2019年11月、浪江取材/藪内十一面観音〜中村廹文殊堂
「有料」とありますが、基本的に全て無料で読めます。今後の取材、制作活動のために、カンパできる方はよろしくお願いします。
〜〜〜〜〜
<続き>
桃内駅から、グーグルマップを頼りに薮内十一面観音堂を目指す。特に観光名所というわけでもない。ただ単に、現地を歩く上での1つの目印だ。寺社仏閣マニアなので(笑)、そんな楽しみもある。
本当にごく普通の田舎の風景。
農家の人たちの努力によって、米や野菜へのセシウム等の移行は極力避けられている。しかし今も福島第一原発からは、震災前の1ヶ月分以上の放射性物質が1日で放出されている。
「復興に向けて防犯パトロール」ねえ…
0.2μSv/h。それほどではないが、埼玉県よりは確実に高い。
藪内十一面観世音菩薩到着。思っていたよりも小さかったが、しっかり管理されている。
平安時代後期制作。平成になって放射能を浴びる。
どれだけ染み込んだだろうか。
何を思う。
何を思う…何を。
敷地内は線量が高めかと思ったが、少し上がった程度だった。小高は南相馬でも避難指示解除が遅かったが、実感としてはそれほど線量は高くない。勿論、浪江等の高いところに比べれば、ではあるけど。
物言わぬお地蔵さまを汚染しておきながら“無主物”と開き直るさまは、果たして許されるのだろうか。
放射能が、一部の利権屋以外に誰かを幸せにしただろうか。雇用を生み、金を生んだかもしれないが、ここまで大きな代償を払う必要があっただろうか。
自然に対する畏敬の念があればこそ、放射能だか放射線だか放射性物質だか無主物だか、言葉遊びに何か意味があるのか。なんともやりきれない思いに囚われる。
何か“意志”のようなものを感じた。
空間線量は0.3μSv/h程度だった。
ごめんなさい。
次の目的地、熊野神社を目指す。
動物除けの電気柵。しかしそれでも、このあたりはイノシシたちの楽園だ。
一度は放棄して去っていながら、またヒトは戻ってきた。ヒトの勝手な都合で。
(あの林の向こうかな)
水平線の向こうは海。
歩いていくと、熊野神社の前にもう一つ、何かあるのを見つけた。
南相馬市指定有形文化財…と。有形文化財だけど、グーグルマップにはこの神社は出てこない。
良い雰囲気だ。少し線量は高め。
江戸時代中期製作、文殊菩薩坐像と、室町時代製作、虚空蔵菩薩坐像。由緒ある「貴重な仏像」さえも、放射性物質で汚染されてしまった。
木に囲まれて鬱蒼とした雰囲気のこの場所の線量は、想像していたよりかは低い。しかし通常なら立ち入り禁止の場所だ。福島だけが許される。
やや小高い丘から、海の方向を見渡す。名もなき小さな小山の神社から…本当に静かだ。ここにはごく当たり前の田舎の日常があった。それが原発事故によって…南相馬は浪江よりは帰還が進んでいる。それにしても、限界集落となるのは時間の問題だろう。なかったことになどできないのだ。
<続く>
ここから先は
¥ 100
サポートしていただけると大変ありがたいです。いただいたサポートは今後の取材活動や制作活動等に使わせていただきます。よろしくお願いします!