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書評「もしもウサギにコーチがいたら」

組織開発ファシリテーターの長尾彰さんに「目標管理制度の仕組みへの理解が深まる本で、おすすめの書籍があればぜひ教えてください」と質問したところ、「目標管理しないほうが目標達成しやすい」「目標管理の最短距離はザッソウ文化の醸成」という考え方が前提にあるといいつつ、目標管理の具体的なテクニックについて書かれた本の一つとして、おすすめ頂いたのがこの書籍。

本書は、カメとのレースに負けた、慢心のウサギを題材にしつつ、従来型の命令・指示・お説教では動かないウサギのやる気をどう引き出し、能力を高めることができるのか。人の話を聞かないウサギに話を聞かせるには?反抗的なウサギとコミュニケーションとるには?ぼーっとしていて何もしないウサギを育てるには?といったテーマについて、コーチングの第一人者伊藤守さんが書いた書籍です。

ウサギは何が問題かが分からない

本書にはコミカルなトーンでありつつ、「反省なんてさせない」「アドバイスはしない」「コミュニケーションはキャッチボール 答えが出なくてもかまわない」といった、コーチングする上で考慮すべきテーマについて書かれています。

特に印象に残ったのは、「ウサギは何が問題かが分からない」というテーマについて書かれていた箇所です。

最近僕はTWOLAPS Track Clubという陸上チーム向けに「考え方」についてお話させて頂く機会がありました。

考えるためには、「知らない」ことを「知りたい」と思うことが必要です。問題が問題なのは「何が問題なのか分からない」ことです。僕は勉強会では「何が問題なのか」を見つける方法をお伝えしたのですが、何が問題なのか見つけることができたら、その問題はほとんど解決したと言ってもよいのです。問題解決とは問題を見つけ、適切な大きさに噛み砕き、一つひとつ解決していくことだからです。

問題というのは自分自身の中にある

そして、問題というのは、自分自身の中にあります。これは会社も同様です。組織の問題は個人の問題であり、個人の問題を丹念に解決すると、大抵の組織の問題は解決します。問題が解決することが繰り返されれば、目標が自ずと達成できるというわけです。

だからこそ、個人の話を丹念に話してもらい、コーチングする立場の人は丹念に聞く。コーチングする人は「素晴らしい言葉を話す」魔法使いだと思いがちですが、自分の言葉で人を動かす人は僕は素晴らしいコーチとは言えないと思います。本当のコーチは、相手自身の意志で動くように促せる人なんだと思います。

本書の最終章にはこんな言葉が書かれています。

ウサギ君、君の物語を話してください。
これまでどんな物語で生きてきたのか、その結果どんな経験をしてきたのかを知ることができます。
そして、これからどんな人生にしたいのか、それを話してください。
仕事、人との関係、どんな気分でいたいか、話してください。

そして、こんな言葉で終わります。

ウサギ君、何はどもあれ、話してください。君の物語を。

本書には「管理」の方法は出てきません。でも「達成」に必要な要素が分かりやすく書かれています。ぜひ読んでみてください。


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