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結局精神的に追い詰められるホラーが一番怖いという話

僕はホラーが苦手だ。ホラーが大嫌いだ。
だって怖いじゃないか。お化けなんてないさお化けなんて嘘さと唄ったところで怖いものは怖いし苦手なものは苦手だ。

どのくらい嫌いかと言うと前職の部長くらい嫌いだしどのくらい苦手かというと昔家族で東京ディズニーランドに行った時にシンデレラ城で号泣したくらい苦手だ。

どんなに好きな彼女がいて、例えばその彼女が『お化け屋敷に行きたい』『ホラー映画を観たい』と言ったら百年の恋も冷めると思うほどにはホラーが苦手だが彼女はいないしその見込みもないので問題はない(問題しかないのでは)

昔、大学時代に深夜のカラオケで4年間アルバイトをしていた時、夏場にホラー特集映像が部屋の掃除中に流れ出すとすぐに部屋から飛び出し『シネ!!!!』と思っていた。


あれは、もう何年前になるだろうか。
友人の内田カップルと僕とサークルの女性同期笑ちゃんと男性後輩あきらの、男3人女2人の計5人で、なんとなく暇だからという理由で東京ドーム併設の遊園地『LaQua(ラクーア)』に行った時のことだ。

僕はまあホラーは全くのダメダメだが絶叫マシンは大好きである。
ラクーアのジェットコースターは都内のさほど大きくない遊園地にしてはそこそこのクオリティーで何回も乗ってしまった。

一つ問題があるとしたら飲食店エリアの上を走行するときにその排気でちょっと臭い時があるくらいだ。

それよりもさらに数年前、『大丈夫大丈夫』と言ってイキりちらしてメガネをかけたまま乗った先輩が終着後『メガネが…ない…』と言っていたのはまた別の話だ。


そしてその当時、ラクーアでは期間限定のお化け屋敷がやっていた。

そのお化け屋敷はどうやら有名な『お化け屋敷プロデューサー 五味 弘文』という方のプロデュースしたお化け屋敷らしかった。

お化け屋敷プロデューサー?なんだその職業は。

天敵か?

夏季限定という言葉に惹かれ、女性陣二人はお化け屋敷前で『入りたい!』と騒ぎ始めた。

夏季限定なんて言葉に踊らされるなんて愚の骨頂だ。
何を考えているんだ。

決して怖いとかじゃない。そういうことじゃない。そういうことを言ってるんじゃない。違う。違うんだよ。
夏季限定とかそういうのに踊らされるその精神が許せない。
わかってる?そういうとこだぞ。

入りたい女性陣二人と抵抗する僕と内田、そして傍観する後輩。

それでも譲らない女性陣。

こうなると戦争しかないのだ。

人種や宗派の違いは戦争を生む。人類の歴史は戦争の歴史でもあるのだ(極論)

そのお化け屋敷は『足刈りの家』といい、そもそもそのタイトルからもおどろおどろしさを感じさせる↓↓


(いやこんなん屈強な男でも卒倒するでしょ)

お化け屋敷前でごねる僕と内田の、理路整然とし、且つ説得力に溢れた言い分はこうだ。

『いやいや、足ってそんな草刈りするみたいなノリで刈っていいものじゃないからね?』

どうもこの言い分は女性陣に伝わらない。

『本当に足刈るわけないじゃん!』などと言っている。

『ホントウニアシカルワケナイジャン?』何を言っているんだ。

何語だ?

そのままお化け屋敷前で僕と内田は30分以上ごねた。

ごねたというと聞こえは悪いが。っていうか俺たち悪くねえし!!!

結果、その時の状況は2対2。
最後の判断は残った後輩に委ねられたのだ。

『どうする?』という問いに『どっちでもいいっす!』と即答した。

手が出そうになった。

そのまま女性陣の『どっちでもいいなら入ろう』に押し切られ、渋々というか嫌々というかもう半泣きの状態でそのお化け屋敷『足刈りの家』に入ることになった。

入口で訊くと一度に5人は入れないと説明され、内田カップルとその他3名、に分かれて入ることとなった。

その直後問題に直面する。

係員の『入る際は靴を脱いでください』という言葉。

『ハイルサイハクツヲヌイデクダサイ?』

ワタシ ニホンゴ ワカラナイ


僕と内田は驚いて抗議した。

『おいおいちょっと待ってくださいよお、これ明らかに足刈る気満々じゃないですかあ!?どういうことですかあ!?』

もう『ウザい』を擬人化したら僕たちの姿をしていたことだろう。

ごねの再発である。
そもそも足を刈らない人間の靴を脱がせる必要があるのだろうか?
そこのところを問いたい。軽く泣くまで問い詰めたい。

しかし女性陣の『五月蠅い』に一蹴された。
すみませんでした。

このお化け屋敷の汚いところは、並んで入場を待つ間、先に入った人たちの悲鳴を並んでいる列にスピーカーで常に流していることだ。

なんていうことをするんだ。

流れている血は何色だ?

これが大人のすることか?

人の心がないのか?

そうこうしている内に順番が回ってきて、先に内田カップルが入場した。

僕は、自分が怖いのは嫌だが他人が嫌がるのは大好物という最低最悪の糞人間のため自分の入場を待つことに恐怖しつつも、先に入場した内田の悲鳴がスピーカーから流れ出す度に壊れた玩具のようにケタケタと笑っていた。

そして自分達の順番が回ってきた。

ここでの一つ一つの仕掛けや詳細については敢えて触れないが、それはもう凄かった。

さすがお化け屋敷アーティストとしか言いようがない。

これだけ人の精神を擦り減らす仕掛けが出来るものなのか。

流れている血は何色だ?

ここで、今回のタイトルに繋がる。

僕はこのお化け屋敷で、一番脳裏にこびり付き、一番精神を摩耗し、一番恐怖した部屋があった。

その部屋は、だいたい6畳ほどの広さだった。

異質なのは、その部屋には通路がなかったことだ。

その部屋には隙間なく布団が敷き詰められていた。

そう、びっしりと敷き詰められたその布団の上を歩いていかなければならなかった。

この部屋の何が凄いのか。

それだけ不穏な部屋を作りながら『何も起きない』のだ。

『何かが起きるのでは』『布団の中に何かいるのでは』『その布団の下から何かが這い出してくるのでは』

この恐怖心を抱いたまま何もない部屋を通過する。

6畳ほどの部屋のはずがとてつもなく広く、それこそ永遠のように感じられた(嫌な永遠だ)

これが恐ろしく精神を摩耗し、何年経った今でも鮮明に思い出させるほどの印象を与えたのだ。

結局、精神的に追い詰められるホラーが一番怖いという話、だ。

その後、僕は最終的に出口の、靴を返してもらおうとしたら板がスライドして最後のお化けが登場する、というとてつもなく性格が悪い人間が考えたであろう仕掛けにリアルに腰を抜かしハイハイでお化け屋敷から出てくるハメになった。

それが大人のすることか?


唯一、そのお化け屋敷の良いところは、最後に出口から出た後にモニタールームがあり、そのモニタールームにあるボタンでお化け屋敷の中に入っている人を自分たちで驚かせることが出来る、というシステムを採用しているところだ。

なんて良いシステムなんだ。

知らない人を自分の手で恐怖させ悲鳴を上げさせる。

素晴らしいシステムだ。誰だこんなこと考える人は。

天使か?神様か?

なろうかな、お化け屋敷プロデューサー。

天職か?


そして、このことを思い出すたびに、力強く思うのだ。

二度とお化け屋敷なんか入らねえ…と。

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