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分断と思考停止を超えて――“東京2020”の先を考える

この文章を書いているのは2021年8月8日(日)の午後です。東京は朝、土砂降りの雨で、いつものように休日午前のソフトテニスをすることもなく、東京五輪を見たり、新聞を読んだり、そんな休日です。そして今日は五輪閉会式の日でもあります。あっという間の約2週間。みなさんはどんな気持ちでこの五輪を見ていたのでしょうか?話をしたり聞いたり、あるいは書いたり、自分が考えていることや感じたことを言語化するのは僕の仕事の大事なパーツなはずなのですが、これほどまでに言葉にしにくい五輪、というか現象は正直珍しい。しかし、同時代に立ちあっていた一つの証として、文章を残そうと思います。取っ散らかった内容であることをご容赦ください。

〇分断と思考停止を超えて

言うまでもなく、こんなに混乱し、社会を分断したオリンピックはこれまでなかったのではないでしょうか?トップの言葉、相次ぐ辞任、そもそも1年の延期……。それはもううんざりするほどの混乱だったと思います。後ほど紹介しますが、「東京五輪、楽しんでいますか?」と日経CNBCの視聴者のみなさんに尋ねた回答でも、あまりにもいろいろな思いを抱えて多くの人がこの五輪を見ていた、あるいは見る気にならなかったことがよく分かります。

僕自身の正直な気持ちは、東京五輪を「楽しんじゃった」という感じです。コロナ渦の感染拡大が深刻化する中で、どこか後ろめたい思いも抱えながらそれでも目の前の五輪から目が離せないとでも言いましょうか。平時と違って、外での宴会の類もほぼないわけですから、ある意味ではいつも以上に熱心に見てきたかもしれません(在宅勤務でTV付けっぱなしという人も多かったでしょう)。

そのような状況下の五輪ですから当然いろいろな意見があります。世界も社会も分断が進んでいると感じます。また、SNSを使った選手などへの誹謗中傷も深刻な現象だったと思います。

そうした中で、僕自身の印象に残った論考は、音楽クリエーターのヒャダインさんが、朝日新聞(8月5日付)のインタビューで答えていた「五輪は鎮痛剤」でした。「いまのこの状況は強めの鎮痛剤を飲んでいるようなものです。しかも、飲むたびに効きが悪くなるタイプの。五輪が終われば、もう楽しいニュースが増えることはしばらくないでしょう」。

100%同意するわけではありませんが、鋭い指摘だと感じました。確かにその通りなのですが、分断とある種の思考停止を超えて、僕たちは可能性を求めて進まなければいけないとも思うのです。その可能性もまた五輪の中にみたように思います。

〇スポーツの純粋さをどう考えるか?

特に、最初から当たり前のように世界を視野に競技を続けてきた若い世代の活躍には本当に心躍るものがありました。僕自身は単なるスポーツ愛好家ですが、もう何十年もソフトテニスを続けていて、たまに試合に挑戦したりして、まあ“生涯現役”を標榜しているわけです。トップアスリートと比べるのもどうかとは思いますが、思った通りに体を動かす、心をコントロールすることがいかに大変か、自分なりには分かる気がしています。五輪で金メダルを極めた人も、全く力を出せずに終わった選手にも純粋に敬意を表します。そこには何か、確かに人の心を揺さぶるものがある。

ただ、一方でスポーツ選手、運動選手といえども、日本社会が求めがちな(同調圧力に基づく類の)純粋さだけでは何かが足りないとも思うのです。スポーツ活動が成り立ち、それだけではなく五輪のような大きな大会が運営されるには当然のことながら、巨額のビジネスが必要です。スポンサーなしに高いレベルの技術を維持し、また世界にアピールすることは難しいでしょう。ではそのビジネスとスポーツ、五輪の関係は適正だったのか――。ありきたりなことを言いますが、五輪の原点に立ち返るよい機会ではないかと思います。コロナ渦で苦境に陥っている多くの文化活動、社会活動も同様です。スポーツを愛好する人、それを極めつつある人たちにも、(五輪で疲れた体を休めたあとは)社会の一員としての責任ある言葉が求められると感じています。

