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【映画ディア・ファミリー感想】ただのお涙頂戴映画じゃない。娘を思う家族愛と行動力に感動

⚠️このnoteはネタバレ要素を含んでいます。映画本編を見てから閲覧することをお勧めします!ご注意ください…!⚠️


はじめに

先日、大泉洋さん主演の映画ディア・ファミリーを見てきました。とにかく泣きました。一緒に見に行った友達にも笑われるくらい、久々に目が腫れました笑
色々思ったことや感じたことがあったので、自分の感想をここに残したいと思います。


あらすじ(引用)

生まれつき心臓疾患を持っていた幼い娘・佳美は [余命10年]を突き付けられてしまう。
「20歳になるまで生きられないだと…」
日本中どこの医療機関へ行っても変わることのない現実。
そんな絶望の最中、小さな町工場を経営する父・宣政は「じゃあ俺が作ってやる」と立ち上がる。
医療の知識も経験も何もない宣政の破天荒で切実な思いつき。
娘の心臓に残された時間はたった10年。
何もしなければ、死を待つだけの10年。
坪井家は佳美の未来を変えるために立ち上がる。

絶対にあきらめない家族の途方もなく大きな挑戦が始まる―。

感想

「俺が諦めたら終わり」 ― 心打たれた、坪井夫婦の「強さ」

“死を待つだけの10年”か、“不可能に挑む10年”か―。

これを「言うだけなら」簡単だと思います。また、そう聞かれると後者の方を選びたいと思います。しかし一方でその選択を有言実行できるかは非常に難しいと感じます。

もし自分が坪井さんだったら。自分の子どもに余命宣告をされたら。私はきっと諦めたくないとは思っていても受容だけして終わってしまうと思いました。

この映画には宣政が家族を救うために粉骨砕身するほど、家庭をかえりみなくなっていくという矛盾が存在します。佳美のそばに居続けるか、それとも離れて命を救うために奔走するかの二択を迫られる場面があります。そのうえで、私だったら早々に前者を選ぶかもしれないな、とそう感じました。選択に正解、不正解は決してありません。ただ、娘の為に日本全国の病院に行ったり、アメリカまで行ったり、資金調達をしたり、有識者に頭を下げたり、心臓病や人工心臓について知識を学んだり。

『そうよ!なんでそんな簡単なことに気づかなかったのかしら!』
「あなた誰ですか?」→『私は人工心臓を誰よりも造りたいものです!』
『なるほど。じゃあ3倍努力すればいいんですね!』

これらのセリフは私は言えるタイプではないです。だからこそその宣政(や陽子をはじめとする坪井家の)行動力や諦めない不屈の精神に、まず素直に尊敬の念を感じました。「俺が諦めたら終わり」と果てしない闘いに挑む宣政の心理的重圧は計り知れないです。

だからこそ、そんな努力も水の泡とならざるを得ないような様々な現実が襲い掛かるシーンは本当に胸が苦しくなりました。8億を投資しても臨床試験や認可を取り実用化に至るにはさらにその何十倍の1000億円を超す費用が必要になること。人工心臓を使ったとしても完治は無理だと医者から突きつけられること。

もう駄目だろう、と。普通ならなりそうな絶望的な状況に陥るたびに妻・陽子や長女の奈美が「それで、次はどうするの?」と問いかける。
それを受けて自分を奮い立たせ、再び動き出す宣政。そんな宣政を献身的にサポートする陽子。坪井夫婦の「強さ」を終始感じさせられました。


「私の命はもう大丈夫だから、その知識を苦しんでいる人のために使って」 ― 三姉妹たちの「強さ」

私が本映画で一番印象に残っている台詞です。
これを言える佳美は本当に強いな、と思ってすごく泣いてしまいました。言葉を受けて無く宣政、無言で肩を揉む佳美も印象的でした。

ただ、佳美はきっと最初から強かったわけではありません。日記に「死にたくない」と書き連ねていた佳美のシーンが印象的でした。そりゃそうですよ。迫りくる死がこわくないはずがない。でも父や母の血の滲むような努力も分かっている。家族愛故に、このような言葉をかけ父の宣政の重圧を除き、新たに約束をして奮い立たせた佳美の姿に感動しました。

