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店舗BGMは「声の届く距離」を設計する〜週末にはじめた小商いカフェの記録②〜

小商いの実験として始めたカフェの試行錯誤をシェアしていきます。今回は「空間の音設計」「BGMの選定」について書き綴ります。

①リラックスして会話ができる環境とは?

僕は前から、店によって「この店はリラックスして話しやすい」とか「ここは落ち着いて会話ができない」といった差が生まれる理由は何かな?と疑問に思っていたのですが、ある時その原因の一つに気が付きました。

それは「声の届く距離」です。自分の発する声がこの場所でどこまで届くのかということを僕達は敏感に感じとりながら、緊張したりリラックスしたりしているのです。

もう少し説明しますね。
例えばある中華街で店に入ると、厨房で鍋を叩く音や注文を読み上げる声など活気があります。結構ガヤガヤしているので自分の会話の声が届く範囲は1mぐらいです。
一方、とあるコンクリート造りの美術館では、シーーンとして普通に会話すると10m先ぐらいまで声が届いてしまいそうです。

そう。気付いたのは「声の届く距離」に他人がいると、「自分の話を聞かれているかもしれない」という心理が働き緊張が生まれてしまうということです。
だから全く音のしない静かな飲食店って「店員さんに会話を聞かれているかも」と思ってしまい、リラックスできないんです。

ということで、僕はこの「声の届く距離」を店舗でも意識するようになりました。これはBGMだけの話ではなくて、うちの店では、①空調の音、②換気扇の音、③キッチンの作業音、④BGM、の4つを調整し、客席の会話の届く距離が1〜2mぐらいになるようにしています。

だから換気扇には動作音を出してもらうために、必要無い時も常に「強」スイッチオンです。笑

居心地いいなと思うカフェなどで、iphoneの録音機能を使ってみてください。きっと、自分の会話が聞こえにくいぐらい①②③④の音が雑音として録音されますよ。実はこの雑音が、リラックスできる空間をつくるためにとても大事なんです。


②曲選びで最も大切なこと

さて、それでは店でかける曲はどうやって選んでいけばいいでしょうか。
僕が曲を選ぶ時の視点は次のようなものがあります。

・曲から生まれる感情は何か
・曲の質感(楽器の種類)は何系か
・曲に懐かしさがあるか
・知名度のある曲かどうか
・テンポの速さはどうか
・リズム音は強いか弱いか
・歌詞の言語は何語か

それぞれの項目によって曲から生まれる効果が変わり面白いのですが、この中で最も意識すべきことは、「曲から生まれる感情」です。

顧客分析編でも書きましたが、僕は「顧客に提供したい価値」というものを決めてから店舗運営をしています。ということは、店で流れているBGMが顧客に与える感情は、僕が顧客に提供したい価値と一致していないといけないのです。

僕は顧客に対して、特別な週末をリラックスして過ごしてほしいと思っています。そのために必要な感情や気分を僕なりに考えたとき、

・穏やか
・肩の力が抜ける
・懐かしい
・口ずさみたくなる

といった感情や気分が必要だと思いました。
これが僕の店でかけるプレイリストの選曲の軸です。1曲1曲、これらの要素があるかを確認して曲を選んでいます。


③プレイリストは感情を軸に、ジャンルを混ぜる

ここからは好みの話になります。笑
よく「カフェ・コンピレーション」とか「J-POP ボサノヴァ・カバー」みたいなCDがありますよね。そういうプレイリストをかけている店で、僕はBGMをあまり気にかけることがありません。

多分ですが、曲のパターンが単調だと、BGMは耳に入ってこず一気に脇役になるんだと思います。もちろんBGMを脇役にする狙いであれば良いのですが、僕の店では「あ、この曲懐かしい」とか「落ち着くなぁこの曲」とBGMも楽しみながら食事を楽しんでほしいと思っているので、BGMに耳をすませる仕掛けがほしいんです。

これは僕の感覚ですが、曲を意識するのは「曲調が変わる時」じゃないかなと思っています。ピアノの曲の後にバンドサウンドが流れる時、最新の曲の合間に昔懐かしの曲が流れる時、僕たちは「おっ」と耳をBGMに傾けます。

なので僕は先に述べた「同じ感情」という統一感をもたせながら、プレイリストのジャンルをバラバラにしています。例えばこんな感じです。

・カフェの定番おしゃれ洋楽(Jack Johnson、Jason Mraz等)【40%】
・肩の力が抜ける優しい曲(コトリンゴ、Predawn等)【20%】
・日本語歌詞のゆったりバンド(くるり、奇妙礼太郎等)【10%】
・レトロな洋楽の名曲(ルイ・アームストロング、Monkees等)【10%】
・懐かしい邦楽(はっぴいえんど、The Peanuts 等)【5%】
・その他インストなど変化球系【5%】

すべての曲は「落ち着くなぁ」とか「心地よいなぁ」という統一感があるんですが、ときどき曲調がガラっと変わるので、結構多くの人がBGMに気付いて楽しんでくれているように思います。

店でとっているアンケートでも「BGMがとても好きです」と書いてくださる方が結構いらっしゃいます。BGM一つとっても店のブランドになるんですから、しっかりこだわっていきたいところですね。

以上、小商い記録、BGM編でした。


<まとめ>

①過ごしやすい空間にするためには「声の届く距離」を意識した音の設計が必要

②曲が与える感情と店が提供したい価値とが一致しているかを確認する

③プレイリストは単調になりすぎないほうが、お客さんの印象に残る

実験店舗:nimo alcamo
webサイト:http://nimoalcamo.com/




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