〇みなさんの言葉――投資家サーベイの結果紹介


ということで、予想通りまとまりのない文章になってしまいましたが、一言でいえば「いろいろあるけれど、考え続けることは止めてはいけない」ということを自分に言い聞かせようとしているわけです。さて、日経CNBCが視聴者の方に毎月協力していただいている投資家サーベイ。株式相場や為替、注目業種などの相場観に加えて、今月のトピック質問はズバリ「東京五輪、楽しんでいますか?」でした。調査期間は2021年の7月30日から8月3日。前半のいきなりのメダルラッシュに沸き立っていたころです。結果は以下の通りです。

はい            60.8%
いいえ           23.2%
分からない・どちらでもない 16.0%

いかがでしょうか?意外と楽しんでいる人が多いのか?それとも楽しめないという人が多いのか?「分からない・どちらでもない」方が結構な割合になっているのもこの五輪ならではという気がします。その理由をお書きいただいたので、一部を下記にご紹介します。言葉の中に、本当にいろいろな思いがあることがうかがえます。ご協力いただいたみなさん、今回も本当にありがとうございました。

日経CNBC投資家サーベイ
「東京五輪、楽しんでいますか?」(調査期間:2021年7月30日~8月3日)

<はい>
・ 一流アスリートが競うのは美しい。まさか人生二度目の東京オリンピックが見れるとは思いませんでした。がんばれニッポン。
(ニーサ ユーツー)
・ もともと見に行く予定だったので、コロナに関係なく楽しみにしていました。
(カブトムシ)
・ 開催すべきかなどと思っていたけど、見るとやっぱり凄いし、面白い。特にスケートボードやサーフィンは新鮮だった。
(毎日見ています)
・ テレワークしながら・・・
(みすてぃ)
・ 今の日本で唯一の明るい話題の発信源です。 若い人たちが前向きに頑張ってる姿に励まされます。
(しろしろねこ)
・ もろもろのことがあるが、割り切って楽しんでいる。
(ひろし)
・ 序盤の日本の金メダルラッシュに興奮気味です。 ステイホームを実践している我々にとってオリンピックは絶好の贈り物です。 開会式当日会場周辺でオリンピック反対のデモがあったらしいですが、この人たちはコロナでの外出自粛を 何と心得ているのでしょうか。この人たちがコロナをはやらせているのではないかとさえ思ってしまいます。
(本野一言)
・ コロナ禍の中、巣ごもり生活を送っています。オリンピックが無ければ鬱になりそうです。だから、オリンピックで日本選手の活躍に励まされています。日本頑張れ!!
(ひまわり)
・ 予想以上の大活躍に毎日興奮しています。コロナ感染者が一万人を超えるなど感染が急拡大していますが、五輪のせいではありません。世界で感染が再拡大しておりデルタ株の感染力の強さが原因です。菅首相は猛批判されていますが、五輪開催はまさに政治の大英断というべきです。批判する人は責任がないから適当に言うだけです。それを吹き飛ばしてくれるアスリートの大活躍を楽しみましょう。
(やすゆみ)
・ 世界の一流に直接接するというこの五輪のポジティブな側面をもっともっと重視しなければならない。人間は新コロナ禍でいつまでもいつまでも悩んでいては今の苦境を人類として乗り越えることは出来ない。斯かる感染病はこれからも何回も何回も襲来してくるものであり、それに対処する方法の一つとして4年に一回しかない五輪という世界一の祭典をもっともっと積極的に大事にすることがこの苦難を乗り越える大きな施策の一つとしてとらえて行く姿勢が重要である。人類は長い間ただ下を向いているだけでは生き延びることが出来ない。人間というものはそういう感性を大事にしなけらばならない動物でもあるのだ。
(じゅっちゃん)
・ 暗いニュースばかりなので 楽しまないと損な気がしました。
(うなぽん)
・ ポジションを軽くしてオリンピックを楽しんでます。
(レブ・エスペランス)
・ コロナ禍で疑問視したが、楽しい。しかし、終わった後は怖いだろう。
(ひこちゃん)
・ オリンピックは延期すべきだったと思います。 しかし始まってしまった以上、出場している選手を応援し、自分も楽しむことがこの大会の観戦意義だと思います。
(ワッツ)
・ 五輪スタッフの親切、優しいという報道を散見。おもてなしは健在。報道は海外に伝わり必ずや観光ブームとして需要拡大すると確信。
(おたつ)
・ 歴史に残る開催であることは間違いないと思います。そんな中、内外から参加している選手を応援するのはホストカントリーの国民の義務だと思っています。
(mint_power)

