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小さな小屋の、小さな夢。

上富良野町に移住して来るずっと前、長女を出産したころから、小さなお店を作るという夢があった。

その想像のお店には、ハーブがたくさん売っている。心や身体が疲れてしまったときに、美味しいハーブティーや、紅茶、甘いミルクティーなどのお茶が飲める。ハーブや野菜を使った、ケーキやスコーン、ドーナッツなどの、ちょっと外国っぽいお菓子が売っている。お店の周りには、香り高いハーブがたくさん植わっている。手で少し触ってみると、フレッシュな香りを嗅ぐことが出来る。ハーブの開花期には、色とりどりの花がたくさん咲く。出来ればたくさん植えて、皆が好きに摘んだり出来るといい。ドライハーブしか見たことのない人達が、本物のハーブに出会える場所。私は小さな子供たちを育てながらも店番が出来て、自分も疲れたらお茶を飲んでお菓子を食べて、ゆっくりする。

そんな夢をぼんやりと見ながら、10年以上が経った今、そのお店を実現するために、小さな小屋を建てている。

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6年前に引っ越してきてすぐの頃、同じような、でももう少し大きなお店を建てようとしたことがある。その時は素敵な建築家さんにも相談したり、大工さんにも相談したり、内装はどうしよう、備品はどんなものがいいかな、など、楽しく計画を立てていた。

でも、結局、計画が進んだ段階で止めてしまった。出てきた見積もりが、ものすごく予算オーバーだったのも理由だけれど、計画が進むほど、色々な人が関わってくれるほど、そのお店が自分には大きすぎるような気持ちになってしまったのだった。

融資を使えば、もちろんお金の問題は何とかなったし、融資の相談も進んでいたのだけれど、なんだか自分の作りたいもののスピード感や大きさと、その時の周りが進むスピード感や大きさがすごく違うような気がして、息が出来なくなるような気持ちになってしまった。そして白紙になった計画はそのままになり、毎日の生活や子育てや農業の仕事でいっぱいで、6年間、お店のことはほとんど忘れていた。

2020年の夏、ふとしたことから小屋を建てることになった。そもそもは休憩小屋として建てる予定だった。農作業に来てくれた人や、友人と過ごすための、濃いブルーの色の壁の、小さな小屋。

が、突然、これはお店にするべきなのだと思いついた。この小さな小屋のこじんまり感こそ、自分のやりたかったお店の大きさだったのだ。

夏の農作業が終わり、もうすぐ雪も降り始める頃、小屋作りは始まった。
無理のないように、嘘のないように、ひとつひとつに深呼吸するように、慎重にゆっくり考える時間があることがとてもありがたく、何か困ったことがあるときに相談できる友人たちがいることが嬉しい。その環境を作るために過ごしてきた時間たちが、自分たちにとって、とても価値のあるものだったのだと、今ならわかる。

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2020年は、とても大変な一年間だった。たくさんの悲しいニュースが流れて、なかなか直視出来なかったし、自分たちの仕事もたくさんの変化があり、ついていくだけで息も切れ切れだった。
そんな中でも、小さな夢が始まったことが、私を支えている。空想の中で咲いているハーブたちが、フレッシュな気持ちを運んできてくれる。

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2021年はどんな年になるかはわからないし、まだまだ雪に囲まれて過ごしているけれど、春になれば、植物たちは変わらず芽吹き始める。
私たちはそのお手伝いをして、誰かの役に立つように届けたい。

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2021年、夏頃にオープン予定。

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