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41. 小学生のころから本物の世界的絵画を見て育つのか

2019/1/8 Paris

パリに来て三日目。朝8時半ごろ目覚めて部屋を出ると、隣の部屋にまだサイードがいた。「あれ、今日は会社が休みなのかな」と思って身支度を整え朝ごはんの用意をしていると、サイードもキッチンに入ってきた。

「体調がものすごく悪いんだ」とサイード。詳しい症状はわからないのだけど、病気になったと話している。会社を休むのかと思っていたら、一旦自分の部屋へ戻ったあと、「じゃあ出かけるね」とカバンを持ってダイニングへ入ってきた。椅子に腰掛け革靴の靴紐を結んでいる。

それに驚いて「え、休まないの?」と尋ねた。日本だと体調が悪くても会社に行くのは普通のことかもしれない。でもヨーロッパでは、自分の身体を優先してみんな休みを取るのだと思ったのだ。

サイードは苦笑いをして、「もう遅刻してしまっているけどね。でも行かなくちゃ。昨日、ミスもしちゃったんだ」と話している。見るからに辛そうな表情。そうか、休めないのか。

お世話になっているサイードのマンションは、東京で借りると月30万円ぐらいはしそうなゴージャスなところだ。サイードはそれだけの給料をもらっているから住めているのだ。それはつまり、彼にのしかかっている仕事のプレッシャーもまた大きいということ。

ヨーロッパのひとは、もっと自分本位で気ままに会社を休むのかと思っていた。サイードがフランス人の代表というわけではないけど、それでも勝手に抱いていたイメージを振り払うことにした。

ともかくサイードを見送ったあとに、ぼくも外へ出かけた。目指すはエッフェル塔である。

その前にこれまで撮りためたフィルム写真を、現像しようと思った。昨日のうちに現像できるところを探して、料金や納期などを聞いておいたのだ。

お昼前に写真のラボへ到着。フィルムを渡して料金を改めて聞くと、日本に比べて多少高い程度だった。一週間ほどのゆったりとした納期ならもっと安くできるらしいが、そのころにぼくは次の都市へ移ってしまう。少しでも安くおさめたいけどしょうがない。

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