世界最大の資産運用会社で働いていた人が、社債情報のプラットフォームを作るまでの話
サムネ

世界最大の資産運用会社で働いていた人が、社債情報のプラットフォームを作るまでの話

働く中で気づいた、どうしても実現したかったこと

はじめて資産形成を始める!となった時、あの人はどんなことをしているのか、どんな経験をして始めたのか・・・。

そんな疑問に答えるべく、みなさんに代わって新人がいろんな人にインタビューして聞いていく本シリーズ。第5弾は社債情報プラットフォームサービスを展開する「Siiibo」代表取締役CEOの小村和輝さんに聞いてきました!

シーボプロフィール

小村和輝【こむら かずき】東京大学工学系研究科修了。人工知能学会金融情報学研究会にて学生優秀論文賞に選出、国際論文誌Computational Economicsに論文掲載。ドイツ証券でトレーダーを経験後、ブラックロックジャパンで国内の運用会社・公的金融機関向けにポートフォリオ構築、企業合併に伴う組織構成業務などに従事。2019年に株式会社Siiiboを設立。


_(新人)本日はよろしくお願いします。まず、小村さんのご経歴から教えてください。

(小村)よろしくお願いします。私はドイツ銀行で3年間、トレーダーとして在籍していました。その後、外資系運用会社のブラックロックに転職し、起業して現在に至ります。

ドイツ銀行では「仕組み債」と呼ばれる、債券のトレーディングを担当していました。金融機関の資金需要に対して機関投資家の方や、事業会社の社長などのお客様向けに商品を組成・取引する仕事だったんですが、自分の扱う金融商品が世の中のためになっているのかどうか分かりませんでした。

そこで、もっと透明性のある、世のためになる商品を作りたいという思いでブラックロックに転職しました。

_転職先で目指したことは実現できましたか?

運用会社にうつると、知人などから資産形成の相談を受けることが多くなりました。中には金融の知識がない方も多く、株や不動産よりも社債(企業が資金調達を目的として発行する債券)のほうがいいのでは?と思うことが多くあって。

しかし現状、非公開会社(東京証券取引所などの取引所で、誰でも株式を購入できるようにしていない会社)も含めた債券を誰でも気軽に買える場所というのはありません。そこで、透明性のある、投資初心者でも扱いやすい商品を作りたいという思いを実現するため、ブラックロックを退職し「Siiibo」を起業しました。

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_「債券」という言葉に聞き覚えのない読者もいるかと思いますが、他と比べてどんなところが特徴的なのでしょうか?

まず1番違うのは、「自分が出したお金がいつ、いくら償還(=返ってくる)されるのかが明確」ということです。もう1つは、「買う時と売る時の価格差で大きな損をするリスクが他の金融商品と比較した時、相対的に低い」ということです。

債券も需要によって購入価格(発行時だと利率)は変わってくるんですが、株式に比べると金額の変動幅は少ないと一般的に言われています。株式は買うタイミングが重要で、高いときに買ってしまうとそれを上回る値段の時に売らないと利益が出ません。「入口」を間違えると損をしてしまいます。投資初心者でそれを見極めるのはなかなか難しいですよね。

他には不動産もありますが、買うときにまとまった金額が必要という面ではハードルが高い人も多いです。また、買ってから少しずつ現金に換えていく「取り崩し」ができないのも難しいところです。

こうした金融商品と比較した時に、相対的にリスクが低いといわれているのが債券です。しかし、発行しているところが潰れてしまえば投資したお金が返ってこない可能性もあります。

_よく聞く「投資信託」とは何が違うのでしょうか?

