【読んだ】忘れられた日本人
おすすめ度 ★★★★☆
以前読んだ齋藤孝さんの「読書力」の推薦図書100選に載っていた本。
読みやすいと書いてあったけど、読むのは結構大変だった。
読書力足りてないってことか。はい。
民俗学者である著者が、昭和初期の日本のあちこちでお年寄りの話を聞いて回る。
その土地の歴史や文化、ご本人の人生がありのままに語られている。
昭和初期にお年寄りということは、若いときは明治、生まれは江戸時代だったりする。
今丁度、朝ドラ「らんまん」をみているんだけど、その時代。
と考えると、やはり創作って現代人のためにわかりやすく作られてるんだなーと思う。
倫理観も文化も、社会構造も現代と違いすぎる。
人すぐ死ぬし、騙すし、夜這いはするし、と言って女性も奔放だし。
そういえば鬼滅の刃も大正時代で、可哀想な生い立ちの少年たちがたくさん出てくるけど、さもありなん。こういう時代だったんだもんね、と合点がいった。
理屈のつかないこともたくさんあって、そういうのが鬼とか妖怪とかと思われていたんだろうな。
一方で、若者の旅行ブームが「一文無しで家を出てそこいらの家に泊めてもらい、美味しいご飯食べてお土産もらって1ヶ月くらいプラプラする」だったりして驚く。
村から村に点々と出稼ぎに行ったと思ったら、突然ハワイやオーストラリアに仕事に行ったりする。距離感バグってない?
話し言葉そのままに書いてあるものもあり、かなり読みにくい。
でも読んでいるうちに、だんだんノッてくる。そのじいちゃんの顔が浮かんでくるような、本当に話を聞いているような面白さがあった。
若い頃の恋の話なんかなかなかにメロドラマで、ドキドキしながら読んでしまう。
身分違いの奥様に憧れて、仕事を口実に会いに行くけど、牛の話しかできないとか、実は奥様は旦那様に蔑ろにされていて、不憫に思ってついに想いを遂げる、とか。いい話風だけど、妻は何十年も放ったらかしだったりする。
そういう時代だったから仕方ないんだろうけど、自分の曾々々祖父くらいはこんな感じだったんかな。微妙な気持ちになる。
今の時代はきっと「自分の子どもには受け継ぎたくないもの」を排除して改善していった結果なんじゃないかな。
その結果、忘れられた日本人を読んでカルチャーショックを受けるわけで。
民俗学は触れたことがないジャンルだったけれど、人々の生活、社会、文化、歴史がこうして伝えられている意義はわかった気がする。
タイムスリップしたような不思議な面白さがあった。
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