
研究者の授業用ツール活用法:私の場合
「授業をもっとうまくやるにはどうすればいいか」というのは、教える側にたった経験のある人間ならだれもが行き当たる悩みなのではないか、と思います。
筆者の場合ですと、以前は「プリントを配布」し、「パワーポイントで要点をスクリーンに映し、それを解説する」という、よくあるスタイルの講義をやっていました(今も基本は変わっていません)。さらにむかしは、チョークで要点を板書していました。
しかし、近年では、もうちょっと授業を面白くできないか、大教室の授業であっても、学生が単に話を聞く・ノートを取る以上に能動的に参加する機会を付与できないか、と考えています。
「知識を伝えること」が授業の最大の目標なのだから、どういった形であれ、それができればそれでよしという考え方もありますが、今はせっかく授業を効果的に行うためのツールがいろいろと開発されているので、これを活用しない手はないと思い、積極的に導入を進めています。
Google Classroomの活用と授業の双方向化
大人数教室・少人数教室を問わず、筆者の授業ではGoogle Classroomを利用するようにしています(すでに全世界でおびただしい数の授業で取り入れられていますので、いまや別に真新しくもないのですが)。
授業ごとにGoogle Classroomのコーナーを設置し、登録に必要なクラスコードを教室で学生に周知しています。毎週の授業内容にあわせて、講義を聞いていれば答えられる簡単な質問(いわゆるポップ・クイズ)をClassroomで課し、期限までに解答を入力してもらうようにしています。
むかしは紙の「レスポンスカード」に手書きで解答する方式をとっていましたが、紛失の恐れなどもないではないので保管に大変気を使いました。Classroom導入後はその心配もなくなり、ペーパーレス化も進み、「地球に優しい授業」ができるようになったかもしれません。
大教室の場合、授業のどこかでクイズが出されるかも、答えれば点数がもらえるかも、となると、より真剣に話を聞いてくれる学生の数が増えたような気がします。それによって、学生の理解度も上がるのではないかと期待しています。
Classroomはゼミでも活用しています。原書講読のゼミや初年度ゼミなどで、読んだ箇所の感想、ゼミ内の討論で印象に残った点、授業では言えなかった付加的論点などを提出させるようにしています(当然、ゼミでのディスカッションや課題を真面目にやってきていないと解答できません)。
Slack/Dropbox/Google Drive活用によるゼミ内コミュニケーション・資料共有の効率化
西川ゼミは、歴代のゼミ生の卒論、代々継承すべき配布資料、報告資料などをDropboxでゼミ生全員で共有するようにしています。
うちのゼミは2016年度・2017年度・2018年度と立て続けに津田塾大学の卒論賞(石坂泰三賞)受賞者を輩出していますが、それら先輩が書いた優れた卒論を共有して後代の学生に読んでもらい、先行研究との差異や実証性、論文の良い点・悪い点などを議論させるようにしています。
私は研究で先にDropBox&Slackを使っていたので、それをそのままゼミにも流用しましたが、Google Classroomを活用することを考えると、DropboxよりもGoogle Driveと連携を図るほうが何かと便利だと思います。このあたりは各自の判断に委ねます。
クリッカーなどのゲーミフィケーション・ツールの利用による授業の活性化
教室にいる学生にクリッカーを利用したアンケートに回答させるなど、授業にゲーム的要素を取り入れる(ゲーミフィケーション)というのも、授業の学生を惹きつける有効な方法でしょう。いまはクリッカーそのものを購入しなくても、スマホをクリッカー化して使えるアプリ(responなど)を導入している授業も増えているようです。
これは「飽きさせない」ための工夫としては有用だと思います。授業を90分実施すると、集中力が切れる学生が出てくることもありますので、そういったタイミングでクリッカーによるアンケート回答を導入すると、とても効果的かもしれません。
ただ、筆者は大教室の授業は基礎知識の伝授に重きを置くべきで、双方向型の「アクティブラーニング」は、できればゼミなどの少人数授業でやるべきと考えています。大教室授業(基礎知識を伝授)・小教室授業(学生の議論や報告に重きを置く)を区分するラインはそのあたりにあると思っていますので、クリッカーによるゲーミフィケーションなどは、あくまで授業を盛り上げるための補助ツールといった形で利用するのが望ましいのでは、と考えています。
授業の形態というのも時代とともに変わっていくものだと思います。教える側も必要なツールを柔軟に吸収しつつ、より効果的な形で知識を伝達していけるようになると、いっそう素晴らしいのではないでしょうか。私自身、上記に限らず教育効果の高そうなツールは積極的に取り入れていくことを心がけています。他にもオススメがあったら、ぜひともご教示ください。
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