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【寄稿】BooksPROによる情報の充実で、書店の業務改善と伝える力の強化を:浜書房 取締役 増田めぐみ

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浜書房 取締役 増田めぐみ 氏

「すべての書店に等しい情報を!」

BooksPRO推進委員を務めております株式会社浜書房の増田めぐみです。

私がBooksPROの立ち上げに関わらせていただくきっかけとなったのが、2018年に参加したJPO、文化通信社共催の「ドイツ出版産業視察」です。書店、取次、版元、すべてが一丸となって出版問題に取り組んでいるドイツの出版産業に、日本の出版業界の未来に対するヒントがあるのではないかとJPOメンバーの方々と話し合った結果、「すべての書店に等しい情報を!」「リアル書店の未来のために!」というBooksPRO推進会議リーダーの柳本重民氏(集英社)のビジョンのもとに始まったのが、この書店向けポータルサイトBooksPROです。

BooksPROは本気で皆様に取り組んでいただければ、流通を変えることができるツールになると思っています。何故ならば、現行の書店の「送られてくる物を並べる」流通から、本来の小売りの「商品を選んで並べる」に変換することができるツールとなり得るからです。

先日発表となった本屋大賞は、全国の書店員が「自分の店で売りたい」と思った本を選んでお客様に伝え続け、今年で18回目を迎えました。大賞本が毎年ベストセラーとなっているのは、皆さんもご存じの通りです。長年文具バイヤーとしての仕事も担ってきた私も、「選んで売る」ことの力強さを実感しています。文具で言うなら、半年から3か月前に実際の商品に近いサンプルやカタログで吟味をし、売場計画を立て、拡材を準備して「伝えること」に注力し、発売を迎えます。

それに比べ、BooksPRO以前の出版物の書誌情報は、大変遅れていたように感じます。書影は少なく、販促情報もほとんど無く、Amazonのサイトを見て初めて知る、ということも少なくありませんでした。昨年3月10日にスタートしたこのBooksPROは、これから出る新刊の情報をいち早く知ることができます。

情報は一目瞭然のカレンダー形式で表示されますので、店頭の計画を立てるのに役立ちます。現在では取次を経由する出版物の90%が登録されるようになり、書影はもとより内容紹介などの書誌情報も続々とアップされ、販促情報も随時更新できるようになりました。ようやくWEBの新刊カタログが登場したのです。

業界一丸となって、未来に向けた進化を

さらにこのBooksPROではたくさんの書店業務がスリム化され、整理されることを期待しています。たとえば多くの郵便物やFAX、メール情報などを「とりあえず送る、受け取る」ことは、毎日多種多様なフォーマットに対応する書店にとって、大変な手間でした。

これからはBooksPROひとつ見れば、メディア化情報も、重版情報も、拡販の材料であるPOPやポスターなども簡単に得られることを目指しています。そうなれば劇的に業務が変わるでしょう。ぜひこのサイトを使って、書店現場の業務量改善にもご注力いただければと思います。

先日、BooksPROでは、出版社系WEB受注サイトとの直連携をスタートさせました。電話や各出版社さんの個別ルールではなく、きちんと履歴の残る注文サイトに繋がります。これが定着すれば、書店は信頼をもって適正な注文ができるはずです。

各出版社さんは、何より、BooksPROを使って新刊や販促の情報を、早く、的確にお伝えください。きちんと情報が得られれば、皆様が心を込めて作った本を大切に売ることができます。適正量を仕入れることができ、客注も取れます。他業種のように受注生産に踏み切ることもできるかもしれません。流通の大きな革命となるかもしれないのです。

出版界の問題は、環境問題と似ているように思えます。いま取り組まなければ手遅れになるかもしれない。けれども、誰が、どこから、何をするべきなのか。

これからの書店の未来なくして、本屋大賞のような大きなムーブメントや、子どもたちが手に取る本を、伝え続けることができるでしょうか。書店の伝える力こそ、継続させるべき大切な力ではないでしょうか。だからこそこのサイトで、欲しい本が来るのか、きちんと情報を得られるのかが、とても大切になると思うのです。

「選んで売る」という概念は、現行制度への否定と捉えられがちです。けれど出版社・取次・書店からなるBooksPRO推進委員は、今できる一歩を踏み出すことが重要という理念から始まり、何かを否定することなく進んできました。自社の利益抜きに未来を考え、このサイト作りに尽力してきました。ようやくドイツで得たヒントが形になってきました。けれどまだまだ未熟で進化が必要な状態です。だからこそ、次は皆様のお力でそれを実現させていただきたいのです。何卒、BooksPROをよろしくお願いいたします。

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