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ユラユラ、燈

ポカンと空いた空洞。文字を書くのも一苦労で、伝えるってなんだろうとか。こちらを見つめる何かに訴える。君は誰?こんな夜に、出会ったこちらを見つめる小さな話し相手。
君は、とくに何でもないから適当に話して辻褄が合わなくなっても話が飛び飛びになってもとりあえず聞いてくれる。ふわっとして、もさっとして、それでいてゴテゴテして。撫でてみると意外と硬いんだな。こちらを見つめる瞳がゆらゆらと暗闇で蠢く。
こんばんは、と声をかける。今日はこちらを見ないんだな。なぜだか少しさみしくなり、コイツに愛着が湧き始めていた自分の感情に驚く。明日は鯖缶でも用意しようか、と考える。
君は今日鯖缶に溺れていた。そんなに深くは無いのだけれど。明日は月をバックにダンスでもしないか、と誘う。
けれど、君はここにもういなかった。ただ、ただ暗く重い夜が訪れただけだった。新月だ。

君は誰?

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