森のケーキ屋さん

海の近くのまちでパティシエのしゅぎょうをしてきたネコがいました。
 ネコはやっとひとりだちして、東の森のひろばにじぶんの店をだすことができました。
「さぁて、みんながあっとおどろくようなすごいケーキを作ってみせるぞ」 
 ネコは、はりきって新作のケーキをつくりました。
 サンマのケーキにサバケーキ、イワシケーキ・・・・・・ネコはじぶんのすきなざいりょうでたくさんケーキを作りました。
 ところがお客さんはさっぱりきません。なんでなんだろう?
 ネコはしょんぼりしてしまいました。
「たまにはふつうのケーキでも作ってみるか」
 ネコは海の近くのまちでいつも作っていたチーズケーキを作ってみました。
「おや、なんだかいい匂いがするぞ」 
 ドアの外から大きなこえがしたのでドアをあけてみると、そこにはネコが見あげるほどの大きなクマがたっていました。
 クマはドアをくぐるように中にはいると、
「このいい匂いはなんだい?」
とネコにききました。
「ふつうのチーズケーキですけど・・・・・・」
「それを食べさせてくれるかい?」
「は、はい、よろこんで」
 ネコははじめてのお客さんによろこびました。
「どうですかお味は?」
 ネコがおそるおそるきくと、
「このなめらかなしたざわり、ほどよいさんみ、くちどけのすばらしさ・・・・・・どれをとってもさいこうだ。こんなにおいしいチーズケーキは食べたことがない」
 クマはおおよろこびでした。
 その日からクマは毎日、お店にやってきてはチーズケーキばかり五十個は食べていきました。
「ぼくはチーズケーキにめがなくてね」
「そうなんですか、たくさん食べていってくださいね」
「ほかにもケーキはあるの?」
 ネコはその言葉にまってましたと、はりきってこたえました。
「ありますとも、ありますとも、新作のサンマケーキにサバケーキ、イワシケーキもありますよ」
「サンマケーキ? サバケーキ? イワシケーキ?」
 ネコのメニューを聞いた、クマの表情がかわりギョロッとした目つきでネコをにらみました。
 その目つきにネコは全身からひやあせをかいてしまいました。
「やだなー、お客さんじょうだんですよ。じょうだん。おかわりすぐにおもちしますね」 ネコはせっかくの自信作だっただけに、がっかりしてしまいました。
 するとあるひお店のそとがにぎやかだなとおもってドアをあけてみると、
「クマさんからきいてきたんだけど、ここのチーズケーキがすっごくおいしいんだって?」
 なんとリスのだんたいきゃくが十匹もきました。
 こんなにお客さんがくるのは、はじめてでした。
「こんにちは、クマさんからきいてきたんだけど・・・・・・」
 こんどはウサギのだんたいきゃくが二十匹もきました。
 小さなお店のなかには、はいりきれなくなってきたので、そとのひろばで食べてもらうことにしました。
「クマさんから・・・・・・」
 このつぎはサルのだんたいきゃくが三十匹もやってきました。
 お店のまわりはいつのまにか、クマさんのうわさをききつけた森中のどうぶつたちであふれていました。
「クマさんのいうとうりだ、とってもおいしい」
「あー、まいにちでもたべたいよ」
「おかわり、おかわり」
 ネコの作るチーズケーキをほめることばがあちらこちらから、きこえてきました。
 ネコはたくさんのお客さんにてんてこまいでしたが、とってもうれしそうでした。
 それからというものうわさがうわさをよんで、ネコのケーキ屋さんは大はんじょうしましたとさ。

               (おわり)