そしてその言葉を「家族の夢」として受け止めて実現に向けて動いた坪井一家(それだけでなく支えてくれた職場、医師ら医療関係者も)にグッときました。

家族の前ではいつも前向きで一家の太陽みたいな存在だった佳美。でも、うっすら自分の置かれている状況を悟っていました。その中で、奈美に対して「私もうすぐ死ぬの?」と聞きます。洗い物をする奈美は一瞬手が止まるも「退院できたじゃん、大丈夫」等とごまかします。それを受けた佳美は「そっか」と一言発し、その場を去ります。

この一連のシーンにおける奈美の、弱っていく佳美本人の前では明るく気丈に振る舞いながらも一人になった途端にあふれる涙(川栄さんの演技)を見て涙が止まりませんでした。私はこのシーンもすごく印象的だったと同時に、そうした奈美の強さに心打たれるものがありました。


人工心臓があっても完治はできないと告げられて家族が絶望に包まれるシーン。そこでも真っ先に「佳美の前でそんな顔しないでよ」と呼び掛けていました。辛くて苦しくて気持ちが溢れても佳美の前では明るく振舞う。この奈美の強さに私は感動しました。

寿美については、佳美の日記で「みんなは私に何かしようとしてくれるけど、寿美は唯一私に甘えてくれた」という内容が印象的でした。これについては「強さ」とはちょっと違うかもしれないけど、でもなんというか、こうして「変わらず接している」ことで佳美にとっても救われた部分があるんだろうなと思うと心を打たれました。

宣政のどんな困難なことがあっても絶対に諦めない全力の姿。
明るく優しく家族を支える陽子の姿。
優しくて温かい思いやりあふれる家族の姿。

「ディア・ファミリー」というタイトルの通り、佳美から家族へ向けた思いと家族から佳美へ向けた思い、双方向の大きな愛と絆を感じる温かさとそれゆえのお互いの「強さ」に感動しました。涙が一度流れたらもうずっと止まらなかったです。


はるかちゃんについて

この子の存在も印象的でした。

当初は他の患者など眼中になかった宣政に佳美は病室で仲良くなった子を救ってくれと懇願する。自分の病気を治そうと頑張っているパパならはきっと他の子も救ってくれるんだと信じていたんでしょう。ただ、そんな余裕はないと頭を抱えていました。

亡くなった後彼女の母が病室に表れ片づけをしながら「あの子、佳美ちゃんの話ばっかしてたのよ」「ありがとうね」と言っていたシーンがまた泣けました。。。。

はるかちゃんの靴を履いて、彼女が登れなかった坂を佳美が登るシーンがありました。余命宣告を受けていた佳美が同じ病室の友達との別れを経験する。この時、佳美は何を考えていたのだろう。いろいろと考えさせられます。


絶望的でも手を差し伸べてくれる人はいる

宣政の熱い想いは、家族だけでなく坪井さんの周りの人たちにもどんどん広がっていきます。その絆にも心を打たれました。

私の涙腺が崩壊した1つに石黒教授が研究室を解散したことによって
撤収しなければならないとなったときに「坪井さん、力になれず申し訳ありませんでした」と研究者たちが謝るシーンです。それを受けた宣政の「そんな顔をするな、こちらこそつき合わせてしまってすまなかった」と握手をしながら応答する姿も含め、宣政に応えようとする彼らの熱意、にもかかわらず誰も悪くないのに上手くいかないいたたまれなさに胸が締め付けられる思いになりました。

また、早々に離脱した冨岡。彼にも最終的に感動させられました。夜中に娘の容態悪化の報を受け東京~名古屋を車で移動するくだりから始まり、教授との交渉で「博士論文にする。患者を治すのが医者の使命、人事などどうでもいい。医師免許に賭けて私がやる」と石黒教授に申し出て、冨岡が全てを捨てる覚悟と決意をする瞬間は胸を撃たれました。バルーンカテーテルの臨床実験が始めることができてよかったあああああとなりました。

人工心臓開発に携わった医師たちが「絶対死なせない」と治療する場面や「これでやっと力になれます」と何本も購入していた姿も坪井さんの努力が今、そして未来に繋がる感じがして胸が熱くなりました。


スカッとジャパン??

