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合コンで僕は無実の罪に問われた


毎日note更新70日目。

先日、高校ラグビー部からの友人のめちゃくちゃ変な人、通称"変人"と電話で話した。

僕が東京に引っ越した事を含めお互いの近況を報告した。

僕は変人と話すといつも思い出す事がある。

14年前に開催された「変人主催合コン」の事だ。

あの日、僕は無実の罪に問われた。

身に覚えのない罪を無理矢理着せられたのである。

あんなに理不尽な事はない。

今思い出しても怒りで体が震える。

今日はシリアスな話になるかもしれないが、もしよかったら読んで頂きたい。



14年前。

大学4回生の春。

変人がいきなり恋に落ちた。

就活で大規模なセミナーに行った時、元バイト先で一緒だったYさんと偶然再会したのだ。

変人を見つけるなりYさんはダッシュで駆け寄ってきたらしい。

その様を見て変人はこう思った。


この子俺にハマっている。


変人は相手が自分の事を好きじゃないかと思った時「ハマっている」と表現する。

僕は変人以外でこの言い方をしている人に出会った事はない。

そして変人のハマっている判定は激甘である。

些細な事ですぐ相手が変人にハマっている事になってしまう。

この後2人でセミナーを回り、ちょっと休憩する事になったらしい。

2人でベンチに座りジュースを飲む。

その時ジュースが気管に入ったのかYさんがむせこんだ。

ゲホゲホと苦しそうなYさん。

しばらくして落ち着いたYさんはむせた照れからか変人の方を見てニヤ〜と笑ったらしい。

変人は思った。


この子やっぱり俺にハマっている。


根拠は全く分からない。

Yさんはむせて照れ笑いしただけである。

しかし変人はハマっていると判断し、そして変人自身もYさんにハマっていった。

連絡先を交換した変人はYさんを飲みに誘った。

2人じゃなく合コンとして。


理由は分からない。

合コンで謎にワンクッション挟むよりも直接誘った方が話は早かったはずである。

しかし変人の行動に理屈なんてない。

こうして「変人がYさんと付き合うための合コン」が開催される事となった。


合コンの構成は4対4。

男側のメンバーは変人、僕、

高校の時はイケメンだったがそれ以降はそれほどでもない通称"元イケメン"

サルにめっちゃ似てる通称"おさる"

