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FOMCは短期的な転機か?--米金利にらみの様子見へ

11日(木)の株式相場は朝から軟調ではありましたが、午後から下げ幅を急速に拡大する展開になりました。昼の時間帯に目立った材料、手掛かりがあったとは考えにくく、もし転機になるものがあったとしたら、やはりそれは9-10日に開かれた米FOMC(連邦公開市場委員会)ではないかと思います。

まずはFOMCのポイントをおさらいしておきましょう。11日の日経CNBC朝エクスプレス、マーケット・レーダーに出演いただいた三菱UFJ銀行の鈴木敏之さんはFOMCの声明とその後のパウエルFRB議長の会見を通じて、以下のような点が印象的だったといいます。

6月9-10日FOMCのポイント
①フォワードガイダンスの強化
②量的緩和の対応
③イールドカーブコントロール(YCC)の検討

まず①フォワードガイダンスについてですが、今回示された厳しい先行きの経済見通しが前提にあります。2022年まで失業率が自然失業率(4.1%)に達しない、インフレ率も目標には達しないとしました。さらにメンバーの金利観を示すドットチャートをみると、2021年までは全員がゼロ金利を継続し、2022年には二人だけが利上げを指摘しています。現時点では少なくても2022年まではゼロ金利政策を続けると理解できます。鈴木さんは「少なくても2022年までは動かないと言っているわけで、その後も続ける可能性を残している」とみます。象徴的なのはパウエルFRB議長の任期が2022年2月までだということです。平時であれば任期の終わりまでには比較的金融政策に対してフリーな状態にして、後任に引き継ぐ(もしくは再任するかもしれませんが)のが暗黙のエチケットのようなものなのだそうです。それだけパウエル議長の緩和姿勢が強いことをうかがわせます。

20.6.11 IMG_0052経済見通し

そして②の量的緩和。声明で向こう数カ月、少なくても現在の買い入れを維持するとしました。NY連銀の声明では毎月国債を800億ドル、MBS400億ドルとしています。今回は「無制限に必要なだけ」との表現をとらなかったわけですが、最低でもこの金額ということで、今後の状況に応じては買い入れを増やすことができる余地を残しています。株式市場関係者など一部で懸念されていた“タカ派的”姿勢は抑え込んでいると言えそうです。

そして事前から注目された③YCC。パウエル議長は会見冒頭の声明のところで(会見で問われる前から)YCCの検討に言及しました。「YCCに相当積極的な議論がFOMC内にあることをうかがわせる」(鈴木さん)との見方があります。もっともYCCについては「財政ファイナンスにつながりかねない」などとして慎重論も非常に根強いテーマです。今後検討は続くのでしょうが、今年の政治イベントを眺めると「YCCは早くても11月のFOMCまで見送りだろう」(大和証券チーフテクニカルアナリストの木野内栄治さん)との声があります。

今回のFOMCは、短期的には相場のリズムを少し変えることになるのではないでしょうか?先週まで強い勢いで続いていた金融、景気敏感株の逆襲のような動き。とどのつまりは米国の金利をみながら動いていたと考えられ、いったんは鈍りそうです。5月の雇用統計、6月のFOMCと大きなイベントを二つこなして言わば“材料出尽くし”の状態です。極端なほどの動きではありませんが、一時1ドル=106円台を付けた為替の円高も気掛かりです。“買いたい弱気派”が多いことを考えると、近々株式相場の深押しがあるとは考えにくいですが、これだけ急ピッチで上昇してきた後ですから今日くらいの調整はあって当然な気もしています。米金利をにらむ様子見の時間帯に入ってきたと思います。

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