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書評「Technics SL-1200の肖像 ターンテーブルが起こした革命」

ヒップホップ、レゲエ、テクノといったクラブ・ミュージックを支えた日本の"楽器"があるのをご存知だろうか。その楽器とは、ギターでも、ベースでも、ドラムでもない。ターンテーブルだ。

1980年以降の音楽は、ターンテーブルなしには語れない。ヒップホップ、レゲエ、テクノといった、ディスコ・クラブで発展した音楽を支えていたのが、DJが使用するターンテーブルだ。

そして、世界中のクラブで使用され、世界中のDJに愛された、ターンテーブルがある。それが、Technicsのターンテーブル「SL-1200」だ。

元々ハイエンドの再生機として作られ、搭載されていた機能が、DJの求めていた機能にぴったりマッチし、世界中のクラブで使用され、世界中のDJに愛されるようになり、SL-1200はDJが利用するターンテーブルとして、アップデートされていく。そんな名機SL-1200のことを、クラブカルチャーの変遷とあわせてまとめているのが、本書「Technics SL-1200の肖像 ターンテーブルが起こした革命」だ。

一度生産終了になった名機

僕が好きなラッパーにSHING02というラッパーがいる。SHING02の曲の中でも好きなのが「1200ways」という曲だ。この曲の中で、SHING02は、Technics SL-1200への愛を「1200ways」という曲で表現している。

SL-1200の事を女性に例え、SL-1200への甘い愛を語ったこの曲には、こんなライムが登場する。

i heard they stopped making you a while ago
cut you off the assembly, line and in catalogs and still strongly
pursued on the market like online dating,
servicing billion of records that are waiting to be slapped on
and the needle to be played and be scratched on
like all digi everything you gotta be kidding me, right
how can they replace thee?
(しばらく前に、君が生産停止になったって聞いたよ
組立ラインから外されて、カタログから消えても
まだマーケットでは強い人気、オンラインのデートみたい
何億ものレコードが君がかけてくれるのを待っている
針を落として、スクラッチしてくれるのを
すべてデジタル化って、冗談だろ?
どうやって、君の代わりが出来るんだ?)

そう、SL-1200は2010年に一度生産終了のアナウンスがされた。アナログからデジタルに移り変わり、DJたちもレコードではなく音源を直接編集するようになり、ターンテーブルの需要が減っていったこと、Technicsブランドを運営するパナソニックがブランドの見直しを進めていたことも要因だった。

しかし、ユーザーからの熱いラブコールを受け、Technics SL-1200は復活を果たす。

SL-1200を復活させようにも、昔の商品なので、図面と一部の金型しか残っていなかったのだという。そんな状態からいかにしてSL-1200を復活させたのか。本書にはパナソニック側のモノづくりにかける熱い想いも語られている。

本書を読んでいると、SL-1200というターンテーブルにまつわる人々の熱き想いと、いかに1台のターンテーブルが世界を変えたのかが分かる。音楽好きだけでなく、モノづくりが好きな人、自分の仕事で世界を良くしたいと考えている人はぜひ読んで欲しい1冊だ。





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