この4人だった。

変人がYさんと付き合う事だけを目的としたチームが出来上がった。

しかしこのチームが合コンのエキスパートかというと全くそんなわけではない。

みんなそれぞれ厄介なクセがあった。


「元イケメン」はいつもどうでもいい話をやたら広げようとする。

サッと流れるような話にやたら食いつくのだ。

彼がいると自己紹介タイムが約1時間かかる。


「おさる」は相手が分からない身内の会話をバンバンしてくる。

こっち側しか伝わらない人物の名前をやたら出してくるのだ。

あと意味不明な聞き間違いが多い。


「変人」は相手に手っ取り早くウケるため天然キャラを装おうとする。

天然ボケを自ら出そうとしてくるのだ。

これは「装い天然」と呼ばれている。

しかしその天然の内容は何か物を落とす等といっためちゃくちゃしょおもないものである。


このようにみんなそれぞれ問題を抱えているチームだった。

そしてかくいう僕はNSCに入学して間もない頃でやたらと気合が入っていた。

「今日はワイがこの場を回すんや!」

僕の鼻息は荒かった。


合コンが始まった。

相手の女子が1人来れなくなって4対3になった。

ちょっとイヤな気配がする。

こういう直前に相手の人数が減る時はロクな事がない。

相手のメンバーは

Yさん、イケイケ女子、不思議ちゃん

の3人である。

なかなか手強そうな布陣だ。

場を回す気マンマンの僕が口火を切る。

「じ、じゃあ、みんぬでずご紹介しつひこか!」

噛みっ噛み。

初っ端から空回りしている。

まずは不思議ちゃんが答えた。

「え〜私分からないです〜」


分からんて何やねん。

いきなり不思議ちゃん全開やないか。

周りの女子が言う。

「この子ちょっとこういう子で〜笑」

うん、めんどくさい。


次にイケイケの女子が自己紹介した。

名前を言い、ザックリと住んでる場所を言った。

それに元イケメンが食いついた。

「え、○○てあの○○の近くの?」

はい、始まった。

元イケメンのどうでもいい部分に食いつくシリーズだ。

元イケメン「え、○○ていう事は○○がある場所やんな?」

イケイケ女子「いや、そこじゃないかな」

違うんかい。

全然話噛み合ってないやないか。

元イケメン「ていう事は○○の近くか!いや、それとも、、、」

もうええわ!

どんだけ食いつくねん!

今から行く気なんか!

サルが口を開く。

「そこたぶん山下さんが住んでる場所ちゃうかな」

誰やねん。

山下さんていうて誰が分かるねん。

ちなみに山下さんとはラグビー部の先輩である。

もちろん相手の女子は知るはずもない。

おさる「山下さんこの前車乗ってた時に、、」

山下さんの話やめろ!

山下さんの車の話誰が興味あんねん。

僕はすかさずツッコんだ。

に「いや、何の話してんねん!!」

何か変な空気になった。

ツッコミの間とキレが悪い。

そもそも僕はツッコミキャラでもない。

パサッ。

変人が床にメニューを落とした。


30分後。

元イケメン「え、ていう事は近くにスーパーあるやんな?」


いつまで聞いとんねん。

周辺の地図作ろうとしてんのか。


おさる「この前キャラが言うててんけど、、」

だから誰の話してんねん。

高校ラグビー部のキャラの話しても相手分からへんやろ。

僕はまたツッコんだ。

に「誰も分からへんやろ!!」

おさる「え、チキンライス??」

どんな聞き間違いやねん。

「ら」しか合ってへん。

文字数全然違うし。

あかん、こいつらやりたい放題や。

ツッコんだこっちがスベってる感じなってる。

そして自分自身めちゃくちゃ調子が悪い。

完全に気合が空回りしている。

パサッ。

変人がまたメニューを落とした。


それ何やねん。

メニュー落とす事の何が面白いねん。

ただうっとしいだけやないか。

カシャン。

不思議ちゃんがお箸を落とした。


お前もかい。

装い天然VS不思議ちゃん。

テーブルから物なくなるぞこれ。


僕はみんなが何かする度

「何でやねん!」「何してんねん!」「どないなっとんねん!」「もうええわ!」

と何のひねりもないツッコミを繰り出していった。

そして次第に場は僕だけが大スベリしている空気になっていく。

元イケメンが「あちゃ〜」という顔でこっちを見る。

いやいやいやいや。

俺もあかんけどお前らが意味わからんすぎるねん。

悪いのは俺だけじゃない!!


