【読書】森絵都「ラン」

森絵都の「ラン」という小説を読んだ。自転車であの世に向かい亡くなった両親や弟と話すという特殊能力を持っていた主人公であるが、自転車を使ってはならなくなったため自力であの世まで走る必要が出てきた。そんな動機からマラソンに挑戦するが、次第にマラソン仲間ができ、走ることが単なる手段以上のものになっていく。個人的には、三浦しをんの風が強く吹いているを思い出させるような1作であるように思えた。以下、雑多な感想。

・あの世に行って亡くなった人達と会えるという点で自分は主人公を少し羨ましく思っていたが、あの世の人間はいずれ魂が解けてあの世からも亡くなってしまうという仕掛けを知り、1度出会うことで却って2度目の別れをしなくてはならなくなるということに思い至った。これはこの小説に限ったことではなく、誰かと仲良くなるたびに将来的にどちらかが悲しい思いをすることが決定されていく。かと言って孤独になれば他者の死に対する悲しみがなくなるので良いというわけではなく、別れという現実を引き受けつつ色々な人を愛することが良いのかなと思った。

・本作では意地悪な人間として描かれている主婦が登場するが、彼女が放った「主婦は誰にも評価されない」という趣旨の言葉が印象的である。働いている女性からすれば、旦那に稼いでもらっている専業主婦という身分は良いように見えるかもしれないが、家事を当然のものとしてみなされれば何のために生活しているのだろうという気持ちになってもおかしくない。一見ラクな立場の人達はたくさんいるが、それぞれに大変な物事を抱えているんだろうと想像することを大切にしたい所だ。

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本を読んだり映画を見たり美術館に行ったりしています。
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