(思考コストのない)作業があったとして、これを箱から取り出すのではなく、バケツリレーのように他のプレイヤーから受け取るように変更することで、択が増える=思考コストが増えるかもしれません(既に手元にあるアイテムを運搬するか、他プレイヤーにもっとくれよと催促するかの2択)。
 ちなみにOvercooked!では、意図的にバケツリレーを促すようなステージがよく見られます。たとえば下図のように、ステージをテーブル(アイテムを配置可能)で区切り、プレイヤーは行き来できずアイテムは行き来できるようにするなどです。

プレイヤーが上下に分かれて、テーブルを使ってアイテムを受け渡しするステージ

4.6.2. 作業後の択を増やす

 一案としては、(前述の内容そのままですが)1小タスクの使い道を複数用意することです(択が増える=思考コストが増える)。複数の注文に利用可能な「肉焼き作業」とか、線路作成にも橋建築にも進路確保にも使える「木を切る作業」とか。
 なおこの場合、生成数に限りがあるとか、生成に手間や時間がかかるとか、何かしらの制約を科したいところです。なぜなら、短時間でぽんぽん生成できてしまうと、資源管理も何もなしに淡々と大量に生成物を作り続ける&配り続けるだけの脳死プレイになってしまうためです。

4.6.3. 作業中の択を増やす

 Overcooked!の大きな特徴と言えるのは、皿やフライパンの存在です。これらは「タスク間の推移の手段を増やす」という特性を持っており、択が増える=ゲーム性アップに一役買っています。
 例として、肉を焼く工程(直列接続)を挙げます。

肉を焼く工程(直列接続)

 このうち、焼いた肉を皿に盛り付ける手段は2通りあります。

肉を皿に盛り付ける手段は2通りある

 「フライパンを皿に持っていく」場合、フライパンがコンロから離れる(後で元の場所に戻す手間が生じる)というデメリットはありますが、皿を動かしたくない場合は有効です。(他の食材も一緒に皿に載せたい場合、皿を現在位置のままにしておくほうがメリットが大きいなど)

フライパンを皿に持っていく場合

 「皿を持ってフライパンの肉を迎えに行く」場合、皿を動かす際に前述のようなデメリットが生じる場合がありますが、フライパンをコンロから動かしたくない場合には有効です。(フライパンは床に放置できず、コンロまたはテーブルにしか置くことができません。そのため、手近にテーブルがない場合などは、フライパンを現在位置のままにしておくほうがメリットが大きいことがあります)
 ※ちなみに、焼いた肉は手掴みで運ぶことができないので、必ず皿かフライパンに載せて運ぶことになります。

皿を持ってフライパンの肉を迎えに行く場合

 状況によってどちらが作業効率がよいか変わってきます。そこには選択の余地があり、思考コストが増えます。面白さが増す非常に良いシステムだと思います。

皿を運ぶかフライパンを運ぶか悩む例

 上図は、皿を運ぶかフライパンを運ぶかで作業効率が変わる例です。(ベルトコンベアはプレイヤーは乗れず、アイテムのみ載せることが可能です)
・皿を右側に運び、フライパンから玉ねぎを回収し、皿を左側に戻す
・玉ねぎ入りフライパンを左側に運び、玉ねぎを皿で受け取り、フライパンを右側に戻す
 どちらが楽でしょうか? このステージの制限時間はたった4分なので、両方試してスコアを比べるのが良いと思います。結構差があった気がします。

 4.7. 複数のプレイヤーに非対称のタスクを課している

 本題の前に、長い長い前置きから入ります。
 面白さのキモは効率を極めることだと何度かお話ししてきましたが、そもそも「効率を極める」とは具体的にどういうことでしょうか。今更ながら掘り下げてみたいと思います。

 たとえばプレイヤーが2人として、キャラ性能が同等であり、各々のゲームの理解度や技量も同程度と仮定します。結論から言いますと、このとき「効率を極める」とは、「プレイヤー1,2の作業量を1:1の割合にする」と言い換えられると考えています。
 どういうことか、以下だらだらと説明します。

 上図は、あるステージでプレイヤー1,2が行った作業を表したものです。プレイヤー2に手持ち無沙汰な時間帯が発生しています。プレイヤー1,2の作業量の比は5:2。かなりの差があります。もちろん意図的にサボっているわけではなく、協力型タスク管理ゲームではよくある現象です。直列接続の小タスクを2人で分担する際、相手の作業が終わるのを待つことによってうっかり発生してしまうのです。たとえば、肉を切る作業と焼く作業を2人で分担するとして、切る作業が終わらないと、焼く担当が待ちぼうけになってしまうとか。
 もちろん、これだと作業効率がいいとは言えません。そこでプレイヤーたちは、作業の順番などを見直し、場合によっては相方に作業を一部委託するなどして、もう一度同じステージに挑戦しました。すると…