もう帰りたいが諦めるわけにはいかない。

これは「変人がYさんと付き合うための合コン」なのだ。

コロン。

変人がコップを落とした。

ずっと何しとんねん。


合コン開始から1時間以上経過した頃、元イケメンが女子に切り込んだ。

「みんな彼氏っているの?」

ナイス元イケメン。

これを聞かない事には始まらない。

Yさんが真っ先に答える。

「私、彼氏いる〜!!」



。。。



変人は仏像のようになっている。

僕は思った。

この合コン何の意味があるんや、、、

そして

Yさんが変人にハマってる話、あれ一体何やったんや、、、


結局Yさんとイケイケ女子には彼氏がいた。

彼氏がいないのは不思議ちゃんだけ。

てか、この女子達もよう来たな。

何が目的なんや。


その後、一次会あまり盛り上がってなかったのに鴨川の河原で花火をする事になった。

今はもちろん花火なんて禁止だが当時はそうでもなかったように思う。

昔の事なんでスルーして欲しい。

花火の最中、線香花火が早く落ちた人が罰ゲームをする事になった。

まずは元イケメン。

木の柱に猿の真似をして登る事になった。

元イケメン「ウキッウキ!」

まあまあウケて満足気な顔をしている。

次の罰ゲームは変人。

鴨川の浅瀬で鳥の真似をする事になった。

変人「クエッ!クエッ!クェッ!クエ〜!!」

水でビチャビチャになった変人が雄叫びをあげる。

みんな爆笑。

変人はめちゃくちゃ勝ち誇った顔をしている。

いやあんたつい数十分前失恋してんねんで。

ほんまに好きやったんかこの人?

そして次の罰ゲームは僕。

罰ゲームの内容は

道に大の字で寝転がる。


俺だけ何やねん。

罰ゲームの内容おかしいやろ。

絶対スベるやん。

提案したのは元イケメン。

悪意しか感じない。

僕は意を決して寝転んだ。


シーーーーーン。


ほれ見ろ。

元イケメンは「あちゃ〜」という顔をしている。

いや、お前が悪いんやぞ。


そのまま僕だけが一次会二次会通してスベり続けた人となって合コンはお開きとなった。

その後男だけでカラオケに行った。

反省会である。

元イケメンが変人にある提案をした。


「今から電話で告白するべきちゃうか!!」


何でやねん。

相手彼氏いる言うてんねん。

しかもついさっきまでクェックェッ言うて水びたしなってた人に告白されて相手どう思ったらいいねん。

変人は答えた。


「俺やるわ!!!」


何でそうなんねん。

お前100%フラれるぞ。

さっきまでクェックェッ言うててんぞ。


変人が電話する。

Yさんが電話に出る。

変人は大きな声で言った。

「俺、Yさんの事が好きやねん!!!」



2秒でフラれた


そらそうである。

彼氏いる言うてんねんから。

これ一体何のための告白やねん。


電話を切った後、変人は呆然としていた。


いやいやいや。

何を驚いてんねん。

当然の結果やないか。

何を「そんなバカな」みたいな顔をしてんねん。

そらこうなるやろ。

何回も言うけどお前さっきまで水びたしでクェックェッ言うててんぞ。


僕達はカラオケから場所を移し、夜が明けかけている鴨川の河原に座った。

変人は遠い目をしてぼ〜と川を見つめている。

元イケメンが優しく声をかける。

「お前男になったな。お前カッコ良かったぞ」


僕は強烈な違和感に襲われた。

何やこの取って付けたような失恋は。

直前までクェックェッ言うてた人が急に電話で告白して今めっちゃヘコんでる。

え、何これ?

この人ほんまにヘコんでんの?

え、ていうか何で告白したん?

全然わけわからへんねんけど!

で、元イケメンめっちゃ普通の失恋の感じで励ますやん。

おさるもウンウン頷いてるし。

え、めっちゃ変やねんけど!

この空間、めっちゃ変やねんけど!


そして僕達は帰る事になった。

僕は朝からNSCの授業があった為、大阪に向かった。

3人は元イケメンの家で少し寝る事にした。

家に向かう最中、元イケメンとおさるが僕の事でこんな会話をしていたらしい。

「あいつ変人が失恋したのにもっと励ましたれよな。あんまそういうの分からんのかな。合コン中もずっとスベってたしな、、、」



僕はこの時の事を思い出すと未だに怒りがわいてくる。

これは冤罪である。

確かに僕はスベっていたがそれはみんなも同じだ。

あのスベリはみんなで作り上げたものだ。

そしてあの失恋は励ます必要がない。

後日変人自身が「実は告白の後全くヘコんでなかった」と供述している。

なぜだか分からないがヘコんだフリをしていただけだそうだ。

僕は今でも思っている。

あの時の僕は無実だったと。







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