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大宮サンセットと私。

東北から出張で来ている友人を、新橋の居酒屋でビールを飲みながら待つ間、この記事を書いている。

先日、スピッツの楽曲がサブスク解禁になって話題になっていた。ベストと一部楽曲はすでにサブスクで配信されていたけれど、全楽曲配信というのはにわかファンにとっても嬉しい出来事だった。
昔、「お父さんの大学時代によく聴いたんだ」と、父が運転する車のカーステレオからロビンソンが流れていた。ただ、父もにわかファンなので、きっとロビンソンとチェリーくらいしか知らないと思う。そんな父の娘であるため、私もいわゆる「A面」と呼ばれる楽曲くらいしか知らない(ただ、父よりは知っている自信がある)。
中学時代は吹奏楽部で、毎年3月に行われる定期演奏会のアンコール曲の最後は必ずスピッツの「正夢」だった。今思えば、顧問の先生の好みだったんだと思う。定期演奏会の最後の曲、つまり、3年生と演奏できる最後の曲ということもあって、私たち吹奏楽部員にとっては特別思い入れがある楽曲だった。3年生を送り出すという意味なら、もっと卒業らしい楽曲があったんじゃないかと思う。
どうやら、スピッツはA面以外も、名曲がたくさんあるらしい。
私は高校時代は、私史上最高に陰キャだったので友達が少なかったのだけど、なぜかいつも一緒にいるのは私を含めた男女4人グループだった。よく放課後に駅前のカラオケに4人で行った。
その中のひとりのKくんはスピッツが好きで、よくスピッツの曲を歌っていた。今も昔も上手い下手関係なく、カラオケで、人が歌っている歌がなぜかいい曲だと思えたりする。Kくんはよくスピッツの「大宮サンセット」を歌っていた。Kくんが初めて「大宮サンセット」を歌った時から、その曲が好きになった。
「スピッツの好きな曲はなんですか?」と聞かれたら、ロビンソンと正夢と楓とそして、大宮サンセットと答えると思う。大宮サンセット以外の3曲はA面の楽曲なので、サブスクで聴くことができていた。大宮サンセットはアルバムの中に入っている楽曲なので、私が利用しているサブスクでは聴くことができず、YouTubeで聴くしかなかった。
夜、散歩をしながら「大宮サンセット」を聞きたいなと思っていたので、今回のサブスク全曲配信はにわかファンの私にとってもかなり朗報だった。
「大宮サンセット」の歌い出しは「この街で俺以外きみのかわいさを知らない」という歌詞で始まる。そのすぐ後に「今のところ俺以外きみのかわいさをしらないはず」と続く。
「えっ、今、この街で俺以外きみのかわいさを知らないって言い切っといて、すぐにきみのかわいさを知らないはずってすぐ弱気になっちゃうのかよ!」とツッコミたくなる。けれど、なぜか許せるような気がする。草野マサムネだからだろうか。そういうところも愛おしいと思う。
それと、好きな人に対して「自分しかきみの魅力に気づいていない」という気持ちはよく分かる。
「大宮サンセット」はある土曜日を描いた、地味な楽曲だ。けれど、そんなささやかな幸せを切り取った楽曲だ。高校時代は妙にでかい大宮サンセットの温もりとかを分からずに聴いていたけれど、大人になってささやかな日常の幸せを理解できるようになった気がする。

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