フレディ

不在を称える葬儀という祝祭。

1月30日に観た、クイーン+アダム・ランバートのライブ『THE RHAPSODY TOUR』の余韻が残っている。

レポートを読んでいると、そこにフレディがいないことに言及するものが多い。

僕自身もやっぱりそのことを思って、メルマガにこんなことを書いた。

実際、ステージは
亡きフレディ・マーキュリーへの
リスペクトにあふれていました。

当のアダムも
あれほど歌えるのに

「俺がクイーンのボーカルだ」

ではなく

「僕はファンの一人なんだ。
 だから一緒に歌ってね」

と言うスタンスで、
その「一歩引いた」態度が
終始貫かれていました。

だからこそ、でしょうか。

終盤、ふわっと
フレディが現れるのですが、
あれ、映像じゃなくて
本当に「いた」ような
気がしたんですよね。

亡き人が
残された人の心の中に
いつまでもい続けるように

おととい集まった
何万もの人の心の中にも
フレディ・マーキュリーは
ちゃんと生きていて、

あのロックコンサートにはそぐわない
「神聖」とも言える数分間の中に

人の心に照らされたフレディが
たしかに
「いた」ような気がするんです。

それだけでは書き足らず、続けてSNSにこう書いた。

昨晩のライブのことを振り返る文章を書いていて、ふっと、クイーンのフロントマン、アダム・ランバートのことを思った。

彼がしていたのは、フレディの依り代になることだったのではないか。

彼の謙虚で一歩引いた姿勢が、その絶妙な距離が、巫女のようにそれを可能にした。だからこそ、他にフレディに似た歌い手はいくらでもいるのに、彼がいると「クイーンだ」と感じることができる。彼があけた「スペース」にフレディが宿ることができるから。

実際、ロックコンサートにしては、妙に清々しい感覚がずっとあって、特に「ラブ・オブ・マイライフ」を会場が歌った数分間は、灯されたスマホのライトが星のように光って、どこまでも澄み切っていた。

あの時、映像だけじゃなくて、本当にフレディが「いた」ような気がするんですよね。仕事柄、そんなふうにいないはずの人が「いる」のを感じることがあるので、荒唐無稽なこととは思えないでいる。

リスペクトというのは、もしかしたらその人のためにスペースを空けることかもしれない。そのことでその人はいつまでも「いる」ことができる。目には見えなくても。

そういえば、スペースって空間でもあり、宇宙って意味でもあるんですよね。その感じも昨日のライブにはあったなあ。

ロックコンサートにそぐわない「神聖な」時間、妙にすがすがしい感覚。「スペースの広さ」として体験されたあの感じ。

アダム・ランバートが一歩引いたそこに、メンバー全員が意識的に空けているそのスペースに、僕たちはフレディの存在を感じることができた。

そういえば、僕はライブ中何度か「お葬式のようだ」と感じた。湿っぽいそれではなく、人の存在が物理的には消え、しかし心の中によりはっきりと存在しはじめる転換点としてお葬式だ。

もしかしたら、クイーン+アダム・ランバートのライブというのは、大規模な葬儀なのかもしれない。

それは、いなくなった人がよりはっきりといられるように設計された舞台でいつまでも続く。ショー・マスト・ゴー・オン。

メキシコには「死者の日」という故人を偲んで祝うお祭りがあるそうだ。日本にもお盆という祝祭日がある。

死者とふれあうのは、祝祭なのだ。

目を引いたのは、フロントマンを務めるアダム・ランバートの歌唱とパフォーマンスの素晴らしさだ。

公演の序盤、彼は「みんなフレディのことは好き? 僕も大好きなんだ。だから僕らは同じ。今夜は一緒にフレディを祝福しよう」といった言葉を客席に投げ掛けていたが、フレディを真似するのでもなければ、自らの持ち味を必要以上に強調しようとするのでもなく、あくまで各楽曲の物語性やイメージに忠実に、なおかつその世界観をわかりやすく体現してみせた彼のパフォーマーとしての素晴らしさは、まさにこれから先も語り継がれていくべきものといえるだろう。

ブライアンは彼を“gift from god(神からの贈りもの)”と紹介していたが、いわばクイーンはアダムにチャンスをもたらし、アダムはこのバンドに新たな可能性をもたらしたのである。

オーディエンスとともにフレディを祝福する葬儀という祝祭。それが『THE RHAPSODY TOUR』だったのかもしれない。

そこにはフレディが存在するためのスペースが常にあった。そのことを人は「リスペクトに満ちていた」というのだろう。

リスペクトというのは、もしかしたらその人のためにスペースを空けることかもしれない。そのことでその人はいつまでも「いる」ことができる。目には見えなくても。

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