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2020年3月福島取材㉒/全ては聖火リレーのために

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<続き>

常磐線全通の翌日、昨日ほどではないものの、これまでではあり得ない乗客数の車内でいきなり話しかけてきた15歳の少年。彼は、僕が胸につけていたバッジを見て誰だかわかったという。イラストまでしっかり見てもらえて、絵描きとしては本当にありがたい。そして、こんなおっさんに思い切って声をかけてきた勇気も素晴らしい。僕も似たような形で17年3月に写真家中筋純さんの展示に乗り込んだが、声をかけるまでかなりの勇気が要った。今では呑み友達のようになり、あの日が嘘のようだ(笑

興奮冷めやらぬ様子の少年と話しているうちに双葉駅に到着。

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(こんなにたくさんの人がこの駅で降りるのはこの時期が最後だろう。実際、6/6に同じ時間の電車で行った時は、役場の人が「今日は5人も降りた」と驚くほど)

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(双葉駅西口はこの状態。聖火リレーが行われる予定だった東口だけしっかり整備されている)

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(お寺の屋根が見える。17年11月に訪れた時点で、いつ倒れるのかわからないほどに傾いていたが、まだ建っている。ちなみに同じく傾いて建っていた浪江の國玉神社は解体されてしまった)

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(双葉駅から浪江方面を見つめる)

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双葉駅東口。聖火リレーのため、駅前ロータリーだけ綺麗に整備された。線量も低め。今年の3.11には多くのメディアがここから中継を行なったが、周辺の廃墟まで紹介したメディアは少ない。

駅東口にある渡部商店(廃墟)は、行政に抗う形で取り壊しに同意してないのかと思ったが、双葉から避難した知人によれば、そうでもないという。ただ単に間に合わなかっただけのようだ。つまり、聖火リレーのための「復興しました」アピールさえ間に合わなかったということだ。

その渡部商店の前で少年と記念撮影をした後、別れて駅東口を歩く。前日、雨のため、少し進んだだけで引き返した駅の北側へ、線路沿いに歩いてみる。ちなみに駅前ロータリーの空間線量は毎時0.2〜0.5μSv程度で、大野駅よりは低い。駐輪場に設置されたモニタリングポストも、毎時0.27μSvほどだったと記憶している(福島県外では立入禁止で除染するレベル)。

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北へ少し進むと、門も全開で玄関も開き、家の中が丸見えの家が出てきた。ついさっき歩いてきた、同じく立入規制が緩和された夜ノ森と違って、ここはあまりにも無防備に私有地がそのまま晒されていた。

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放射能に汚染され、空き巣もあらかた入ったあとで、未だ帰還もかなわないとはいえ、この放置ぶりは一体何なのだろう? 疑問に思うと同時に、こんな状態で見切り発車的に常磐線を全通させ、駅周辺の立入規制を緩和した行政に対し怒りが湧いてきた。

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(綺麗に見えるが、タイヤの空気は抜けている)

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(ここは片付いている。間も無く解体されるのだろうか)

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(バスケットボールのゴールが悲しい)

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私有地に立って線量計に目をやると、目に見えて数値が上昇していくのがわかった。場所によってはアスファルトを新しくしてまで綺麗に除染された公道と私有地では、全く線量が違うことがすぐにわかった。

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(毎時1.8μSvを超えてしまった)

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これはと思いマスクをし、道路へ戻って再び北へ進むと、駅から離れるに従って線量は上昇、常時1.0μSv/h前後となり、場所によっては毎時1.5μSvを超えるようになってしまった。

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駅前の聖火リレーの場所だけ念入りに除染したということか。

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(傾いた家もそのまま)

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上りの特急ひたちが、高線量地帯を走り抜ける。

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ここも傾いたまま。

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(このダットサンサニーは、17年11月に入域した際は倒壊したガレージの下敷きになっていた。今はガレージは解体され、車だけが残る)

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踏切を過ぎて少し歩いたところで引き返し、17年11月に訪れたまどか保育園へ向かうことにする。

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街中には荒れた廃墟が目立つ。ガラスが割られてるところもあれば、強化ガラスで割れていなくとも、何故か玄関が全開の家もある。廃屋に廃車、「廃」のオンパレード。立入規制緩和直後であり、常磐線全通の翌日なので、街中に意外と人はいる。皆、人目も気にせずに写真を撮影している。いつもなら人の足音や話し声などほとんどない寂しい双葉郡の取材だが、この日は孤独感や恐怖のようなものは非常に少ない。

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(可愛いと思い撮影したが、よく見るとキャラクターのほっぺに日の丸がプリントしてあり、五輪仕様と思われるデザインに気持ち悪さを感じた)

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(この右の更地は美容室だったっけ…?)

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(長命山正福寺)

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まどか保育園到着。17年11月以来。あの時は防護服を着て入域した。あの時と線量はほとんど変わらないのに、「特定復興再生拠点区域」として今は乳幼児でさえ丸腰で立ち入ることが出来る。グレーゾーンなんてものじゃない、めちゃくちゃだ。

<続く>

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