スクリーンショット_2019-06-19_12

マンガx企業タイアップ成功の秘訣は〇〇にあり!? 人気マンガ「プリンセスメゾン」の成功体験を聞いてきました! ~担当者インタビューシリーズ~

こんにちは。「アニメビジネスマガジン by COMEMO」を担当している日本経済新聞社のいきやすふみと申します。

今回は、アニメビジネスマガジンで最も力を入れている1つである「企業xアニメ&マンガ」について実践をし、そして成果を収めたご担当者様にインタビューをさせて頂きました!

人気マンガ「プリンセスメゾン」は企業のコンテンツマーケティングから生まれた!

『このマンガがすごい!2016』でオンナ編10位を獲得し、2016年にNHKでテレビドラマ化もされた「プリンセスメゾン」。シリーズ累計30万部を突破したヒット作品です。

実はこの人気マンガは「企業xマンガ」のコンテンツマーケティング施策で生まれたことをご存知だったでしょうか?三井不動産レジデンシャルさんのコンテンツマーケティング施策「モチイエ女子project」から生まれた作品なのです。

今回はその「プリンセスメゾン」企画の仕掛け人の一人である読売広告社の遠藤輪香子さんに、ヒット企画となった経緯やプロジェクトの成功の秘訣についてインタビューをさせて頂きました!

Q.「プリンセスメゾン」を生み出すきっかけとなったコンテンツマーケティングのプロジェクトが立ち上がった経緯をお聞かせください


遠藤氏:
2014年に三井不動産レジデンシャルさんから単身女性がマンションを購入する文化を醸成するための施策を行いたいという相談を頂きました。

当時は今よりも単身女性のマンション購入は「結婚を諦め?」「老後の資産作り?」のようなネガティブなイメージがありました。実態としてはそのようなネガティブ理由の購入者は少ないのですが、そのような世間一般にあるイメージを払拭し、単身女性がマンション購入をしやすい文化を醸成したいという趣旨でした。読売広告社は、都市生活研究所という不動産・都市開発のプランニング・マーケ部門もあり、ご一緒させて頂くことになりました。

文化を醸成するためにはCM等の単発のプロモーション施策では難しいと考え、コンテンツマーケティングとしてモチイエ女子というwebサイトを立ち上げ、単身女性のマンションに纏わる様々なコンテンツを集約するWEBサービスを作ることになりました。

Q.コンテンツマーケティングとしてWEBサイトを立ち上げることは事例としても少なくはないと思いますが、そこから「マンガ」を活用することになったのはなぜでしょうか?


遠藤氏:
予算が限られている中で、効果的に文化や考え方を醸成させる手段を考えたときにマンガの持つ影響力にクライアントも含めて目が向けられるようになりました。

とはいえオウンドメディアにマンガを置いただけでは集客や認知の拡大に限界があるのでは?という懸念がありました。そこで、単なるオウンドメディア上のタイアップマンガで終わらせるのではなく、私が当時から愛読をしていた小学館が運営する「やわらかスピリッツ」に作品としてしっかりと連載をして頂くことで、マンガが好きな「やわらかスピリッツ」ユーザーにも気づいてもらえ、強い動線になり得るのではないか?と考えました。

Q.小学館に声をかけた後、マンガができるまで作家・編集・遠藤さん・クライアントでどのようなやりとりがあったのでしょうか?


遠藤氏:
クライアントとは「言いたいことを言うだけ」のいかにもプロモーション感の強いマンガだと読者に支持されないというお話をしていました。またクライアントからは読後感に「女性が一人でマンション買ってもいいよねと思える」ことに拘りたいということを承っていました。そのため、読後感には拘りつつも作品として読者に支持されるものを目指して作ることになりました。

お話を持ち込んだ小学館さんからは、担当編集者として過去に「花のズボラ飯」(秋田書店)など人気作品を担当していた金城さんをご紹介して頂き、金城さんのご提案で作家の池辺葵先生をご紹介して頂きました。

その後、池辺先生からプロットを頂き、クライアントと共に確認し進めて行きました。また、プロット段階・ネーム段階・作画段階など各作業フェーズで直せる範囲を事前に共有し、無理な手戻りが起こらないように心がけました。

また小学館さんとしてもタイアップ作品だからといって他の作品と区別することなく、人気作品とするべく普段の作品と同様のスキームで取り組んで頂き、書店やその他でもしっかりとプロモーションを行うなど力を注いで頂けました。

Q.通常のマンガと違いクライアントワークであるマンガならではの作業や衝突などはなかったのでしょうか?


