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『国際マンガ・アニメ祭 Reiwa Toshima』の魅力と描く未来とは?:マンガ・アニメ部門 事業ディレクター山内 康裕氏インタビュー!

日経アニメビジネス by COMEMOのインタビューシリーズです。
今回は、『国際マンガ・アニメ祭 Reiwa Toshima』の事業ディレクターを務める山内 康裕さんに、本イベントを実施した背景や狙いについてインタビューをさせて頂きました!

IMARTとは?
豊島区は2019年、東アジア文化都市開催都市として区内各地で様々な文化事業を行っている。その中のマンガ・アニメ部門におけるスペシャル事業のクロージング企画として、2019年11月15日(金)〜17日(日)の期間にわたり、マンガ・アニメの未来を作るフェスティバル「国際マンガ・アニメ祭 Reiwa Toshima」、略称:IMART(アイマート/以下、IMART)を豊島区庁舎を中心として開催を予定している。マンガ・アニメの未来をテーマにしたカンファレンスをメインプログラムとして実施。業界を牽引するリーダーによる基調講演とマンガ・アニメの様々な領域を横断するカンファレンスが目玉となる。いま激変の時期を迎えつつあるマンガ・アニメの未来を作り出すためのそれぞれの活動に活かし、さらなる新しい可能性を生み出すことを目指す。

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1979年東京生まれ。マンガナイト/レインボーバード合同会社代表。「さいとう・たかを劇画文化財団」理事、「国際文化都市整備機構」監事。

以下インタビュー本文⇣

作り手の知見共有の場を生み出したい

マンガ業界は、会社を超えてビジネス的な知見を共有する場がほとんどありませんでした。アニメならフランスで開催されるアヌシー国際映画祭、ゲームはロサンゼルスのE3やサンフランシスコのゲームデベロッパーズカンファレンス(GDC)があります。この「場」の存在は大きく、たとえばゲーム業界の場合、E3やGDCがあるからゲームのビジネス分野の中心地がアメリカになっていると思います。

そのため、国内でマンガ業界の作り手の知見の共有をする場を作りたいと考えていました。

トキワ荘があった豊島区でしかできないイベント

アニメやマンガイベントは地域創生の文脈で地方で開催されているものが増えています。しかし、本イベントは東京の中心エリア、豊島区で開催します。地域創生だけではなく、マンガ文化やビジネスの振興を図ることに意義があると考えています。


「豊島区で実施する必然性」もあります。(手塚治虫以下、多くの大物漫画家が住んでいた)トキワ荘があったからです。トキワ荘をマンガ文化産業のプラットフォームと捉えると豊島区が、新たな時代の漫画家の拠点を狙う意義があると考えています。


また、豊島区の中心地区である池袋は近年、女性を中心にアニメ・漫画のファンやユーザーが集まる土地として知られています。出版社が多いのは千代田区や文京区ですが、ファンとビジネス側を接近させることで催しに大きな熱量が生まれることを期待しています。

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骨太の評論の復権を


2000年前後からマンガは文化庁メディア芸術祭のひとつの部門になったり、日本マンガ学会が設立されたり、京都精華大学ではマンガ学部が生まれたり…と公やアカデミーで存在感を増してきました。それまで在野のマンガの研究家の方々が、教える側に回っていったのです。

その結果、骨太の評論が書かれる量が相対的に減りました。またインターネットの普及で、PV(ページビュー)が稼ぎやすいバズらせるための内容が増えていったことも評論の弱体化を招きました。マンガのショートレビューは増えたが、骨太の評論は減っていくという状況になりました。そのあたりについてはIMARTの関連企画「アニメ、マンガ3.0」で推進していますが、今回のイベントもこうした部分も担っていきたいです。

電子コミックスの知見共有で産業の底上げを


IMARTではマンガアプリを中心としたデジタル戦略のパートを多めにしてみました。2017年に電子コミックスの売上が、紙コミックスを初めて上回りました

電子コミックス市場が成長期に入ったことで、出版社以外の他業種 (IT、広告、ゲーム、本屋等) がマンガに参入してきました。ユーザーから見れば一見、同じ体験でも会社の出自が違うので、意思決定のプロセスや知見が全く異なります。そのため、そのような新規参入組も含めて知見を共有し合うことで、産業としてのマンガが底上げできるのではないか?と考えています。