 今度は作業量の比が5:4となり、前回よりも待ちぼうけ時間を減らすことができました。
 かくして、試行錯誤による作業効率化が、スコアアップという目に見える成果に結びつきました。プレイヤーたちは相応の達成感を覚えたはずです。
 この作業効率化のための試行錯誤とスコアアップによるカタルシスが、効率を極める面白さの正体だと考えています。

 どうやらゲームを面白くするには、ユーザーに試行錯誤させる(カタルシスを感じさせる)必要がありそうです。では、そのためには一体どうすればいいのか? ちょっと考えてみましょう。

 たとえば、下図は自作ゲームのとあるステージです。さあ2組に分かれて作業してくださいと言わんばかりの形状をしています。

さあ2組に分かれて作業してくださいと言わんばかりのステージ

 それぞれのエリアに小タスク実行用の施設があります。仮に、2人のプレイヤーが上下に分かれ、素直に自分のエリアにある小タスクのみをこなしたとします(お互いの作業を手伝うことなく)。結果、2人のプレイヤーの作業量が1:1になったとします。ほぼ最効率で作業を終えることができたとします。スコアもこれ以上伸びそうにない手応えを感じたとします。
 さてこのステージ、果たして遊んでいて面白いと感じるでしょうか?
 まあ、そんなに面白くはないでしょう。
 なぜなら、頭を使って試行錯誤していないからです。目の前にある仕事をただこなしただけで最効率に到達してしまったからです。そこにカタルシスは発生しづらいでしょう。

 では、このステージを面白くするにはどうすればよいか?
 一案としては次の通りです。左右で分担するステージであれば、それぞれの作業場で実行可能な作業量の割合を、わざと4:6や3:7にする(わざと作業量が非対称になるように仕向ける)。つまり、作業効率を悪化させるための罠を仕掛けるのです。

作業量が左側に偏りそうなステージ

 上図は、罠が仕掛けられたステージ例です。作業場が左右に分かれており、いかにも2人のプレイヤーが左右で分担するような構成になっています。しかし、小タスクを行うための施設(包丁、具材置き場、皿洗い場、…)が左側の作業場に偏っているのが分かるかと思います。
 ということは、もし仮に2人のプレイヤーが、何も考えず左右に居座って作業し続けたとしたら、作業量に偏りが生じてしまいます(右側担当のプレイヤーに待ちぼうけ時間が発生します)。そのため、このステージにおいて効率を求めるなら、右側担当のプレイヤーは、状況に応じて左側の作業を手伝う必要があることを閃かなければいけません。
 非対称なステージ構成において、いかに2人の作業量を1:1に近づけるか。これを試行錯誤しながら追い求めることこそが、面白さであると考えます。

 ちなみに、上図の例はタスクの偏りがぱっと見で分かりやすかったと思いますが、難易度が上がれば、下図のように罠がなかなか見抜けないステージも出てきます。

 タスクの偏りが分かりづらいステージ

 このステージ、実際に遊んでみると結構作業量に偏りがあるのが分かります(一方に待ちぼうけ時間が発生してしまう)。ここは確かステージ開始時に鍋とフライパンを1個か2個入れ替えるのが最適解だったかな…? こういうのは試行錯誤のし甲斐があって楽しいですね。

 というわけで。前置きはこの辺にして、今回の本題「ユーザーに非対称のタスクを課している」に入ります。ここからの話は短いです。
 前置き部分でほぼ話し終わってしまいましたが、要はプレイヤーに試行錯誤を促すため、意図的に偏りのあるタスクを目の前に見せたほうがよい、という考えです。
 その手段は、とりあえず2通り考えられます。

4.7.1. 小タスクを行う場所を意図的に偏らせる

 これは上で述べた通りになります。

4.7.2. 大タスクごとに、小タスクの数や種類をばらつかせる

 協力型タスク管理ゲームの共通点に「大タスクを複数回こなしてクリア条件を満たす」があることは前述の通りです。ではもし、あるステージ内で複数回こなすべき大タスクの内容がすべて同じだとしたら? その場合、ゲームが単調なものになってしまいます。前述の罠を仕掛けたところで、一度攻略したら後は同じ作業の繰り返しとなってしまえば効果は薄いでしょう。
 そのため、大タスクごとに、小タスクの内容が微妙に異なるのが望ましいです。

