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書評「スタジオジブリの小冊子『熱風』2018年4月号-神田松之丞ロングインタビュー 講談師として生きる-」

スタジオジブリは、毎月10日に「熱風」という無料の小冊子を発行しているのですが、今月の特集は、「神田松之丞ロングインタビュー 講談師として生きる-」です。

「講談」とは、講談師が張り扇で釈台を叩きながら、調子をつけて語る話芸です。落語が会話で進めていく芸に対して、講談は講談師ひとりによって朗読される芸です。正直言うと、僕は講談をきちんと聴いたことがありません。

「客席の方が豪華」な講談の会場

講談の歴史は落語より古く、1680年代頃からおこったと言われ、江戸時代は「講釈」と呼ばれていたそうです。

講談は現在「危惧職」ともよばれ、講談師の数は少なく、落語に比べると、多くの人に知られているとはいえません。しかし、インタビューされている神田松之丞さんの公演のチケットは大人気でチケットが取りづらく、スタジオジブリのプロデューサーである鈴木敏夫さんが演目を観に行った時は、映画「シン・ゴジラ」の監督としても知られる樋口真嗣さんも観に来ていたそうです。

神田松之丞さんは「客席の方が豪華」と表現されていましたが、多くの人が知らないだけで、再び講談に陽の目が当たることがあるのかもしれません。

敢えて「講談師」になるということから考える「働き方」

今回の特集では、神田さんに「なぜ講談師になったのか」「講談師とはどのような仕事なのか」といった、文字通り「講談師として生きるということは、どういうことなのか」について、詳しく訊いています。神田さんが語っている内容については、「熱風」をご覧いただきたいのですが、僕が印象に残ったのは「仕事」「働く」ということについて、スタジオジブリと熱風の編集部が提示しているメッセージです。

「熱風」では、2018年2月号に、「潮田登久子 ロング・インタビュー 本を撮る」という特集を行いました。潮田さんは、本とか防止とか冷蔵庫とか旧いビルといったモノばかり撮影している写真家なのですが、写真家ではあるものの、広告媒体などで活躍しているわけではないので、誰もが知っている写真家というわけではありません。しかし、潮田さんは、自身が発表している写真集を収入源に、日々の生活と写真家としての活動を続けています。

「好きなことをして生きていく」というCMがありましたが、現実的にはお金がなければ生きてはいけません。講談師であっても、写真家であっても、なかなか続けてはいけません。観てくれる人、買ってくれる人がいれば成り立つというものでもありません。では、どうすればよいのか。今回の講談師の特集と、潮田さんの特集からは、スタジオジブリからの「働く」「仕事」ということについて、問いかけられているような感じがします。

お金持ちになる、美味しいものを食べるなど、こうした事の為に働くのは、悪いことではありません。しかし、製品、サービスばかりの現代で、敢えて貧乏で、不便で、自分の身体を使って、仕事をするということはどういうことなのか。とても考えさせられる特集でした。

神田松之丞さんの著書「絶滅危惧職、講談師を生きる」、読んでみたくなりました。

「熱風」について興味がある方は、こちら。


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