見出し画像

【読書】読む文化をハックする

読書は好きだけど国語の授業は嫌いだったという人に会うことがあります。ビジネスの世界で成功をおさめている人たちに読書好きは多いですが、学校が嫌いだったり馴染めなかったりした人もたくさんいるように感じます。それは、学校特有の同じ考え方やふるまいを求められる長年に渡って続いてきた文化のせいだろうと思います。

私は、学校が長年抜け出せずにいる「みんなが同じように同じことをできるようにする教育」から抜け出し、どんな子ものびのびと生きられるような社会の実現に向けて自分にもできることを一歩ずつ進めていけたらと思っています。

この「読む文化をハックする」は私の気持ちを後押ししてくれる本でした。今日はこの本を読んだ感想を自分の実践を踏まえながら書いてみたいと思います。

はじめに

この本は新論評から出されている本です。たくさん出ているハックするシリーズの中の一冊で、教育現場が長年抱えている課題に対して発想の転換を促し、解決策を提案するものです。

ハック1:読書家に焦点を当てる

ここでは、授業でしっかり本を読む時間を確保し、そこに対して教師が指導をしていきましょうということが書かれています。

読むことへの指導というと、本の見つけ方、読みたい本リストの作り方、読みの記録の付け方、個別カンファランスの行い方などです。

内容は、「イン・ザ・ミドル」アトウェル(三省堂)、「リーディング・ワークショップ」カルキンズ(新論評)、日本版の実践では「読書家の時間」プロジェクトワークショップ(新論評)に書かれているものと重なる部分が多かったです。詳しく知りたい方はこちらも読まれるといいと思います。

自分も、意識的に読みを授業の中に位置づけようとしてきましたが、時間割に組み込むのはぎゅうぎゅう詰めの今のカリキュラムの中では難しさも感じています。定期的な指導は行えていませんが、それでも図書の授業で読みのレクチャーをしたり、個別の読みの力を把握したりしながら、1人1人にどんなアプローチをしたら読書力をステップアップできるかということを考えて関わるようにしています。

ハック2:読む文化とカリキュラムのつながりをつくる

これは日本の学校で実践していくためにはかなり大事な視点だと思いました。具体的には教科書教材とのリンクのさせ方を考えることだと思います。教科書の読み物教材の中には、長いこと教科書から消えずに残ってきた教材(例えば、アーノルドローベルの「お手紙」やあまんきみこの「ちいちゃんのかげおくり」のようなもの)と、読書単元の中で紹介されるような形で出てくる教材とがあります。後者の授業では、読み取りや読み深めに重点を置くのではなく、他のいろいろな本を授業に持ち込み、読書につなげる指導を行うとよいのではないでしょうか。これは、毎年実践していますが、とてもよい方法です。教科書以外の本を友達といっしょに読むのは楽しいものです。そのきっかけを授業の中でつかませてあげたいですよね。

ハック3:教室の図書コーナーを充実させる

ここでは、子どもがすぐに手に取れる場所に本を置くことの大切さが書かれています。図書館との連携や保護者への働きかけなどにも触れられていました。

私も、岩瀬直樹さんの実践に憧れ、教室に本をたくさん置いています。岩瀬さんのように複本はできていないし、選書も思い通りとはいきませんが、それでもすぐ手に取れる場所にいつも本があるのは大事なことだなぁと感じています。

司書教諭として、自分のクラスだけでなく校内全体の学級文庫の充実にも力を入れていきたいなぁと思います。

私の家の近くに市営の図書館の分館があるのですが、そこの方と仲良くなって、図書館には向かない寄贈本や図書館の廃棄本を譲っていただくようになりました。学級文庫に置くと、かなり手に取られる回数が増えます。そのことを図書館の方も分かっていらっしゃるのでしょう。本当にありがたいことです。

ハック4:読むコミュニティーを築くために評価する。

よく読書記録カードに本の名前や感想を書かせて、たくさん読めたら表彰するとかプレゼントをもらえるという企画ってありますよね。私の学校にもあります。

それはそれで1つのきっかけであり、お楽しみとして実施すればよいと思うのですが、この活動で一時的に本を読んだとしても、本を心から好きになり、読書を楽しむ子になるとは思えません。プレゼントほしさに、短い本をささっとめくって記録カードに書いている子を見かけたことがあります。子どもが悪いのではなく、この方法がダメなのですよね。

私はこの章を読んで、読書後のアウトプットについても指導していくことが大切だと感じました。「読書記録にたくさん書いてあるからこの子は読書している」などと評価できないことは自明です。読書記録は後から読み返して自分の読書に関する成長を確認するツールとして使えればいいなと思います。GIGAスクール構想もあるので、ICTもうまく使っていけそうですね。読書記録には個別のフィードバックも大切だなぁと感じました。

また、コミュニティーをつくるという点ではやはりビブリオバトルや読書会も有効であるように思います。子どもが自分の読書を振り返り、次の読書へのステップアップをするための場となりうるでしょう。こういった視点で授業作りをしていくと、子ども1人1人の読書力や傾向をつかむのは難しいことではないと思います。

「子どもたちが書評を書くこと」については改めて勉強したいと思いました。読書感想文は苦手な子が多いですよね。(これも書き方の指導方法に問題があるのかもしれませんが。)書評を読んだり書いたりすることは、その後の人生に生かせる力だと思うので、もっと学んでいきたいと感じました。

ハック5:読むことを学校の中心に据える

各々のクラスで取り組めても、学校レベルでとなるとまた難しさもあると思います。ここは司書教諭としての頑張りどころですね。私がこの章で感じたことは、教員同士が読むことを楽しむ仲間になることができたら、読書指導の大切さを共有するために一歩前進できるということです。

読書を推進してほしいと願う保護者はたくさんいます。同時に教師も子どもが読書好きになってくれたらなぁと思っているはずです。でも、教師の中にも本が苦手な人はけっこうたくさんいて、本を授業で使うことには至らないということがたくさんあります。

それに対して、司書教諭として本を活用した授業を公開することや教科書教材と関連する本のブックリストを作って手渡すなどの方法はとても有効だと感じます。

同じ読書記録カードを全校で使っていたとしても、活用度合いは教員によって異なります。その先生の読書指導に対する熱量が違うからです。そういう共通の方法を強制するのではなく、先生たちが「本を授業で使いたいな」と思うような関わりをすることが大事なのではないでしょうか。

私は職場で時々ブックカフェを開いて、今読んでいる本やマンガについて共有したり、読み聞かせにおすすめの本を紹介し合ったりしています。教育に関する新書を使って読書会を企画し実践したこともありました。

職員室にいる仲間同士で本を使って学んだり、コミュニケーションしたりする場をつくるのは大事なことです。こういう活動を通して、教員が本を使って学ぶことの楽しさや有意義さを実感することが、読書を大切にする学校文化を作るきっかけになると私は信じています。なかなかハードルの高いことかも知れませんが、ぜひチャレンジしてみてほしいです。私もがんばります!

おわりに

ここ数年、書くことの指導に力を入れていたので、読むことの指導について再確認するよいきっかけになりました。国語の力は他教科との関連も多く、授業での取り扱い方をしっかり計画していく必要があると感じます。カリキュラムマネジメントの視点も大事です。小学校ではカリキュラムマネジメントが割としやすいですが、教科担任制になったらどうなるのでしょうね。中学ではどうなのでしょう。いろいろな方の実践も知りたいです。

最後までお読みいただきありがとうございました。


この記事が参加している募集

読書感想文