マンガビジネスのあらゆるルート・様々なバリューチェーンの網羅を目指す

マンガが世に出るまでのルートが多様化しています。昔は「出版社がマンガを世に出す」というワンルートでしたが、今は様々なWebサービス経由や即売会経由など複雑に増えています。業界関係者はそのように刻々と変わる環境に対応しないといけないでしょう。バリューチェーンの変化につれそこで登場するプレイヤーも多様化していますが、IMARTでは全方向で対応したいと考えています。


そのため、「業界の著名人を少人数出す」というような形式は取りませんでした。様々なテーマについて20本以上のセッション、2〜3名ほどの登壇者が登壇し知見を披露します。つまり、50名以上の方がそれぞれの役割を語り、知見を共有するような場になると思います。作るとこから届けるところまで、全方位に対応し網羅することを目指します。
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これまで交流しなかった層が交わり新たなビジネス&文化の創造を

想定するお客様としては

・クリエイター
・マンガアニメ業界で新しい仕事をしたい人
・他業種からマンガアニメ業界に関わりたい人

など生み出す側の方全般を想定しています。

現在ソーシャルメディアとマンガの相性は非常に良く、制作・発表・拡散・販売・2次展開など全てのバリューチェーンを一人でも行える時代になっています。

そんな時代に、会社やクリエイターがどこを担うべきか、どうやってビジネスを生み出すか、また文化産業としてどのように発展させていくかの視点はますます重要になると思います。参加者の交流スペースもご用意しており、そこで新たな出会いを生み出さればと思っています。

『マンガミライハッカソン』から未来を学習できるマンガが生まれる!?

マンガミライハッカソンは、既存の“ハッカソン”のスキームを応用し、漫画家・脚本家・イラストレーター・編集者・プロデューサー・エンジニア・サイエンティスト・アーティスト・学者・役者・学生など、多様な知見を持つ人々が、その場限りのユニットを組んで、「新たな人間性・未来社会・未来都市」をテーマに世界に発信すべき短編マンガのプロトタイプを制作するプロジェクトです。2019年10月から11月にかけての3回にわたり開催。作家や研究者たちがチームを組み、新しい表現を試行錯誤しながらプロトタイプ作品を短期間で制作、11月15日〜17日の「IMART」会期中に成果発表と授賞式を行います。

HITE-Mediaと共催しており、僕としては科学者とマンガ家のコラボレーションでマンガをアップデートされるのでは?という視点で企画しました。

テック・バイオの知識を漫画家にインプットすることでさらなる作品が生まれるかもしれないですし、漫画家の奇抜なアイデアからテック・バイオの研究にフィードバックされる部分もあるかもしれません。これまでの作品では科学者の監修はありましたが、基本的な世界観や設定からコラボしたらもっと面白い作品が生まれる可能性はあります。

科学技術を使うだけ、科学技術を伝えるだけではなく、両者を駆使した絶妙のバランスを表現できるのがマンガの伝える力だと思っています。今の世の中の仕組みを伝える学習漫画だけではなく、未来を学べる漫画のようなものも生まれたら面白いと思っています。現状6チームで6作品が生まれようとしています(IMART会期中に成果発表)。

定着を目指す

『東アジア文化都市2019豊島』という1年区切りの括りの中で、今回のIMARTは実施されるため、ひとまずは今年だけの開催になります。

まずはこの1回を成功させることで、豊島区にイベントを実施する文脈を根付かせていき恒例行事化できればと考えております。今回を機会に、公としてマンガ産業を支え・盛り上がる動きが豊島区から生まれることを願っています。

インタビュー以上↑

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国際マンガ・アニメ祭 Reiwa Toshima(IMART)概要

【日時】2019年11月15日(金)~11月17日(日)
【会場】としまセンタースクエア(豊島区役所本庁舎1階)豊島区役所本庁舎5階会議室
【チケット発売】https://peatix.com/user/4917259/view
【チケット料金】3日通し券 5,000 円、1日券 2,000円
豊島区民割引・学生割引:3日券 2,500円、1日券 1,000円
(豊島区民割引=在住・在勤・在学/要証明書提示、学生割引=要学生証提示)
*基調講演は入場無料(事前申込制)

公式サイト:https://mapdate.net/imart/    
Twitter: https://twitter.com/ImartFes
東アジア文化都市2019豊島(IMART):http://culturecity-toshima.com/event/1055/
主催:東アジア文化都市2019豊島実行委員会/豊島区

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