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「温度帯」と「射程距離」のホットでチルな関係

いまわりとけっこう頻繁に考えているのが、食品の「温度帯」とロジスティクスの「射程距離」を踏まえた戦略についてです。

僕らがやっているスムージーという商材は、ブレンダーという機械と切っても切り離せない関係にあり、ブレンダーで作ってからすぐに飲んでもらうものを “BLEND-TO-ORDER” (いつでも作りたてを) の「本格」と言っています。

当然、商品の寿命は短いです。
作ったその瞬間から劣化が始まり、直後時点がベストの状態だったものが数分後には表面が溶けた状態になり、(着色料を使っていないので) 色が抜けてきたりします。
この “BLEND-TO-ORDER” 方式の場合は当然に、店舗に来られたお客様に召し上がっていただくことが大前提です。

飲食店の一次商圏は500m、二次商圏は1kmと言われていますから、マーケティングのターゲットとなるエリア範囲はここまで。
つまりこれがオープンした当初の FICO & POMUM JUICE (フィコ・アンド・ポムム ジュース) の「射程距離」でした。
(マスPRは除いた考え方です)

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そして2016年、UberEats によるデリバリーサービスが始まり、これを皮切りにして様々なデリバリーパートナーとの提携を拡大していきます。
「保冷」した状態で商品を運んでもらうことによって、「店舗を中心とした半径3km以内の方」に届けることができるようになりました。
(ホットスムージーなら「保温」で同じ距離)

店を中心としたマーケティングの対象エリアは、3km 圏内が範囲となります。
僕たちは、デリバリーサービスという手段によって射程距離が広がったことになります。
しかし、リアル店舗を中心としたビジネスの場合、恐らくこれが射程距離の限界です。僕たちの本格スムージーは、どんなに頑張っても半径3km圏内にしか届かないことになります。

では、これが例えば商材が「サラダ」だった場合。
「保冷」や「常温」で輸送しても 状態の劣化スピードは輸送時間よりは早くありません。
そう、サラダは商材的にスムージーより射程が長く輸送面で有利なのです。
ですので、サラダ屋さんは「サラダを医療機関に届けて医療事業者を支援する」などの施策が可能になります。
(僕がリスペクトする宮野社長が率いる「CRISP SALAD WORK」さんが緊急事態宣言下で行った医療事業者支援プロジェクトは当時ドギモを抜かれた施策でした)

スムージー屋の僕たちは、残念ながら医療機関に届ける施策は取れません (商材がサンドイッチならば可能になります)。

ただ、常温で運送ができると言っても、「店舗で作った」サンドイッチやサラダの射程範囲はせいぜい半径10kmほどが限界だと考えられます。
(そこから先は、商品自体もロジスティクスも見直しが必要です)

一方で、「製造許可のある工場」で作った商品は、さらに遠くまで射程範囲を伸ばすことができます。これがF&Pが3年前に描いた工場戦略です。
ポイントは、輸送時の「温度帯を変える」ことでゲームチェンジすることです。

食品表示などで使われる温度帯の呼称はだいたいこんなイメージです。

常温 / 室温: 15〜25 ℃   (Room Temperature)
冷暗 / 保冷: 15℃ 以下   (Cool / Cool and Dark Place)
冷蔵: 10℃ 以下   (Chilled / Refrigerated)
冷凍: -15℃ 以下   (Frozen)

そして僕たちが開発した商品は、「スムージーポーチ 」。
スムージーに、ブレンドした直後の状態で「急速冷凍」という魔法をかけ、包装と食品表示を施します。
これにより、できたての鮮度を保持しながら「冷凍状態で輸送」することによって、”BLEND-TO-ORDER" (いつでも作りたてを) のポリシーを守りつつ、北海道から沖縄まで本格スムージーを届けることができるようになりました。

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「ナマモノ」であるサンドイッチやサラダは、包装と食品表示を施して輸送しても、届け先に着いてからの消費期限が限られます。なおかつ、未調理の青果なので、冷凍することが困難です。
つまりここで、スムージーが射程距離を逆転しています。

スムージーポーチ の商品化によって、僕たちは格段に自分たちの本格スムージーを届けられるリーチ範囲を広めることができました。

コロナ禍の影響で、巣籠もり需要をねらったEC参入企業・D2Cブランドは増えました。加えて、近年の冷凍技術の向上は目覚ましく、あらゆる食品が高品質で冷凍され、家庭に届く時代が到来しています。
「可処分所得の奪い合い」ならぬ「可処分冷凍庫スペースの奪い合い」はすでに始まっています。

スムージーポーチ は今、「ギフト」商品として設計されています。
スムージーを買うことはたいていは「自分のため」・・・
でもこのスムージーポーチギフトを買うことは「他の誰かのため」・・・
「スムージーに使うお金の価値や意味」がこれまでとは違います。
それは、「伝えてもらう」ことでリーチ範囲を伸ばす考え方です。

果物や野菜は、母なる自然からの『贈りもの』。
あなたの大切な人への『健康を願う気持ち』を形にして、あなたの代わりにお贈りします。

そんなメッセージを乗せて、FICO & POMUM の世界観を、さらに「今まで自分たちだけではリーチできなかった方たち」にまで拡げていきたい。
新しい商品とともに、物理的な距離を超えた精神的な射程範囲の可能性に挑戦していきたいと思います。

(この記事は、2020年10月にF&Pジャパン社内向けに発信された内容をもとに編集を加えています)


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