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書評「誤釣生活―バス釣りは、おもつらい」(糸井重里)

子供の頃の僕にとって糸井重里という人は、「釣りをする人」でした。

釣りをしながら、木村拓哉さんや、奥田民生さんと、「釣りについて」湖のほとりでダラダラと話していて、「なんだか楽しそうだなぁ」と思ったのをよく覚えています。(余談ですが、奥田民生さんのことは糸井さんとの対談で知りました)

話は代わって、親しくさせてもらっている若い先輩が、最近「釣りを始めた」という話を耳にしました。彼が釣りをしているのを耳にしたとき、ふと「読み直してみようかな」と思って、本書を手に取りました。

手にとった書籍とは、「誤釣生活―バス釣りは、おもつらい」。本書は、糸井重里さんがバス釣りを始めた頃、なんと「紙のプロレス」というプロレス雑誌に「自分が書きたくて」書いていた連載をまとめた書籍です。

「紙のプロレス」の連載は、原稿料も出なければ、催促もされなかったそうです。その代わりに、「自分が書きたいことを書ける」場所として、糸井さんは、自由に、楽しく、釣りのことを書いていたそうです。

糸井さんが「釣り」をテーマに書いたこと

昔、本書を読んだ時には気がつかなかったけど、今回改めて読み直してみて分かったことがあります。本書は、釣りの本として書かれているが、実は違うテーマについて書いた本なのではないかということです。

では、釣りではなく、何のテーマについて書いた本なのか。本書は、糸井さんが出来るだけ表立って書いてこなかった「勝負」「ビジネス」「仕事」といった事柄について書いた本なのです。

本書に書かれているのは、糸井さんが「計画」して、「実行」して、「検証」して、「改善」する過程です。

人ではなく魚に例えているけれど、魚を捕まえるまでに考える過程について丁寧に書かれていることからわかったのは、糸井さんが普段の仕事にどういった姿勢で向き合い、出来るだけ避けようとしているように見える「勝負」について、どう向き合おうとしているのか、「魚を釣る」ことを題材に丁寧に描かれています。

なぜ釣りに行くのか、どうやったら釣れるのか、釣れると言われる方法は正しいのか、勝負にこだわるということはどういうことか、など、糸井さんが答えようとしなかった題材について書かれています。

今読むと面白い書籍

以前、「インターネットの未来を描いたよげんの書だ」と、糸井さんの「インターネット的」という書籍が注目されたことがありました。「インターネット的」の初版が2001年。注目されるまでに15年以上かかりました。

本書の初版が、1996年。初版が出てから20年以上経過していますが、むしろ、いま読んだら面白い書籍かもしれません。Amazonでも中古で手に入るので、ぜひ読んでみてください。


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