映画では石黒教授という人物がいました。彼は、人工心臓制作に奔走する宣政を支えていくが、実用化に向けて対立することになりました。すべての要件をパスしているのに許可を出さない、宣政を出入り禁止にする、とにかく実用化を断り続ける石黒教授には純粋にムカつきました。

ですが冨岡など協力もあり「IABPバルーンカテーテル」の製品化に成功した後改めて招かれたときに、出入り禁止ですのでと言ってあえて部屋に入らなかったり「提供」ではなく「買い上げる」ように仕向けたり……
玄関から出て宣政が「よーーし!!」と声を出すシーンがありましたが私も心の中でガッツポーズをしました。非常にスカッとしました。ここをなあなあにせず仕返しのシーンがあったのが個人的には良かったです。

ただ、今回の「ディア・ファミリー」の主題としてはここの仕返しは少しサブ的な要素だと思います。全体的に心優しい人物が多かったので石黒教授も憎まれ役ではなく純粋に協力する人物として描いて、シンプルに医療界のシステム的な弊害を全員でクリアしていく様だけでも物語としては十分なのではないか、とは感じました。(ただ、面白かったです)

このように、フィクションとしては石黒教授は実用化において主人公に対する「敵」として書かれていました。先述したようにムカついたのは事実です。ただ、精神が少しづつ成熟し大人になりつつある今なら、実際に頭で考えると教授の言い分、保守的な考えも分かるのです。

劇中で「人を救いたいがために医者になったんじゃないのか。なのに自分の立場ばかり~」というようなセリフがありました。共感はできますが、医師がカテーテルを良い器具だと協力する者だけではなく自身の医師免許をかけて保身のために拒否する者も居るというのは非常に現実的だと思います。医師には患者を助けることを第一に考えて貰いたいと思いますが、現実はそう簡単でなく様々なしがらみがあります。ちゃんと臨床試験しなきゃいけないのは確かで、もし失敗してしまったら批判どころじゃない、とんでもない額の賠償金やらなんやら……そういう部分も含めて、世知辛い世の中だなと感じさせられました。

主題歌『Dear』について

私はMrs.ファンでありJAM’sの端くれです。なので楽曲自体はすでに知っていはいたのですが、エンドロールで聞くとまた違った印象になりました。
はあ、なんかもう本当に良かった。

最後、宣政と陽子が扉をくぐって終わるところからの、1番Aメロの最初の歌詞(扉の先には〜)がリンクしすぎてビビりました。

左胸の鼓動を感じてる
右の脳で君を愛してる
両の手で誰かに触れて
私は今日も生きてる

涙も枯れてしまう
哀しみを食らう日もあるけど
貴方はきっと強さも持ってる

無くしたものを探す
道が廃れていようとも
誰かを失うのも人生の一部と
呼ばなきゃいけないなら
どうか

壊れそうな場合
私の肩に寄りかかってさ
お互い甘えてみましょう
さぁ次は何処へ行こうか

改めて聞くと、とにかく歌詞がこの映画ディアファミリーとリンクしていてこれまた涙が止まりませんでした。

さいごに

この映画はある家族が生み出した医療器具が今でも多くの人を救い続けているという実話が基だそうです。「事実は小説より奇なり」という言葉がありますが、それをまさに体現しているなと感じました。この話も実話であるということを考えると重みが違ってくるな、と。

世の中が少しずつ変わっていくのは、諦めない誰かの想像も及ばない感情や労苦の積み重ねだと感じました。技術だけでなく、熱量が伴わないといけない。特に、60人分の治験データを出し厚労省からも認可を得るという執念は特に凄かったと感じました。

人工心臓は叶わなかった。娘の命は救われなかった。だが、初の日本製のカテーテルを作り、17万人もの命を確かに救った。「最も救いたかった命は救えなかったが、全世界で17万人の命を救うことになった」という結末は完全なるハッピーエンドでもバッドエンドでもないけれど、心動かされるものがありました。

また、研究者は資金面やシステム面から「やりたくてもできない」現状があるということを改めて知りました。研究者の皆様達が、自由に研究でき、発展しやすい社会であることを願いたいです。

最初は「よくある人情もの+難病ものでしょ」と思って甘く見ていたのですがその想像をはるかに超える感動と非常にインスピレーションを受けました。この映画で衝撃的だったのは佳美が天国へ行く場面や葬儀など直接的な死の描写が無いことです。きっと一番泣くだろうなと想像していた場面だったのですがそこはあえて省いている。この映画はただ単にお涙頂戴の映画ではないんだぞという制作陣のこだわりを個人的に感じました。

ただ悲しいだけじゃない。前向きになれる・勇気や希望をもらえる、そんな映画でした。最後陽子が「次はどうする?」と発した後、夫婦で光の中へ進む姿で終わりDearが流れエンドロールへ向かうのが良い終わり方だと感じました。

ぜひ多くの人に見て、感じてほしい作品です!!
ここまで読んでいただきありがとうございました!!


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