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日経電子版おすすめコラム

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記事一覧

天気予報を見るように感染症に備える日は来るか

けさ、私は少し衝撃的な記事を読みました。 いま世界的大流行(パンデミック)を起こしている新型コロナウイルスについて、感染症研究で有名なアメリカのジョンズ・ホプキンス大学の報告書が現在起きていることの多くを予想し、2年前に警鐘を鳴らしていた。その内容は世界で十分に生かされず、対策は後手に回っている。(日経電子版2020年3月24日、会員向け記事、登録無料) 「分かっていたのになぜ」「きちんと対応していたら」……。SFの世界ならここでタイムマシンの登場。過去(ifの世界)に行

宇宙から届く、ウミガメのメッセージ

高校生のころ、文化祭の企画で「つまようじアート」に参加しました。発泡スチロールの土台に、色のついたつまようじを刺してつくるモザイク画です。各クラスに分割された土台が割り振られて、事前にひとり何十本かずつ指定の配置で刺していくのですが、自分が何を「描いている」のかそのときにはわかりません。文化祭当日、すべての土台を中庭に並べることで初めて何の絵か判明するという趣向でした。 まさに「全体像は遠くから見た方がよくわかる」を実感したわけですが、「地球の変化は宇宙から見た方がよくわか

あなたはいつがんになる?

みなさんはタイトルをみて、どう感じますか?私は小さいころ、がんの闘病生活をテーマにしたテレビドラマを見た時、ものすごく怖い病気だな、もし自分ががんになってしまったら、そのときすでに手遅れだったとしたら・・・とあれこれ考え込んで、どんより暗い気持ちになったことがあります。日本人は、一生のうちに2人に1人はなんらかのがんにかかると言われています。身近な病気であるけれど、もしかかってしまったら自分や周りの人の生活はどうなるんだろう。そんな不安をかき立てる病気だと思います。 病気に

まさかコールドスリープとは!?

先端技術から生まれた新サービスが経済や社会の姿を大きく変える様子を描いた日経電子版の連載企画「Disruption 断絶の先に」。これまで量子コンピューターや、血管内を治療する極小ロボットを取り上げてきましたが、今回のテーマはまさかのコールドスリープ(人工冬眠)です。 この連載、今まで知らなかった技術に「こんなものがあるのか」と驚かされるだけでなく、それが実現すると社会にどのような影響があるかも考えさせられ、SFの世界が少しずつリアルになってきていることを実感します。とはい

音速を知らずに「マッハで行く」と言っていたあの頃

秒で向かう、秒で着替える――「秒で」という若者言葉はすっかり市民権を得ていますね。初めて聞いたとき、なるほど、いわゆる「マッハで」のことか。と思いました。 秒もマッハも「すぐに」「一瞬で」という意味。秒で行くは想像しやすいですがマッハで行くはちょっとイメージしづらいです。「足は見えないだろうな……」とか「筋肉量が……」とか本質的でないことばかり考えてしまいます。そもそもマッハとは何なのでしょう。 マッハとは 物理学者エルンスト・マッハ博士(Ernst Mach)が定義した

半額シールが消えるとき

夜のスーパーで、おいしそうだなと思った惣菜やお寿司に半額シールが貼ってあると俄然テンションが上がりますよね。中身は変わらないのに半額で手に入って、しかも食品ロス削減に貢献していると思うとたいへん素敵な気分になります。 こんなふうに、時間帯によって価格が変わるという発想は多くの人にとって身近なものです。飛行機やホテルの早割も、いまや当たり前のサービスになっています。 ただ、それをとことん突き詰めていくと、まったく新しい景色が見えてきます。 日経電子版の連載「Disrupt

人類の英知、それは計算能力 量子コンピューターが変える世界

「計算力」「計算能力」という言葉からみなさんは何を思い浮かべますか? 「そろばん」「暗算」「計算ドリル」ーー? もちろんそのような身近な「算数力」も含まれるでしょうが、今回は「難題を解決する力、能力」という定義がふさわしいでしょう。歴史を振り返ると、人類は計算能力を磨くことで「手に負えない問題」を克服してきました。 あきらめていた問題に光計算能力が世界を変える――そんな視点に立ったのが、日経電子版の大型連載「Disruption 断絶の先に」の新シリーズ「時は金なり」の第