例えば投資信託では「目論見書」などで購入する前に自分が今から買う商品がどんなものなのか確認するんですが、買ってから値段が下がって損をした時、「なんで損したのか?」というのがわかりにくいケースも多いと思います。ここに、投資信託購入者の大きな不安があるのではないでしょうか。

我々が始めようとしているサービスは債券の一種である「社債」の情報プラットフォームです。そこでは債券の中でも特に小規模な「私募債」と呼ばれるものを取り扱います。

そこではどんな人が社長をしていて、自分が投資したお金がどんな風に使われるのか、たとえ損をすることになってもそれがなぜ起きたのか、わかりやすく発信してもらおうと思っています。これを一般にIR(インベスター・リレーションズ)と呼ぶんですが、ここを強化することで商品を購入する前や後の不安を少しでも解消していけると考えています。

これは株式投資の領域では進みつつあるので、債券でもそれを実現していきたいです。様々な金融商品に分散して投資するような投資信託商品と比べた時、より使途をわかりやすく、自分のお金がどんな働きをしているのかという透明性が高まっていけば、その違いがはっきりしてくるのではないでしょうか。

_自分が出したお金に関する情報を、もっと開示していくことで少しでも不安を解消していこうということですね。いま世の中にはクラウドファンディングとか、ソーシャルレンディングとかもありますが、それとはどう違うのでしょうか?

これから実現しようとしている段階ですが、情報の透明性が最も異なる点だと思います。ソーシャルレンディングでは過去に情報開示が進んでいないことが原因で国から指導が入ったこともありました*(2018年7月に証券取引等監視委員会がソーシャルレンディング大手のmaneoマーケットに行政処分するよう金融庁に勧告)。

このような背景もあり、各社が情報開示をさらに進めていくべく施策を行っています。我々もさらに情報開示を進めていきたいと考えています。
私募という情報の秘匿性が高い仕組みだからこそ、最も透明性の高い商品になると考えています。

_いま、資産形成の重要性が叫ばれてる中で読者でもその必要性を感じている人も多いかと思いますが、この話題で小村さんが思うことはありますか?

金融業界でのキャリアの中で強く感じたのは、選択肢が少ないということです。金融商品そのものは本当にたくさんあるんですが、情報の偏りもあって実際に個人の方が買うものは限られていると思います。

例えば退職金をもらってすぐに株を買う、という方もいらっしゃるんですが、もし老後資金のためにそのお金を活用するならあまり適していないやり方です。老後資金というところまで段階が進むと、リスクが低い商品を少しずつ取り崩していく必要があるので、それこそ社債が良かったりもします。

ですが、今の状況だと買いにくいのが実態です。この部分をより気軽に、透明性のあるものにしていきたいと考えています。

_ロボアドなど、投資初心者向けのサービスも既にたくさんありますが、フィンテック業界の今後について思うことはありますか?

今後10年くらいのスパンで見たときに、リセッション(景気後退)に入る可能性は十分にあります。今までは市場の状況が良い時期が続いたので、どのサービスを使っている人でも大損をするタイミングはそこまでなかったかと思いますが、いざ景気が悪くなったらその可能性も出てきます。

そうなった時、なぜ利用者が損をしたのかを説明できなければせっかく投資を始めた人もすべて売却して「2度と投資なんてしない」となってしまうかもしれません。

そうならないよう、どんなサービスにおいてもなぜそうなったのか、という理由を利用者に説明できるようにしておく必要があります。そのために業界全体として、情報開示を進めていかなければなりません。

_なるほど。いまは起業されていますが、「外資系金融」と聞くと給与も高いイメージがあります。年収が減ってしまうとか、不安はありませんでしたか?

まさにそこに私の思う「資産形成の意味」があるんですが、本当ならお金のことを考えずに生きたいじゃないですか。本質的には、株価を追ったり、資金が増えたり減ったりを見るのってみなさん興味ないと思います。

ただ、最低限のお金がないと自分の幸せを追求することも、挑戦したりすることもできなくなる。そうならないために資産形成をするんだと思います。「お金に縛られない生活のために資産形成をする」という感覚でしょうか。

私も転職・起業の時にお金のことはもちろん考えましたが、それまでにETFなどに投資していて、これらの金融商品からの配当があれば死ぬことはないだろうと思っていました。その安心感があったからこそ挑戦できたと思います。実際、起業したら収入ゼロになることもありますから。

_最後に資産形成をキャッチ―にまとめて頂いてありがとうございます。今日はありがとうございました!

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