<いいえ>
・ 都心には関係者らしき体格良い人達が大勢いるので、コロナ禍ではやめて欲しかった。 メダルいくつ獲っても感情移入できない。
(名無しさん)
・ コロナ非常時の開催は無謀極まる大失政の極みで楽しめる気分になるような感性は人として持ち得ない。楽しめるとする人は大切な何かを失念しているのでは。その分断がこの五輪で顕になった。この事態は五輪憲章に背くのは自明なこと。五輪に関係した人々は胸に手を当てて憲章を読み直すことから始めることが緊要であろう。五輪は極めて相当な危険な曲がり角。
(tktk)
・ 五輪開催に反対だったので見ていません。 資金力の差があるのかも知れませんが、米国のプロスポーツ(アメフト)などコロナ禍の中本当に徹底した管理と規制をしいてシーズンを成功させた例などから少しでも学んで欲しかった。 前提を正当化させる、或いはその障害になりそうなことはあやふやにするといった幼稚な運営がまかりとおっているように見えます。 自分はこんな程度の低い国に住んでいたんだなと最近驚きを以ってリーダーと言われる方々の発言を見ています。
(あした天気になあれ)
・ 私は五輪中止派です。命を守る、五輪は中止して新型コロナ感染拡大防止対策に全てを集中させるべきだと思っています。中止を主張しているのだから五輪は観ません。当然の事です。
(nori)
・ オリパラのための蔓延防止処置を設けたのにもかかわらず、感染拡大、無観客に至った。  放映権のために真夏の開催、開催都市の費用負担など、ロスアンゼルス以降の商業五輪の終わりではなく、近代五輪の終わりの始まりになってしまう気がする。 選手の活躍を素直に喜べない自分が悲しい。
(tama)
・ Olympicが東京で開催されると聞いた時は、非常に喜び待ち望んでいたが、現状コロナ禍では、開催中止を希望していた。しかし、実際に開催され、楽しんでいるのは、直接競技を見ることができるTVのレポーターだけのような気がする。そして、選手以外のオリンピック関係の人々のルールを守らない行動等税金の無駄使いが非常に多い。今からでも即刻中止をして欲しいと思っている。居住している場所は選手村に近いので、近隣各県から見物に来る人も多く、非常に迷惑している。
(Stop Olympic)
・ 事務系ですが、全国の感染症対策とりまとめの仕事が7割を占めています。保健・医療関係者のご苦労を存じ上げていますので、うかれてみる気にはなれません。出場選手だけ頑張って下さればよいと思います。
(笑ゥとれぇーだー)

<分からない・どちらでもない>
・ 開幕前は関心は薄かったが、アスリートの皆様が真剣なのだから観るとやっぱり面白い。
(TOK 81)
・ 日本のメダルの増加に比例するかの如く、コロナ感染者数、緊急事態宣言・蔓延防止措置の地域や日数も増加。 感動が不安心理に相殺されていく……
(ワクチン待ってます)
・ 緊急事態宣言下で無観客では、いまいち盛り上がりに欠けます。マラソン・競歩会場の札幌も今年は連日30度以上の猛暑で、日中は暑いです。選手関係者で多数感染者が出たことで、安心安全なオリンピックとは言えないんじゃないですか。
(鈴太郎)

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