まずは「規格外」マインド ぶっ壊せ

先日、大根の価格が下落しているというニュースをみました。理由は、暖冬で大根が育ちすぎて「規格外」になったことが原因です。大きくなりすぎたり、形が悪かったりして「規格外」になると、お店で売れないと農家が嘆いていました。冬になり大根の煮浸しやおでんがおいしい季節なのに「なんてもったいない」と思ってしまった視聴者は私だけではないと思います。 消費者と生産者をつなぐ橋渡し役の不在が原因で起きてしまう、もったいない廃棄処分。「規格外でもいいので売ってください」。この気持ちをどうにかし

未来の食、支えるのは「ハエ」と「藻」?

正月太りを解消するべくダイエットを再開しようかと思っているきょうこのごろ。引き締まった体を目指すにはよく、タンパク質を意識した食事をとると良いといわれますよね。筋肉や皮膚の原料となるタンパク質は人間の生命活動を維持する上で欠かせない栄養素です。 そのタンパク質が近い将来、不足するかもしれません。タンパク質の主な摂取源は肉類などですが、世界の人口増や食文化の変化に伴い肉の需要が増え、食肉や家畜を育てるための飼料の供給が追いつかなくなる可能性があります。人類にとっても、無類の肉

それでも資本主義は続く

日経電子版の大型連載「逆境の資本主義」。 一区切りとなる第9回のキーワードは「民主主義」です。 「資本主義の逆境の根底を探ると、民主主義のありように行き着く」という問題意識です。いち早く資本主義を開花させたイギリスで18世紀に起こった産業革命の歴史的な経緯からも、自由や多様性といった民主主義の価値観が資本主義を育んできたといえるからです。 香港とアメリカの異変資本主義と民主主義。上手に二人三脚をしていれば問題ないのですが、呼吸が乱れるとギクシャクします。 資本主義が行き

モノを持つというリスク

モノを持たない人が増えています。「ミニマリスト」、「断捨離」…。使いたいときにいつでも借りることができるシェアエコノミーや、「メルカリ」などのフリマアプリの普及で、モノを持たないことの不便さが薄れてきているからです。 2020年1月1日から日経電子版で連載が始まった「逆境の資本主義」。第8回はモノを持たずにシンプルな生活を目指す「ミニマリスト」の断面を切り取っています。 自分の生活を振り返ってみても、「ミニマリスト」というほど徹底はしていませんが、手放してしまったものがい

2020年と第2次世界大戦の直前には、共通項がある

アメリカ・イランの対立で世界が緊張しています。タイトルの「戦争」という言葉に背筋が寒くなりますが、特にアメリカに目を向けると否定できないのも事実。その共通項とは、関税の引き上げです。武力衝突ではありません。 当然、武力に訴えることは深刻な問題です。戦禍につながることはなんとしても歯止めをかけなければいけません。一方で、今回のように直接的な衝突が起こるずっと前から、関税の引き上げ=保護主義 という火種はくすぶっていました。 2020年1月1日から日経電子版で連載が始まった「

大気の汚染物質が宝石に!?

「錬金術」というと、ありふれた物質を金に変えようとした昔の怪しげな秘術をイメージされるかもしれません。現代でも、あまりまっとうではない方法で大きなお金を生み出す利殖などを指す慣用表現として使われ、よい印象はないかもしれません。 今回は、大気中の汚染物質を宝石に変える、地球温暖化の原因となる二酸化炭素(CO2)を化学品や燃料に変える、そんな人類や地球の問題解決になる「よい錬金術」の話題です。 冒頭紹介しているのは、大気を汚染する空気中の微粒子を巨大な空気清浄機で集め、真っ黒

利益だけ追求と社会的責任

日経電子版で1月1日にスタートした新連載「逆境の資本主義」。第6回のテーマは「利益追求」です。多くの企業が信じてきた「ROE(株主資本利益率)神話」が揺らぎ、それだけでは経営が立ちゆかなくなっているという話です。何が起きているのでしょうか。 ROEとは   「Return On Equity」の略語で、企業が株主から預かった資本をどのくらい効率的に使って稼いでいるかを示す。より少ない資本で多くの利益を稼けば稼ぐほどROEは高まる。株式投資家が重視する指標のひとつで、ROEが