【ガストロノミー】緑川十影誕生日(12/29) 記念Short Story:甘美なるChocolateNight
このお話は【ガストロノミー】のある日のサイドストーリー、緑川十影目線のお話です。
※アプリゲーム内ミニシナリオをアレンジして再掲載です(アプリは現在サービス終了しています)。
<アプリシナリオ>
甘美なるChocolateNight
※このお話は二人がまだ結婚前、付き合い始めたころのお話です。
西洋のバレンタインは、男から女へ花などを贈るものらしい。フランス人の友達と世間話をしていた時に初めて知った。『フィアンセが居るなら絶対に贈れ』と言われても困る。当方、純血の日本男子だ。
と思いつつ、勝手に足が花屋へ向いていたり。
しかし、色とりどりに咲き誇る花屋の前で入るのを躊躇した。
緑川十影(花が多すぎて、何を選べばいいかサッパリわからん)
大体、自分が彼女に花束を渡す姿なんて、想像ができなかった。
緑川十影(亜蘭あたりなら、恥ずかし気もなく花束を渡しそうだが……やっぱり俺は、ガラじゃない。やめとこう)
踵を返そうとすると、幼い声に呼び止められた。
女の子「牧師様」
緑川十影「ん?」
教会に通っている、少女だった。
緑川十影「こんなところで何をしているんだい?」
女の子「おつかいよ。牧師様は?」
緑川十影「たまたま通りがかった」
女の子「そうなの?
さっきからずっとここに居るから、牧師様もおつかいかと思った」
緑川十影「おつかいじゃない。買うかどうか迷ってただけで」
女の子「あっ、もしかして教会のお姉さんにあげるの?」
緑川十影(子どもって、こういう時に限って鋭いな……)
女の子「だったら、薔薇がいいと思う!」
緑川十影「……薔薇?」
女の子「うん! コイビトからもらうなら絶対に薔薇がいい。
お姉さんも、きっと喜ぶよ」
キラキラとした女の子の顔がうっかり彼女の顔と被ってしまった――
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帰宅後、俺は彼女に一輪の薔薇を差し出した。
あなた「まあキレイ……真っ赤な薔薇」
緑川十影「教会の子どもからだ。お前のために摘んだと言ってた」
あなた「そうなんですか?
でも十影さん、薔薇はこの時期、まだ咲かないと思いますよ」
緑川十影「……っ」
あなた「それに、この包装紙とリボンはお店で買ったとしか思えないんですけれど……」
上目使いで見てくる彼女から目をそらす。
考えなしに嘘を吐いたのは失敗だった。
緑川十影「……はあ。買ったのは俺だが、選んだのは教会の子どもだ」
あなた「ふふ……十影さんってば、正直ですのね」
緑川十影「は?」
あなた「実は、たまたま花屋さんに通りがかったんです。
そうしたら十影さんと女の子を見かけて」
緑川十影「なっ……」
あなた「すみません。
でも、見かけただけで立ち聞きはしていないんですよ。
ありがとうございます。とっても嬉しいです」
そう言って、大切そうに薔薇を抱きしめて微笑む。
緑川十影(最初から素直に渡してればよかったな)
あなた「ところで、どうして私に薔薇を?」
緑川十影「それは」
ここで正直に言うか、はぐらかすか一瞬迷ったが――。
緑川十影「Je t’aime mon coeur」
あなた「え……?」
緑川十影「赤い薔薇の花言葉だ」
あなた「今の、フランス語ですよね?
どういう意味ですか」
緑川十影「教えない」
あなた「ど、どうしてですか」
緑川十影「お前は俺を花屋で見かけたくせに黙っていたじゃないか。
そのお返しだ」
あなた「えっ、わざと黙っていたわけではないですよ?
気になります、教えてください」
緑川十影「絶対、嫌だね」
――『お前を心から愛している』なんて台詞、日本語で言えるはずがない。
END
シナリオ:NINOYA
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