月見の日1: パスタと欠陥
(固体化学シリーズ、Ep2)
「せんぱいっ、お月見しましょうよお月見」
秋の夜長、花の金曜日、研究室もとくに立て込んでいないという奇跡的な状況が揃った夜。凛から電話がかかってきた。眠い目をこすりながら、言葉の意味をゆっくり考える。
曰く、お月見。月も星もわたしは大好きだが、凛から提案されるとは思っていなかった。もちろん、断る理由もない。すでにメガネは外し、お化粧も落としているので、枕に顔をこすりつけながら返す。
「うん、いいよ……今は眠いけど」
と、返したつもりではある