 Overcooked!では、上図のように大タスクの内容が微妙に異なるステージがほとんどです。肉だけバーガーもあれば、キャベツ&トマト入りバーガーもある。そのため、キャベツを切る時間帯が不定期に発生するし、そうでない時間帯は共通の小タスクである肉をできるだけ量産しておきたい。絶えず作業量の割合が変化する中、状況に合わせた戦略を考える必要が出てきます。
 このように、ゲームの単調化を防ぐとともに、状況に応じた試行錯誤を促すことができます。

 もうひとつ付け加えると、逆に、大タスク間で共通の小タスクはある程度あったほうがいいように思います。たとえば、パンと肉が常に含まれているハンバーガー系の大タスクなどです。また、皿を運んだり配膳したり汚れた皿を洗ったり、みたいな細々した作業も共通の小タスクになります。

共通の小タスク

 その理由は、たとえば全ての大タスクの全ての小タスクの内容がランダムで決まってしまうと、場当たり的に行動するだけのゲームになってしまうためです。その一方で、パンと肉のような固定の小タスクがあれば、「パンはあらかじめ5個取り出してあっちに置いておこう!」「肉は時間がかかるけど量産しておこう! フライパンで焼いてる最中に他の食材を切ればいいや!」のように、長い目で見た戦略を立てやすくなるため、ゲームとして面白くなると考えます。


5. 自作ゲームが面白くない理由を言語化する


 以上が、過去1年半の間に作成した資料をまとめた内容でした。ここからお話は現在に戻ります。

 何度か述べてきましたが、過去1年半、面白さを研究するついでに自作ゲームの改良も同時に進めてきました。が、まだまだ面白いと断言できる状態ではなく、今後も更に改善を重ねていく予定です。
 というわけでここでは、前項で研究した「同ジャンルのゲームが面白い理由」をもとに、現行の自作ゲームが面白くない理由を雑にまとめてみます(そろそろ書くの疲れてきたぞ!)。

 5.1. 直列接続部分が短い(4.2.参照)

 過去の研究をもとに、小タスクを直列接続&並列接続の構成にしてみたものの、まだ直列接続が短い気がしています。もう少し植木鉢→果物→ジューサーの流れをなんとかしたいです。まだ複数人でタスク管理を楽しめる領域に至っていない感じがあります。

 5.2. 短めの時限イベントが足りない(4.4.参照)

 前述の通り、短めの時限イベント(パーティの時間制限、氷アイテムの時間制限)がいまいち面白味を感じないので、もう少しブラッシュアップしたいところです。やっぱOvercooked!のフライパンが焦げて火事になるシステムはよくできてるなあと思います。あんな感じのスパイスを入れてゲームにぐっと緊張感を盛り込みたいです。

 5.3. 思考コストが足りない(4.6.参照)

 本作では、ステージの作業場を2つに分けるとき、タスクを「モブをテーブルに案内する作業」「ドリンクを作る作業」に分割するケースが多いです。しかし、どちら側の作業もまだ思考コストが足りないと感じています。プレイヤーにより頭を使わせるように改良したいところです(またしてもゲームシステムをごっそり作り直すべきか…)。

 5.4. 共通の小タスクを増やしたい(4.7.2参照)

 大タスクのうち、ある程度は共通の小タスクがあったほうがよいという話です。現状の自作ゲームについて、共通の小タスクとしては、グラスに氷や茶葉などを入れる・グラスの用意・グラスの片付け、などがあります。ただしこれらは、作業量的には軽めのおまけ程度の立ち位置であり、できればこれを、もう少しヘビーな作業量にしたいところです(前述のように、長い目で見た戦略を立てさせたいため)。


6. 終わりに


 以上、Overcooked!がいかに面白いかを語りまくる記事をお届けしました。
 お察しかとは思うのですが、ひとつ問題点をクリアするだけでとんでもなく時間がかかるんですよね。「小タスクが並列接続になっていない! しよう!」これが短期間で修正できるわけもなく。ゲームシステムを根底から作り変えないといけないわけで、平気で半年とかかかったりします。まあ育児も仕事もスプラもティアキンもあるので仕方ないね!

 というわけで終わりです。
 こんな長ったらしい需要もあるんだか無いんだかよく分からん文章を読んで頂き誠にありがとうございました。自作ゲームが神ゲーと化したらまたお会いしましょう。それでは!てか発売まで後何年かかるんだ!


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