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2020年8月浪江、双葉町取材⑥/これは復興なのか

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 野菜栽培の実証実験の現場に立ち合わせてもらったあとは、請戸漁港へ。この日は市場は休みのようだった。お土産を買おうと思っていたが、諦めて撮影だけして移動する。

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(請戸漁港)

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 その後、棚塩へ移動。そこで目にしたのは、モクモクと煙を噴き出す減容化施設と、目の前に大量に置かれた放射性廃棄物を詰め込んだフレコンバッグ。そしてそのすぐ隣でこうべを垂れる稲穂だった。

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(減容化施設のすぐ脇で稲が育つ。)

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 片方は環境省、片方は農水省の管轄。省庁間の連携が全く取れてないために、このような風景が生まれるという。ビジュアル的には最悪で、いくら安全と言われても、この写真を見て誰が食べたいと思うのだろう。安全と安心は違うものだ。

 浪江の駅前で昼食をとる。蕎麦やうどんを提供している店を発見し、入店。店の名前もちゃんと確認しなかったのですっかり忘れていたが、調べてみると「幸」という店だ。

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(食事処「幸」。シンプル。昼は食堂、週末夜はバーになる。)

 駅から徒歩5分。メニューはとてもシンプルで、蕎麦、うどん、カレーくらいしかない。味も普通で、駅の立ち食い蕎麦のようだ。店内にはいくつかお土産も販売されていて、そこで鵜沼さんは大堀相馬焼の焼物を購入した。

 店内を見回すとバーカウンターがあり、そこに酒が並んでいたので、ひょっとしてと思い感じのいい店員さんに聞いてみると、やはり夜はバーになるという。週末、金土の2日間だけの営業。どちらかというとメインはバーの方らしい。

 帰宅後に調べてみると、ここは震災当時中学生だった少年が、避難生活を経て浪江に戻り、2020年5月に開店した店だという。「浪江に若い人が集まる店があるといい」そう考えてこの店を作ったという。応援したいと思う反面、苦労するだろうなとも思う。こうした若者の取り組みを、「復興が進んだ」という文脈で報道する記事を目にしたが、どうにももやもやした思いが残った。このもやもやが言語化できるのは、浪江の本当の意味での「復興」が出来たときかもしれない。

 食事を終え、僕は当時制作していた「いぬとふるさと」のために、鵜沼さんに頼んで浪江の酒井地区、谷津田地区へ連れて行ってもらった。以前にも訪れていたが、その時に撮影した写真の中に絵本で使えそうなものがなかったから。鵜沼さんも、ここに広がる広大なメガソーラーを見てみたいという(この時点で鵜沼さんはまだ見たことがなかった)。

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(谷津田地区のメガソーラー)

 国道114号線から南へ向かい、谷津田地区へ。そこで目にした光景に、鵜沼さんは絶句しているように見えた。そして、「浪江の人はうまくやったよね」と一言こぼした。

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 農業を再開したところで、安全かどうかはわからないし、安全だったとしても売れるかもわからない。売れなかった時にどこまで国や東電が補償してくれるかもわからないし、後継ぎがいるかもわからない。であれば、かつて農地だった場所を有償で電力会社に貸し出す方がよほど頭の良いやり方だ。環境破壊というが、それ以前にここは原発事故によって破壊されている。そんな土地を有効に使うには、この手しかなかったのかもしれない。

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 …ここは、とても悲しい地域。これは「復興」なのだろうか。

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 その後、再び双葉に向かい、前田の一本杉を見てから帰路に就いた。

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(前田の大杉)

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(稲荷神社)

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(2021年2月にここを訪れた時は除染中で、すっかり草は刈り取られ土は剥ぎ取られ、フレコンバッグが大量に並んでいた。)

 鵜沼さんから直接声をかけてもらい、マリンハウスふたばや中間貯蔵施設エリア、帰還困難区域を見せてもらえたことはとてもありがたかった。希望の牧場で吉沢さんと直接会って話せたことも、鵜沼さんと長時間貴重な話が出来たことも収穫だった。実証実験というものがどうやって行われているかも見ることが出来た。マスコミが不誠実であることもわかった。

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 僕は取材のイロハも知らないただの絵描きで、ただ鵜沼さんの後についていっただけだが、いろんなものを見ることが出来た。この取材で撮影した写真を、そのまま絵本『いぬとふるさと』の中でも使っていたりする。あの絵本は、ただ僕が一人で歩いて作ったものではなく、福島から避難した何人もの人たちの協力で作ることが出来たと思っている。

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<終わり>

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