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あと一周して、帰るか


考えすぎそうになったり、
気持ちを切り替えたくなったりした時、
夜、近くの公園に走りにいく。

たくさん汗をかいて、
お風呂で汗を流して、
深く深く眠る。

そうするとリセットされる気がする。

…というのは本当だけれど、
事実、こうして
「気持ちを整えようと行動している自分」
に満足するためにしている。

という方が本当な気がする。


中学生の頃、陸上部に所属していた。

優秀な成績を修める選手
というわけでもなく、
ひたむきに練習に励む部員
というわけでもなかった。

程々に楽しく、程々に真剣に、
程々に目標を定めて、走っていた。


けれど、あれから10年。


こうしてなにかに集中したいと
夜の公園に向かう私。

あの時の、走っている時の意識が
頭の中を渦巻いて、整えられていく。


胸を開いて、
足を一歩ずつ前に置いていく意識で。
腰は立てて、目線は少し先へ。
手は緩く握り、規則正しい呼吸。
顎は引いて。


背中から不意に聞こえるコーチの声。

「こむぎ。しんどくなってきたやろ。
ここで頑張れるかどうかやぞ。」


しんどくて、うなづくことしか出来なかった。
あれは冬だった。 


「こむぎ。しんどくなってきたやろ。
ここで頑張れるかどうかやぞ。」



汗を滴らせて小さくうなづく。
10年後、夏夜の私。



あと一周して、帰るか。



今も私の背中を押す。


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