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64. 海外へ一人旅すると人は変わるのだろうか?

2019/1/30 Wed Narita-Kanazawa

成田に到着して、そのまま立ち止まらずに国内線の乗り換え口へ歩いた。成田から小松空港行きの飛行機まで6時間くらいあったけれど、もう搭乗口へ行ってしまいたかった。

間の悪いことに、この日中に出してしまわなければならない仕事もあった。ダブリンからの帰りの飛行機でやるつもりが、風邪で体調が悪くずっと寝て過ごしていたのだ。ラウンジの落ち着いた場所で片付けてしまおう。

当然ながら風邪もまったく良くならないし、帰国しても感慨にふける場合ではない。

手荷物検査のゲートには若い男女の検査員が暇そうにしていた。発着まで時間があるからか、ぼく以外に検査へ来ている人間はゼロ。

カメラバッグからヨーロッパで現像しきれなかった5本くらいの写真フィルムを取り出して、ハンドチェックをお願いした。

ヨーロッパの空港ではほぼハンドチェックを拒否された。ポルトガルのリスボンでは空港スタッフが集まってしまい、あわや問題に発展しそうになる始末。

空港の手荷物検査で良い思い出はないのだけど、日本のゲートでは「このカゴへ入れてください」とすんなりやってもらえる。拍子抜けするくらい優しい。

これはきっと、海外のテロ組織から標的にされた経験がないからだ。陸続きに国境線が引かれ他国からテロ攻撃を受ける環境であれば、ヨーロッパ並みに厳格になるはずだ。

「日本は平和ボケ」と揶揄する人がいるけれど、平和でなにが悪いと正直思う。写真フィルムのハンドチェックすらしてもらえない国と比べれば、日本の穏やかな優しさは素晴らしい。

搭乗口のロビーは閑散としていた。2、3人の日本人旅行者が長椅子に寝転んで仮眠を取っている。数台置かれたテレビからワイドショーが流れている。誰も見ていないのにテレビの付けっ放しがいかにも日本の風景。

なるべくテレビの音声が耳に入らないよう離れた場所でiPadを開く。pdfの資料に目を走らせて、アップルペンシルで赤字を入れていく。

人が少ないからか元からそうなのかわからないけど、ロビーは暖房がそれほど効いておらず寒かった。喉が痛くて寒気が止まらない。文字を目で追いながら「飛行機の出発時間はまだか」と時計ばかり見ていた。

夕方17時を過ぎて、ようやく飛行機に乗ることができた。セスナ機のような小さな機体。乗客は僕を入れて10人程度しかいなかった。成田〜小松間の人気のないことよ。

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