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欠けたケーキ

 過去の日記シリーズは、現在に追いつきましたが、
再度過去にさかのぼり、まだアップしていない文章を披露します。
なかには再掲する事もあるかもしれませんが、
気がついても見逃していただくよう、宜しくお願いします。

 小学校前の1年間、教会運営の幼稚園に通った。
子供の足で30分ほどかかるから、
それまでの生活圏から少しはみ出したところにある。
担当の女の先生は優しく好きだったが、
内向的な性格もあって、友達ができず、
キリスト教の説明もよくわからない。
出来れば行きたくない、が本音だったが、口に出すことはなかった。
 
 冬休みに入ると直ぐに、
幼稚園からクリスマスパーティーの招待葉書が来て、
全員にケーキを配るとのこと。
幼稚園は好きではないが、ケーキにつられて一人で出かけた。
 
 パーティーで何をしたのかはさっぱり覚えていないが、
最後にケーキを配るので、並びなさいとのこと。
50人くらいの列のやや後ろのほうに並び、やがて、順番が来た。
サンタのおじさんが、私の顔を見て、葉書は?と言うのだが、
何のことかわからず、きょとん、としていた。
 
 今から思えば招待の葉書を持参すれば、
ケーキと交換する、とでも書いてあったのだろう。
それまでの子には直ぐにケーキを差し出していたのだが、
私に対しては、時間をかけて、
たくさんあったケーキの中から何かを探している。
 
 後ろに並んでいる子供達と、周りの親達が、
不思議そうな顔をして見ている。
私はなんとなく、悪いことをしているような気がして、いたたまれず、
直ぐに立ち去りたかったが、そんなことをすれば余計目立つ。
 
 結局、サンタのおじさんは、端が欠けたケーキを差し出してくれたので
受け取って、直ぐに家に戻った。
後刻、食べたそのケーキが、
ぱさぱさして美味しくなかったことを覚えている。

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