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文系研究者の研究ツール活用法:私の場合

はじめに

研究を進めるとき、大きな問題になるのが書籍や論文の入手や管理の仕方です。このノートでは、主に筆者が最近実践している論文の入手・管理方法について書いていこうと思います。

これを書こうと思ったきっかけは、学生さんから「論文などを効率的に探したり読んだり管理したりする方法はないですか?」という質問をよく受けるからです。今後、同じような質問が出たときにいちいち同じ回答をする代わりに、このノートをまとめておこうと思い立ったわけです。

このノートが同業者の方々や学生のみなさんの手助けになれば、嬉しい限りです。

論文をチェックする(Journal Alert/Researcher Appの活用)

私が大学院に入学した1990年代の終わり頃、論文は図書館の棚に最新号が配架されるのを待って、コピー機で複写していました。いまはインターネットが発達しているので、製本版を待たずにオンラインで手早く論文を読むことができます。

新しい論文が受理されると、いまはOnline FirstとかEarly Viewの形でオンライン先行で論文が公開され、読めるようになります。なので、オンラインで出た論文は配信5分後に世界の誰かが読み終わっている可能性があります。同じ論文を読んで同じ着想を得るとしたら、早い方が有利なのは言うまでもないです(以下の写真は政治学分野のトップ・ジャーナル、American Political Science ReviewのOnline First画面です。オンラインで出たばかりの論文が並んでいます)。

Online Firstで公開・配信になった論文ををいち早くチェックするにはジャーナルのHPにアクセスしてアラート登録(新しい論文が出たらメールで送ってくれる仕組み)するか、以下のResearcher Appに登録して最新論文の情報をゲットします。アラートやResearcherで送られてきた最新論文で、abstractを読んで気になる論文があったら、ダウンロードするわけです。

ダウンロードした論文を読む/管理する(Dropbox/Liquidtextの活用)

ダウンロードした論文はクラウド・ストレージ(私の場合はDropbox)に格納しています。私の場合、これをLiquidtextというアプリと連携させておりまして、読みたい論文をLiquidtextに送り、applepencilで書き込み・抜き出しを行っています。

こんなイメージです(Liquidtext社のTwitterから画像をお借りしました。ありがとうございます)。こうやってメモを取ったり抜き出したりして、後に論文を書くときにそれらを情報として活用しています。

私はたまたまLiquidtext派で、個人的にはかなり使いやすいと感じています。おススメですが、GoodNotesや電子ペーパーなどを使っている人も多いですし、applepencil以外の電子ペンユーザーもよく見かけます。ですので、この辺は単純に各人の好みの問題だと思います。自分に合ったものを選択するのが最善と思います。

論文や書籍の引用・註/参考文献リスト作成(EndNoteやZoteroの活用)

論文執筆に必要な参考文献の収集、管理、参考文献リストの作成にはEndNoteを利用しています。便利です。ただ、これは有料で値段がけっこうするので、学部学生などには、無料のZOTEROの方を勧めています。

予算とか、使い勝手・用途・機能に合わせて選んでみると良いのではないでしょうか。

共同研究者と連絡を取る(Slack/Messengerなどの活用)

共同で論文を書いていると共著者の先生方と密に研究上の連絡を取る必要が出てきます。筆者は共著者とはSlackで連絡を取り合っており、読むべき最新の論文・学会情報の共有なんかもSlackでやっています。また、r-wakalang(Rに関する雑談を広く行うコミュニティ)とかkaggler-ja(データ分析者が作成したコードについて議論したりするプラットホーム・コミュニティ)などのコミュニティにも参加しています(眺めるだけですが)。

共同研究者や研究仲間とササっと一言ぐらい話したいときは、Messengerで済ませてしまうこともあります。ただし、論文共有やデータファイルの受け渡し作業、校正原稿へのコメントなどを相互にやるなら、やはりMessengerよりもSlackが格段に便利だと感じます。

PCとタブレットの使い分け(Duet Appの活用/サブ・モニターの導入)

筆者はPCの方にはWord/Excel/PowerPoint等のほか、R/R Studio、Python、TexWorksなどをインストールしています。分析や執筆作業は、主としてそれらをインストールしたラップトップPCでやっています(この記事もPCで書いています)。

あくまで筆者の場合ですが、「チェックする&読む作業」=タブレット、「書く&分析する作業」=PCという大まかな「棲み分け」ができているように思います。インプットはタブレット、アウトプットはPCという感じです。

マルチモニター・ディスプレイ環境だと研究の効率性が良いというような話を聞き、モバイル・モニターの購入を考えました。ただ、通勤時間が長く移動が多いことを考慮して(重量の観点から)、モバイル・モニターではなく、iPadをモニター化して使うことのできるDuetというアプリを導入しました。いまはiPadをサブ・モニター化してPCと連結して使っています。

Duetをインストールしたことによって、iPadはラップトップPCのサブ・モニターとしてだいたい問題なく使えています。便利なのですが、iPadをPCのサブ・モニターとして使う場合には、iPadの画面が12.9インチの方が目は疲れないかもしれません。

そのほか

筆者の場合はさらにiPadに、電子書籍を読むのためのKindle、PDFを読むためのAcrobat、ファイル解凍用のDocuments、紙の文書を撮影してPDF化するためのAdobe Scan、メモを取るためのPenultimate(Evernoteと同期可能。無料なので重宝していますが、iPadでしか使えません)などのアプリやソフトを導入・活用しています。

では、論文や本は全て電子媒体で読んでいるのかといわれると、そうでもなくて、単著(研究書や新書など)は今でもハードカバーかソフトカバーのものを購入し、鉛筆で線を引いて読んでいることが多いです。

各自の研究分野やスタイルによって、必要なガジェットやソフト、アプリは大きく異なると思いますが、分野を超えて、研究・論文執筆に役立つであろう基本的なツールを幅広く(?)ご紹介してみました。

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