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新潟時代7.携帯電話振動子(2)

 2003年頃、当社は携帯電話用振動子の製造技術改善で安定した生産が可能になり、世の携帯電話ブームに間に合った。生産量の拡大に伴い、順次プレス機を増設し、最終的には8基に増やした。
 
 振動子はタングステン合金粉末をプレスして形を作り、仮燒結をして、最後に高温の炉で本燒結して製品にするのだが、高温の炉に入れる際、モリブデンの板に並べる。ところがモリブデンの板は、高価だから繰り返し使わねばならず、何度も高温にさらされて、ゆがんでいる。歪んだ板に適度な間隔をあけて数千個の半製品を並べるのは人の手にたよらざるを得ない。生産量の拡大に伴い、パートさんを20人程度まで増やしたが、それでも追い付かず、土日に事務所の幹部以下が交代で出勤して並べ作業をしていた。
 
 なんとか省力化できないかと、設備保全を担当する現場系のC君に相談を投げかけた。C君は設備経験が豊富な上に、現場系ということもあり、作業員の動きと心理をよく分かっている。振動子の並べ作業をもっと能率よくできる方法がないか、方法があれば何を用意すればいいか、私の考えを彼にぶつけ、議論した。彼はそれでは道具を作ってみるので少し待ってくれとのこと。
 
 一月ほどして、用意出来たとのことで並べの現場に行くと、ベルトコンベアとエアシリンダーを使ったそれらしい道具が置いてある。彼が並べ担当のパートさんに使い方を説明し、その道具を使って作業をしてみると、いままで20人で20分程度かかっていた作業が、2人で10分で終わる。費用は100万円あまりの簡単な道具だが、よく考えられており、驚くばかりの大成功だ。
 
 当社の分銅は振動モーターのメーカーに納めるのだが、国内ではほぼ独占し、世界の携帯電話の30%に当社の振動子が使われるにいたった。会社は一気に高収益企業になり、新潟地方の月刊誌でも紹介された(トップ画像)。しかしながら、虎の子の商品もいつか中国の模倣製品に代替されるのがお決まりのパターンだから、次なる主商品を開発せねばならない。日本の部品製造業の宿命だ。
 
 当社最大顧客のモーターメーカーは日本のⅯ社だが、タイのチェンマイに工場を建設し、当社の振動子もそこに送っている。Ⅿ社から、工場を見てくれとの案内があり、私と常務の二人でタイに出張した。Ⅿ社の社長も来ており、ゴルフを接待してくる・・・・どちらが顧客か分からない状況だった。チェンマイのゴルフは女性のキャディーが各プレイヤーに付き、いたれりつくせり、贅沢三昧だ。ところが、前をまわる韓国人の組はキャディーさんと別にそれなりの女性を従えている。我々のキャディーさんに、あの女性たちは何だと(英語で)聞くと、返事をしにくそうだったが、ようするに、彼等がチェンマイ滞在中にずっと(24時間?)同伴する女性・・・・という事らしい。

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