遠藤氏:
作業としては各話のネームをクライアントと共に確認をし、不動産知識・不動産営業・資料等の表現の齟齬を監修するフローがありました。クライアントも私も最初はネームは見慣れないものでしたが、回数を重ねるごとにネームの見方が身についていきました(笑) またマンション・モデルルーム・セミナー等の取材は三井不動産レジデンシャルさんが全面協力をしてくださるので捗りました。また細かい契約書の表現なども詳細に確認をして頂き結果的にリアル感も増したと思います。

競合に利する表現はNGであったりはしますが、作中でマンション購入に否定的な発言をするキャラクターが登場することはNGではありませんでした。ストーリーの中で、そういう人物が出てくることは自然であるためです。衝突と言えるようなものは1巻に1つあるかないかくらいだったと思います。クライアント側が作家の領域を尊重してくださっていたところも大きかったと思います。「女性が一人でマンション買ってもいいよねと思える」読後感を与えるためにも、主人公の沼ちゃんがどこかでマンションを購入するというところはクライアント側からご要望がありましたが、マンガが終わるタイミングも池辺先生が決めました。「まずは1巻が出せたらいいね」というところからスタートしているため、事前にクライアント側とも連載期間の規定はしていなかったため、期間も作家の領域として尊重してくださいました。

Q.今後「タイアップマンガを出したい!」という方にヒット企画にするコツや気をつけるべき点を教えてください?

遠藤氏:
やはりポイントとしては三井不動産レジデンシャルさんの覚悟と言いますか懐の深さが大きかったと思います。そのおかげで、作品の面白さを重視した息の長い企画にできたと思います。

もちろんプロモーション企画なので、フェーズごとに数字のKPIはありましたが、大きな目的としては啓蒙・理解促進(単身女性がマンション購入をしやすい文化を醸成)というところがあったので、細かい数字に追われることなく読了感にこだわって作品作りができました。

実販売数や細かい数字をゴールにマンガタイアップを活用することも可能ですが、作品としての面白さを重視しようとするとあまり向いていないかもしれません。むしろ、今回のケースのように啓蒙・理解促進を目的としたプロモーションの方がおすすめかも知れません。

また最近では作家さんの影響力をTwitterのフォロワーで説明することができるので、説得材料として使いやすいかもしれません。読者の反応もSNSで見ることができるので、担当者としてもエゴさをしてポジティブな感動ツイートを見かけると非常に幸せな気持ちになりモチベーションになりました。

【ポイント】
・クライアントの理解力
・面白さを重視するならばコンバージョンより啓蒙重視の案件
・SNSとの相性の良さも重視

以上です。ありがとうございました!

「プリンセスメゾン」のドラマ化の話も一切仕込み無しで外部の反響のみでNHKからお話で来たそうです。それほどの人気作品にタイアップ企画から成長をさせていった裏側には、

・クライアントの覚悟とマンガ案件の特性の理解力
・遠藤さんのマンガへの深い造詣へと企画への愛情
・出版社サイド(編集者・作家さん)の良い作品へのこだわり

この3つが見事にマッチして出来上がったのだなとインタビューをさせて頂き実感致しました。奇跡のような組み合わせで再現性がないのでは?と思われるかもしれませんが、今回書かせて頂いたポイントを意識して頂きながらプロジェクトを進めることで少しでも再現性を高めて頂ければと思います。本稿が少しでもタイアップマンガ企画が増えるための足がかりになれば幸いでございます。

【7/25開催】アニメxライツビジネスを語り尽くす

また日経アニメビジネスマガジンでは、マンガではございませんがアニメとのコラボについて学べるセミナーも開催しております。次回はライツを切り口に動画配信サービスや商品企画について語り尽くします。


この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?